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綱渡りの生活
競技演習
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「ぐふふ。」
思わず含み笑いを浮かべるほどに僕は興奮していた。そんな僕を呆れた様に緑色の目を細めて僕を見つめたシドが口元を歪めて首を振っている。自分でも馬鹿みたいにやる気なのは自覚があったけれど、この偽装生活に少し疲れを感じていた僕は発散場所を求めていたんだと思う。
「次、アルだろう?その顔にだけは傷をつけるなよ。そんな事になったら、お前の許嫁が口出ししてくるぞ。」
そうシドに囁かれて僕は顔を顰めた。確かにラファエルに騒がれると色々問題だ。僕は頷くと勝ち抜き戦の相手の前に立った。さっきシドが軽々相手を倒したのを見ていたので、僕もやる気に満ちていた。
これまでは個々の訓練だったので、皆の実力はイマイチ分からない。シドの様に数人名前の知れた新入生は居るけれど、目の前の彼は良くわからなかった。戦いの場であるコロシアムの周囲では上級生が声を掛けながら見学している。
僕より頭ひとつ背が高いけれど、細身の目の前の同級生を見つめた。彼は剣を振りかぶって早速僕に突進してきた。こんなにもゆっくり見えるとかある?
僕は今更ながら辺境伯の仲間の腕前が選りすぐりだったのだと実感した。そして僕はダンスをする様に相手の剣を何度も薙ぎ払いながら、喉元の急所に自分の剣先を落とし込んだ。
途端に周囲の歓声が聞こえて、先生の勝負ありという声が空気を切り裂いた。息が掛かるほどに接近した相手の呆然とした顔が、みるみる赤く染まって行くのを眺めながら僕はサッと身体を引き剥がした。それから膝をついた相手に手を差し出して言った。
「大丈夫?」
赤い顔で僕の手を取る相手を重心移動で立たせながら、僕はにっこり笑った。はぁ、気分最高。やっぱり剣はいいや。次の対戦ペアがやってくるのが見えて、僕は手を離して移動しようと足を踏み出した。クンと引っ張られる気がして繋いだ手からなぞる様に相手の顔を見上げると、彼は手を握ったままボウっと僕を見つめていた。
「ね、僕たち退かないと。おーい。」
僕が彼の目の前で手をひらつかせると、彼はハッとして手を離して慌てて謝って僕を追い越して退いた。何あれ。僕は肩をすくめてシドとジェイクの側に歩いて行った。
「やったな、アル!」
そうジェイクが喜んで僕を抱きしめた。すかさずシドに引き剥がされていたけど、ジェイクは興奮した様に言った。
「アルがここまでやるとは知らなかったよ。まるで剣舞の様だったが、アルっぽいって言えばそうだな。」
するとシドが呆れた様に言った。
「いや、本当のアルの実力はもっと泥臭いぜ。俺と最後戦えるまで頑張るんだな、アル。」
珍しくシドがやる気になっているのを見て、僕は肩をすくめた。
「まぁ、僕も油断はしないつもりだよ。シド程じゃなくても、そこそこ名が知れている新入生が居るからね。」
僕たちがそう話をしていると、後ろの見学者の方からリカルド先輩がよくやったと呼びかけてきた。僕が笑顔で手を振るとシドがボソっと呟いた。
「これでますますアルが注目されるな…。全く頭が痛いよ。」
~お知らせ~
新作BL本日18時公開開始します♡
『お隣さんは僕のまたたび』
ひと目を惹きがちな『僕』と隣の幼馴染の兄弟との成長と共に変わる関係性と葛藤と、すれ違い、そして溺愛を丁寧に書いてみました。1500~2000字/話じっくり読めると思います♡
よろしくお願いします♡
思わず含み笑いを浮かべるほどに僕は興奮していた。そんな僕を呆れた様に緑色の目を細めて僕を見つめたシドが口元を歪めて首を振っている。自分でも馬鹿みたいにやる気なのは自覚があったけれど、この偽装生活に少し疲れを感じていた僕は発散場所を求めていたんだと思う。
「次、アルだろう?その顔にだけは傷をつけるなよ。そんな事になったら、お前の許嫁が口出ししてくるぞ。」
そうシドに囁かれて僕は顔を顰めた。確かにラファエルに騒がれると色々問題だ。僕は頷くと勝ち抜き戦の相手の前に立った。さっきシドが軽々相手を倒したのを見ていたので、僕もやる気に満ちていた。
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僕は今更ながら辺境伯の仲間の腕前が選りすぐりだったのだと実感した。そして僕はダンスをする様に相手の剣を何度も薙ぎ払いながら、喉元の急所に自分の剣先を落とし込んだ。
途端に周囲の歓声が聞こえて、先生の勝負ありという声が空気を切り裂いた。息が掛かるほどに接近した相手の呆然とした顔が、みるみる赤く染まって行くのを眺めながら僕はサッと身体を引き剥がした。それから膝をついた相手に手を差し出して言った。
「大丈夫?」
赤い顔で僕の手を取る相手を重心移動で立たせながら、僕はにっこり笑った。はぁ、気分最高。やっぱり剣はいいや。次の対戦ペアがやってくるのが見えて、僕は手を離して移動しようと足を踏み出した。クンと引っ張られる気がして繋いだ手からなぞる様に相手の顔を見上げると、彼は手を握ったままボウっと僕を見つめていた。
「ね、僕たち退かないと。おーい。」
僕が彼の目の前で手をひらつかせると、彼はハッとして手を離して慌てて謝って僕を追い越して退いた。何あれ。僕は肩をすくめてシドとジェイクの側に歩いて行った。
「やったな、アル!」
そうジェイクが喜んで僕を抱きしめた。すかさずシドに引き剥がされていたけど、ジェイクは興奮した様に言った。
「アルがここまでやるとは知らなかったよ。まるで剣舞の様だったが、アルっぽいって言えばそうだな。」
するとシドが呆れた様に言った。
「いや、本当のアルの実力はもっと泥臭いぜ。俺と最後戦えるまで頑張るんだな、アル。」
珍しくシドがやる気になっているのを見て、僕は肩をすくめた。
「まぁ、僕も油断はしないつもりだよ。シド程じゃなくても、そこそこ名が知れている新入生が居るからね。」
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よろしくお願いします♡
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