男装令嬢は溺愛許嫁から逃げ出したい!だって中の人は僕ですから!

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

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綱渡りの生活

イチャイチャしてる訳じゃない

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青くなったり、赤くなったりしながら渋々答えてくれたシドに僕が満面の笑みを送る頃には、寮の食堂に到着した。朝からボリュームのある料理ごとの大皿が並ぶ光景は、食べる前からちょっとうんざりする。

「アルベルト、おはよう。それしか食べないのか?もう少し食べないと、筋肉つかないぞ?」

そう言ってリカルド先輩は僕の後ろからバイキング皿を覗き込んだ。僕は思ったよりも近くに居たリカルド先輩のスッキリするハーブの匂いを感じて、顔を上げて微笑んだ。


「リカルド先輩、おはようございます。僕は昔から少食なんです。でも筋肉はそこそこありますよ。多分ですけど。」

するとクスクス笑って、僕に綺麗な青い瞳で流し目を送って囁いた。

「…今度二人だけで見せて欲しいな、アルベルトの筋肉。」

僕は思わず目を見開いて顔を強ばらせた。

「…いや、僕の子供っぽい軟弱な身体は見せられませんよ。新入生と先輩たちじゃ、本当差があり過ぎなんですもん。」


僕たちが話していると、他の同級生に捕まって居たシドが慌ててやって来た。するとリカルド先輩は片眉を上げてウインクすると、僕の頭を撫でて言った。

「あ、お目付役が来たね。また今度ゆっくり話そう。良かったら私の部屋にも遊びに来てくれ。じゃあ、またね。」

そう言って肩までの銀髪をさらりと揺らして、待って居たお仲間と一緒に立ち去って行った。先輩は食事も済んでいて、わざわざ僕に声を掛けてくれたらしい。嬉しいけど、困るな。実際リカルド先輩は新入生には人気があって、今も僕をやっかむ眼差しで見てくる生徒がちらほら居た。


「ちょっと目を離すとこれだ。あんまりイチャイチャしてると、噂になるぞ?」

僕には防ぎようのないリカルド先輩の接近に、僕は顔を顰めてシドを睨んだ。

「リカルド先輩の方が近寄って来るんだから、僕にはどうしようもないでしょ。まぁ、授業は一緒じゃないのが、救いといえばそうかな。」

そう投げやりに言って、いつもより多めにおかずを盛った皿に手をつけた。とりあえずヒョロヒョロじゃ授業についていけないかもしれない。そんな僕の皿を見てシドは呆れた顔を向けたけど、僕は近々迎える競技演習に備えなくちゃと思っていたんだ。


新入生が最初に迎える大いなる壁と言われているその競技演習は、実際には僕はウキウキしてしょうがないけどね。荒っぽい事の多かった辺境伯の暮らしでは、この手のイベントは日常茶飯事だった事を考えると腕が鳴るというか、血が騒ぐというか。

僕がそんな事を思ってニヤニヤしていたら、シドが肉の塊を口に押し込みながら僕に言った。

「今度の演習にそんな嬉しそうな顔してるの、アルぐらいだぞ。ま、俺は1番目指すけどね。はい、さっさと食べる。授業に間に合わなくなるぞ?」

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