男装令嬢は溺愛許嫁から逃げ出したい！だって中の人は僕ですから！

心境の変化

これは…甘くて癖になる※

ついばむ様に揶揄っていたラファエルの唇は直ぐに本気を出してきた。僕は自分より何倍も逞しい腕の中ですっかり身を預けて、その優しくも激しい唇に溺れていた。

自分でも欲しかったのだろう、ラファエルの甘い舌が僕の口の中をそっと撫で始めた時は、安堵のあまりため息をついた程だった。僕は一体いつからこんな風にラファエルを欲しがる様になったんだろう。


自分の頭では理解できなかったけれど、身体の方は正直だった。甘いラファエルの口づけはお腹の奥を刺激して、じっとしてられない。張り詰めた胸はいつかのように甘く舐めて欲しがった。

今自分たちが居るのは僕の部屋のソファの上なのだから、そうしたって良いのでは？僕は淑女の作法を嗜んでいたけれど、さっきの話を聞いた後では、ラファエルには自分の本当の姿を見せても大丈夫な気がしていた。

だからなのか後から考えると、僕は自分からラファエルを誘ったんだ。


僕はラファエルから顔を引き剥がすと、自分の頬に置かれたラファエルの節張った剣だこのある指先に、自分の細い指を絡めて頼んだ。

「エル…、前みたいに胸に触れて…。」

すると溶けた濃い金属のような瞳がギラリと光った気がして、同時にその瞳が僕のミルクティ色の巻毛のカツラに移動した。

「…今のアルを見せて。これはカツラだろう？」

僕は寄り掛かっていたラファエルから身体を起こすと、サッとかつらを外した。どうせバレているんだ。かつらは痒くなるから好きじゃない。僕の短い髪を見つめて、ラファエルはそっと指で僕の髪をなぞった。


「アルはどんな姿でもひと目を引く。リカルドが執着したのも分かるよ。彼は君が女の子だと感じたのだろうか。」

僕の髪を撫でて、耳元をくすぐるラファエルの指先にじれつきながら僕はため息をついた。

「どうかな。でもリカルド先輩はいつも紳士だったよ。だから部屋に遊びに行っても、特に何も起きなかったかもしれないって思ったりもしたんだけど、シドが絶対にダメだって言うから…。」


エうは僕の唇を喰んで言った。

「こんな柔らかな春の空を映す瞳のアルを密室で目の前にしたら、男だと思っていても何も起きない訳ないだろうね。彼は不誠実な人間ではないようだけど、口づけの先に進んだらアルが女の子だってバレるだろう？それは試合終了になってしまうよ？

私はそれでも良いけれど、アルは無事に一年過ごしたいんだろう？やっぱり避けるべきだろうね。…それに私もアルに誰にも手を触れてほしくないから。」


僕はエルの顔を見つめて、もう一度指を絡めて自分の身体に沿って撫で下ろしながら呟いた。

「だったらエルが触って…。男の性欲は馬鹿みたいに増幅するってシドが言ってた。エルは僕をどうしたいの？参考までに教えて…。」