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綱渡りの生活
上級生の贔屓
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「だからそれはもう言うなって。」
苦い顔をしながら、シドが僕を睨んだ。僕は目を丸くして首を傾げた。
「シドが上級生だけじゃなく同級生からもモテモテなのは間違いじゃないし、何なら僕はマチルダに報告もしないといけないし?正確な所を教えてもらわないと。」
するとシドはジロリと僕を見つめて言った。
「なるほど?じゃあアルがリカルド先輩から随分贔屓されてるのも、そう言う事なのか?」
僕は思わず息を呑んで眉を顰めた。目の前の冷たいテーブルに頬をつけると、ため息をついた。最近のリカルド先輩は僕を囲い込もうとしてる気がして、ちょっと困っているんだ。
部屋に誘われるのが一番困るけど、これ以上断って良いのかも分からないし。上級生に遊びにおいでと言われたら皆気軽に行くけれど、危ないことはないんだろうか。僕はテーブルに突っ伏したまま、チラッとシドを見上げた。
「ね、この前シド、上級生のあれ、えーと、ルシファ様に遊びにおいでよって言われてたよね。結局行ったの?」
すると分かりやすくシドは目を彷徨わせた。あー?怪しいね…?僕はやおら顔を持ち上げると、じっとりとシドを見つめて声を顰めて言った。
「やっぱり何かあったんでしょ。ルシファ様は線の細い綺麗な方で人気だよね。もしかして口づけくらいしちゃった?」
するとシドはスクっと立ち上がると、僕を見下ろして呆れた様に言った。
「やっぱりアルは世間知らずだ。そんなレベルで済むと思ってるあたりがね。俺の事はともかく、アルがリカルド先輩の部屋に遊びに行ったら貞操の危機は間違いないからな。絶対に避けろよ?」
言いたい事だけ言うと、シドはさっさと談話室を後にしてしまった。今は夕食後の思い思いの自由時間で、僕は伸びをするとボードゲームで盛り上がっているエリアへと足を向けた。
すると僕の前に立ち塞がる様にして、ヘンリー様が声を掛けて来た。
「アルベルト、今ちょっと時間あるかな。今度リカルドの誕生日でちょっとしたパーティーをするんだけど是非参加してほしい。その時にリカルドを驚かせたいんだけど、何か案が無いかなと思って…、一緒に考えてくれないか。」
僕はヘンリー様を見上げた。ヘンリー様はリカルド様の腹心とでも言う様な関係だ。公爵家のリカルド様は場合によっては外国の姫と婚姻もあり得る方なので、伯爵家の次男であるヘンリー様はその場合でも付き従っていくのかもしれない。
長い茶色い髪を一本にまとめたヘンリー様は、美しい緑色の瞳を僕に向けて微笑んだ。実は僕はヘンリー様が少し苦手だった。多分リカルド様が僕の事を贔屓するのが気に入らないのではないのかな。
今も微笑んでいるのに目が冷たい気がする。僕はシドの妹、マチルダの教育のおかげで人の気持ちの機微には以前より敏感になっているんだ。
僕はこのままヘンリー様について行く事になってしまった事に少し不安を感じて、周囲を見回したけれどシドはさっき部屋に戻ってしまったし、ジェイクは見当たらない。‥でもヘンリー様なら、そんな危険じゃ無いよね?
苦い顔をしながら、シドが僕を睨んだ。僕は目を丸くして首を傾げた。
「シドが上級生だけじゃなく同級生からもモテモテなのは間違いじゃないし、何なら僕はマチルダに報告もしないといけないし?正確な所を教えてもらわないと。」
するとシドはジロリと僕を見つめて言った。
「なるほど?じゃあアルがリカルド先輩から随分贔屓されてるのも、そう言う事なのか?」
僕は思わず息を呑んで眉を顰めた。目の前の冷たいテーブルに頬をつけると、ため息をついた。最近のリカルド先輩は僕を囲い込もうとしてる気がして、ちょっと困っているんだ。
部屋に誘われるのが一番困るけど、これ以上断って良いのかも分からないし。上級生に遊びにおいでと言われたら皆気軽に行くけれど、危ないことはないんだろうか。僕はテーブルに突っ伏したまま、チラッとシドを見上げた。
「ね、この前シド、上級生のあれ、えーと、ルシファ様に遊びにおいでよって言われてたよね。結局行ったの?」
すると分かりやすくシドは目を彷徨わせた。あー?怪しいね…?僕はやおら顔を持ち上げると、じっとりとシドを見つめて声を顰めて言った。
「やっぱり何かあったんでしょ。ルシファ様は線の細い綺麗な方で人気だよね。もしかして口づけくらいしちゃった?」
するとシドはスクっと立ち上がると、僕を見下ろして呆れた様に言った。
「やっぱりアルは世間知らずだ。そんなレベルで済むと思ってるあたりがね。俺の事はともかく、アルがリカルド先輩の部屋に遊びに行ったら貞操の危機は間違いないからな。絶対に避けろよ?」
言いたい事だけ言うと、シドはさっさと談話室を後にしてしまった。今は夕食後の思い思いの自由時間で、僕は伸びをするとボードゲームで盛り上がっているエリアへと足を向けた。
すると僕の前に立ち塞がる様にして、ヘンリー様が声を掛けて来た。
「アルベルト、今ちょっと時間あるかな。今度リカルドの誕生日でちょっとしたパーティーをするんだけど是非参加してほしい。その時にリカルドを驚かせたいんだけど、何か案が無いかなと思って…、一緒に考えてくれないか。」
僕はヘンリー様を見上げた。ヘンリー様はリカルド様の腹心とでも言う様な関係だ。公爵家のリカルド様は場合によっては外国の姫と婚姻もあり得る方なので、伯爵家の次男であるヘンリー様はその場合でも付き従っていくのかもしれない。
長い茶色い髪を一本にまとめたヘンリー様は、美しい緑色の瞳を僕に向けて微笑んだ。実は僕はヘンリー様が少し苦手だった。多分リカルド様が僕の事を贔屓するのが気に入らないのではないのかな。
今も微笑んでいるのに目が冷たい気がする。僕はシドの妹、マチルダの教育のおかげで人の気持ちの機微には以前より敏感になっているんだ。
僕はこのままヘンリー様について行く事になってしまった事に少し不安を感じて、周囲を見回したけれどシドはさっき部屋に戻ってしまったし、ジェイクは見当たらない。‥でもヘンリー様なら、そんな危険じゃ無いよね?
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