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綱渡りの生活
僕の演技力
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『…今だ。良いよジェイク…』
僕はリカルド先輩が通りかかる廊下から見える裏庭で、ジェイクと抱き合って見つめ合う演技をスタートさせた。
『もっと腰に手を回してジェイク!そんなに離れてたら全然恋人に見えないよ!?』
そう言って僕はジェイク両頬を手で引き寄せて見上げた。強張ったジェイクの目が何だか彷徨っている。やっぱりここはシドの方が慣れていて良かったかもしれない。
今更引き返す事など出来ないこの演技は、もはやリカルド先輩が見ても見なくても続けるしか無かった。
誰か急いで近づいて来る姿が目の端に捉えられて、僕とジェイクはそちらを思わず見た。そこには番犬よろしく、眉を顰めたシドが凄い勢いでやって来た。
僕とジェイクは顔を見合わせた。シドの後ろの方で、確かにリカルド先輩がこちらを見ていた。僕はジェイクの手を僕の腰に引っ張り回すと、ジェイクの肩に頭を乗せてシドを待った。
「お前たち、一体どう言う事なんだ!?特にアル、これは問題だぞ?」
僕はシドにウインクして言った。
「シド、空気が読めないのにも程があるよ。僕とジェイクは皆の前でイチャイチャしている最中なんだから、邪魔しないで欲しいな。」
そう言うと、ますます顔を顰めたシドが今度は胡散臭い物を見るような眼差しで僕たちを見ながら言った。
「ここでは話せない事みたいだな?」
僕は流石にシドは冴えてると思いながら、高らかに笑った。
シドの後を手を繋いで着いていく僕たちは、案の定あっという間に学院の噂になったみたいだ。ヒソヒソではない騒めきがそこかしこで響いた。
ジェイクは天を仰ぎながらボヤいた。
「もう私にお見合い話は来ないかもしれない!」
僕はクスクス笑って言った。
「大丈夫、きっと別の方面からモテモテになるよ?きっとね!」
シドは僕たちの揶揄いに呆れたような顔をして、自室に招き入れた。
「あれ?シドは僕を部屋に入れない主義じゃ無かった?」
僕がそうシドの耳元で囁くと、シドは肩をすくめて言った。
「もう一人、アルの恋人が一緒なら構わないさ。さて、お二人さんはもうすっかり学院の噂のカップルになった。この釈明はしてもらえるんだろうね?私はアルの保護者のようなものだから、きちんと事情を知っておきたい。」
そう腕を組んで椅子に座るシドに僕はため息を吐いて言った。
「ね、シド。まずはお客様に飲み物を用意すべきじゃないかな?」
*** お知らせ ***
新作BL『僕は傲慢男のセフレ』公開開始しました♡よろしくお願いします!
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誰か急いで近づいて来る姿が目の端に捉えられて、僕とジェイクはそちらを思わず見た。そこには番犬よろしく、眉を顰めたシドが凄い勢いでやって来た。
僕とジェイクは顔を見合わせた。シドの後ろの方で、確かにリカルド先輩がこちらを見ていた。僕はジェイクの手を僕の腰に引っ張り回すと、ジェイクの肩に頭を乗せてシドを待った。
「お前たち、一体どう言う事なんだ!?特にアル、これは問題だぞ?」
僕はシドにウインクして言った。
「シド、空気が読めないのにも程があるよ。僕とジェイクは皆の前でイチャイチャしている最中なんだから、邪魔しないで欲しいな。」
そう言うと、ますます顔を顰めたシドが今度は胡散臭い物を見るような眼差しで僕たちを見ながら言った。
「ここでは話せない事みたいだな?」
僕は流石にシドは冴えてると思いながら、高らかに笑った。
シドの後を手を繋いで着いていく僕たちは、案の定あっという間に学院の噂になったみたいだ。ヒソヒソではない騒めきがそこかしこで響いた。
ジェイクは天を仰ぎながらボヤいた。
「もう私にお見合い話は来ないかもしれない!」
僕はクスクス笑って言った。
「大丈夫、きっと別の方面からモテモテになるよ?きっとね!」
シドは僕たちの揶揄いに呆れたような顔をして、自室に招き入れた。
「あれ?シドは僕を部屋に入れない主義じゃ無かった?」
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「もう一人、アルの恋人が一緒なら構わないさ。さて、お二人さんはもうすっかり学院の噂のカップルになった。この釈明はしてもらえるんだろうね?私はアルの保護者のようなものだから、きちんと事情を知っておきたい。」
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「ね、シド。まずはお客様に飲み物を用意すべきじゃないかな?」
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