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心境の変化

正直限界

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もう無理かも…。僕は胸が詰まって息が浅くなるのを感じた。今は剣の実技で、勝ち抜き戦の真っ最中だった。この試験でもって、この学期の修了となる。僕の目指して来たアルベルトの集大成とも言える。皆は来年も上級生としてこの学舎で過ごすことができるけれど、僕はお父様との約束でアンドレアに戻る。

だからどうしてもこの勝ち抜き戦では実績を存分に残したかった。けれどもいかんせん、息が上がってしまう。胸のコルセットで息が詰まる。


ラファエル様と会う度に胸にキス、あるいはそれ以上をしていたせいか、胸の成長が止まらない。今ならシドの妹で、僕の親友であるマチルダにも馬鹿にされない胸の膨らみはあるはずだけど、正直もう少し後でも良かったのに…!

僕の様子を見ていたシドが眉を顰めて尋ねて来た。

「…アル、大丈夫か?顔色が悪いぞ?ここは棄権して医務室へ行ったらどうだ。バート先生には協力して貰っているんだろう?」

僕は月のものがある度に医務室でバート先生から処方される鎮痛剤に随分助けられていた。先生の助けがなければ正直一年間男として過ごすのは無理だったかもしれない。


「どうしても無理そうならそうするけど、これで修了なんだから最後まで頑張りたいんだ。もう少し胸が楽になれば良いのに…。」

僕がそう言うと、シドは少し考え込んで言った。

「じゃあ、胸当てを外して、代わりに防具をつけたらどうだ?多少動きは鈍くなるけど、息が詰まるよりはマシじゃないか?」

そう言われて、僕は頷くと棚に並べてある防具を手に取ると急いで着替えに使っている空き部屋へと走って行った。その時僕の後からジェイクが追いかけて来たことには全然気づいていなかった。


僕がコルセットを外して足元へ落とすとそのままシャツの上に防具を装着した。多分胸の膨らみは見えないはずだ。丁度その時、ジェイクが空き部屋へと入って来て、キョロキョロと部屋を見回した。

「アルはどうしていつもこんな所で着替えてるんだ?まぁ、皆と一緒だと色々面倒が起きそうなのは分かるけどな。お前がそれを自覚していたとは思わなかったぞ?…何か足元に落ちてるけど、これは何だ?」


そう言いながらジェイクは僕のコルセットを拾い上げた。このコルセットは侍女頭アンリが作った凝ったもので、内側に胸の形にカップを作ってしまっていた。だから見れば何となく何のためのものか分かるようになっていた。

僕は慌ててジェイクからコルセットを奪い取ると、少し呆然としているジェイクに誤魔化す様に言った。

「ジェイク、迎えに来てくれたのか?そろそろ僕の番だもんね。さぁ行こう。」


そう言ってジェイクを部屋から追い出すと、鍵を掛けてコロシアムへ急いだ。ジェイクは何か僕に聞きたそうにしていたけど、今は答える気はなかった。しかし、見られたのがまだジェイクで良かった。少なくともジェイクは僕の味方だから。

けれどコロシアムの入り口でジェイクに手を引っ張られて、僕は立ち止まらざるを得なかった。ジェイクは妙に緊張した顔をして僕に言った。

「…アル、アルってもしかして女なのか?」







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