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綱渡りの生活

沸き立つ血潮

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多分この世界の貴族の令嬢になるには、僕は血の気が多すぎるんだろう。演習で新入生と剣を合わせて勝ち抜き戦を進めると、その度毎に僕の神経はピリピリと研ぎ澄まされていった。

それは同時に僕の戦いぶりを見て、物珍し気に笑っていた同級生達や上級生達をも黙らせた。僕は名の知れた相手の喉元に剣先を向けて、相手の参ったを聞くと剣を鞘に納めた。


「アルは、本当凄いよ。本気出したんだな?」

そうジェイクが満面の笑みで褒めてくれるので僕は口元を緩めて緊張を解いた。

「はぁ、気持ちの切り替えが難しいよ。今の僕は凶暴かも知れないよ。」

そう言ってジェイクを見つめると、ジェイクは引き攣りながら僕から目を逸らした。そしてシドが近づいて来るのを見るとホッとした様に呼びかけた。シドも向こうでの戦いが終わったみたいで防具を外しながらチラッとこちらを見た。


「アルも勝ったんだな。全然腕が落ちてないのか?俺はちょっと落ちた。辺境伯では馬鹿みたいに毎日鍛錬してたから、ここでは少し鈍ったみたいだ。」

そう言って腕を回した。僕とジェイクは顔を見合わせて、シドは少しぐらい鈍った方が皆が勝負になるとキョトンとしているシドを揶揄った。すると競技場の柵の側から僕を呼ぶ声がした。リカルド先輩だ。流石に無視できなくてリカルド先輩の側に小走りで近寄った。


「アル!凄いな。想像以上だったよ。普段の鍛錬では本気出してなかったのかい?今まで競技大会に出なかったのか不思議なくらいだよ。」

確かにリカルド先輩の言うことはもっともだった。僕は笑って誤魔化しながら言った。

「今より身体が細くて周りが心配したんです。さすがに学校行事だと出ないわけに行かないでしょう?でもこれからは力も無いと勝ち残れそうも無いですね。」

僕たちがそう話していると、リカルドといつも一緒にいるヘンリーが頷いて言った。


「そう言えばアルは辺境伯の関係者だったかな。さすが辺境伯は少女剣士を出すくらいだからね、レベルが高いんだろう。」

すると周囲が思い出した様に、辺境伯の一人娘のご令嬢は許嫁と剣で対峙するくらいの少女剣士で一時期話題になったと、口々に言い始めた。僕はかつての負けん気の強さでラファエルと何度か剣を交わしたあの頃の自分を噂されて、何とも居た堪れなかった。

リカルド先輩に次も頑張れと叱咤激励されてお礼を言うと、慌ててシド達の元へ戻った。


「…昔の僕の話が出るとか思わなかった。まさかバレたりしないよね。」

するとシドが僕を呆れた様に見つめて言った。

「誰もご令嬢がこんなにバッサリ髪も切って男装で潜入してるとか思わないだろ?それに見た目もあの頃とは雰囲気が違うから、同一人物だと思う奴はいないんじゃ無いか?」

そう言って笑った。だから僕もすっかり安心していたんだけど、柵の向こうから一人の青年が僕をじっと見つめている事には気づかなかったんだ。





~お知らせ~

新作BL『お隣さんは僕のまたたび』ひと癖も、二癖もある主人公の「僕」が周囲を翻弄していくハラハラドキドキを更新中です♡よろしくお願いします!




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