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学院生活
許嫁と危険な散策
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僕の手をがっちりと握って離さないラファエルに慄きながら、横を歩くラファエルがいつの間にか一人前の男の人になっている事に気がついた。僕より背が随分高くて、きっと体格の良いフレッド兄様とそう変わらないだろう。もっともフレッド兄様の様に横幅は無いけれど。
スラリとしたラファエルは確か剣の捌きも優雅だった。僕は子供の頃のあの頃を思い出して呟いた。
「そう言えば、小さい頃私達は剣を交えた事もありましたわね。あれはいつだったかしら。懐かしいですわ。」
ラファエルは腕を組んだ僕の手を、反対の手で握りながら言った。
「アンドレアは強かったね。私はアンドレアに打ち負かされない様に必死だった。事前にフレッドからアンドレアの剣の腕前は男に引けを取らないと聞いていたからね。密かに鍛錬していたんだ。」
僕はあの時のラファエルがそんな準備をしていたとは気づかなくて、クスッと笑って言った。
「今ならきっと難なく私を打ち負かせるでしょう。」
するとラファエルは僕の手のひらをなぞって言った。
「そうかな?この手からは君がまだ剣を諦めていないって伝わってくるけどね。…今度また手合わせしたいね。君の女騎士の姿も美しいだろうから。」
僕が剣を扱う事を見抜かれた上にそれを否定しないラファエルに少し驚いたけれど、一方で話しながらずっと手のひらを指先で撫でられている事に何だか居た堪れなくなった。
「あの、ラファエル様。もうおやめになって。」
ラファエルは私の顔を見つめてにっこり微笑んだ。
「何をだい?私はこの手が気に入ったんだ。なかなか許嫁の君に会えなくて、私は身が焦がれる思いをしているんだよ?もう、今すぐ結婚しても良いくらいだ。君が学院へ行かないのならそうしても良いのではないかな。辺境伯に頼んでみようか。」
僕は話がとんでもない所へ進んでいく事に慌ててしまった。この変態ラファエルは無駄に権力があるから、万が一にもそうならないとは言えない。僕はアンドレアとしての研鑽を見せる時が来たと思った。
ラファエルをうっとりとした眼差しで見上げて言った。
「ラファエル様、まだ私は未熟ですもの。結婚など早いですわ。それに許嫁の期間をもっと楽しみたいですし。」
するとラファエルは、まるで罠に掛かった獲物を見る様な眼差しで僕を見つめた。
「ではアンドレア、私と許嫁時間を今から楽しむ事にしよう。」
そう言ってツルの絡まる東屋へと私を連れ込んだ。そしてベンチに座ると私を膝の上にサッと横抱きにして言った。
「アンドレア、許嫁の私にアンドレアから口づけてくれないか。結婚をお預けされた可哀想な私にそれくらいのご褒美があっても良いと思わないかな、アンドレア。」
ああ、僕はすっかり逃れようもない罠にハマってしまったみたいだ。
スラリとしたラファエルは確か剣の捌きも優雅だった。僕は子供の頃のあの頃を思い出して呟いた。
「そう言えば、小さい頃私達は剣を交えた事もありましたわね。あれはいつだったかしら。懐かしいですわ。」
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「アンドレアは強かったね。私はアンドレアに打ち負かされない様に必死だった。事前にフレッドからアンドレアの剣の腕前は男に引けを取らないと聞いていたからね。密かに鍛錬していたんだ。」
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「今ならきっと難なく私を打ち負かせるでしょう。」
するとラファエルは僕の手のひらをなぞって言った。
「そうかな?この手からは君がまだ剣を諦めていないって伝わってくるけどね。…今度また手合わせしたいね。君の女騎士の姿も美しいだろうから。」
僕が剣を扱う事を見抜かれた上にそれを否定しないラファエルに少し驚いたけれど、一方で話しながらずっと手のひらを指先で撫でられている事に何だか居た堪れなくなった。
「あの、ラファエル様。もうおやめになって。」
ラファエルは私の顔を見つめてにっこり微笑んだ。
「何をだい?私はこの手が気に入ったんだ。なかなか許嫁の君に会えなくて、私は身が焦がれる思いをしているんだよ?もう、今すぐ結婚しても良いくらいだ。君が学院へ行かないのならそうしても良いのではないかな。辺境伯に頼んでみようか。」
僕は話がとんでもない所へ進んでいく事に慌ててしまった。この変態ラファエルは無駄に権力があるから、万が一にもそうならないとは言えない。僕はアンドレアとしての研鑽を見せる時が来たと思った。
ラファエルをうっとりとした眼差しで見上げて言った。
「ラファエル様、まだ私は未熟ですもの。結婚など早いですわ。それに許嫁の期間をもっと楽しみたいですし。」
するとラファエルは、まるで罠に掛かった獲物を見る様な眼差しで僕を見つめた。
「ではアンドレア、私と許嫁時間を今から楽しむ事にしよう。」
そう言ってツルの絡まる東屋へと私を連れ込んだ。そしてベンチに座ると私を膝の上にサッと横抱きにして言った。
「アンドレア、許嫁の私にアンドレアから口づけてくれないか。結婚をお預けされた可哀想な私にそれくらいのご褒美があっても良いと思わないかな、アンドレア。」
ああ、僕はすっかり逃れようもない罠にハマってしまったみたいだ。
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