男装令嬢は溺愛許嫁から逃げ出したい！だって中の人は僕ですから！

心境の変化

シドsideおかしな様子のアル

週末ラファエル様と会って来てからのアルは妙だ。少しぼんやりしたかと思えば、俺をじっと見つめて何か聞きたげにする。こんな時のアルに関係すると絶対酷い目にあうと経験上知っている俺は、上手くかわすことができたはずだ。私は。

結局ジェイクがアルの餌食になるのは時間の問題だったのは間違いなかったのに、俺も自分可愛さにうっかりしていた。正直ジェイクはアルが男だと思っているのだから、放っておくわけにいかないのだった。


俺はため息をつきながら、タジタジのジェイクが視線を彷徨わせてアルの追求から必死で逃れようとしている所へ助け船を出す羽目になったんだ。

「アル…。ジェイクが困ってるだろう？何をそんな追求してるんだ？」

するとまるで悪戯が見つかった様に俺をチラッと見上げると、ニヤっと笑ってアルは何でもないと言いながら他の同級生のところへ行ってしまった。


無邪気で綺麗なアルは同級生から人気で、早速あっちで何か盛り上がっていた。その様子を監視しながら、俺はジェイクに尋ねた。

「アル、何だって？」

するとジェイクは一瞬で顔を赤らめて言い辛そうに俺をチラッと見た。なんだ？そんなに言い辛い事なのか？するとジェイクは肩をすくめて言った。


「なぁ、アルって変じゃないか？普通聞くか？自分で慰めるのを毎日するのかって。いや、男同士だからそんな話を全然しない事もないけどな、ほら、アルってあんな綺麗な感じだからさ、そんな真顔で聞かれると気まずいって言うか。シドは聞かれたか？」

俺は思わず額に手を当てて呻いた。あいつは何を聞きまくっているんだ。この週末何かあったのは間違いないけれど、ラファエル様との事を聞くわけにもいかないし、かと言ってこれ以上アルの犠牲者を出すわけにいかない。


そう思ってアルと盛り上がっていた同級生の方へ目をやると、アルがガタイの良い奴に肩を組まれて耳元で何か言われているのが目に入った。あいつは男も食っちまうって有名な奴だ。

俺はジェイクに目で合図すると、ジェイクも目を見開いてボソリと言った。

「そりゃあんな質問したら、アイツが誘われてると勘違いしてもおかしくないよな。でもマズイよ。一応見かけ上は私の恋人なんだから、いかなくちゃダメだよなぁ。」


俺はジェイクがアルに振り回されてるのを可哀想に思いながら、それは自分も一緒だとため息をついた。それから二人で目配せすると、救出するためにアルが楽しそうに笑っている方へと歩き出したんだ。