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学院生活
お父様の呼び出し
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「ねぇ、シドも呼ばれてるの?何か心当たりある?」
僕たちは馬車に乗って王都のポートリー辺境伯の屋敷に向かっていた。週末を待ち切れないのか、金曜日の夕方に馬車を学院寮に寄越された僕たちは、取るものも取り敢えず急ぎ乗り込んだのだった。
シドは肩をすくめて言った。
「いや、全然。でもこの手の事はあまり良い話じゃないんだろうね。アルが何かやらかしたかなぁ。」
そう言って腕を組んで考え込むシドをジト目で見ながら、僕は乗り心地の良い馬車に寄り掛かった。流石に長時間でなければ、馬車に乗るのは嫌いじゃない。僕たちが到着すると、挨拶もそこそこに待ちかねた様に執事が僕らをお父様の執務室へと案内した。
執務室では書類の手を止めたお父様が、顔を上げて僕たちにソファに座るように促した。僕たちは顔を見合わせて言う通りにソファに座ってお父様を待った。
執事が運んできたお茶を飲みながら、お父様が僕に話し出した。
「急に呼び立てして悪かった。予定があったのではないか?実は急な案件があって、アンドレアに戻って欲しいのだ。」
僕はポカンとしてお父様の言葉の続きを待った。
「実は明日の午後、ラファエルがここにお前に会いに来る。」
僕は目を見開いて、お父様を見つめた。急な話で頭の理解が追いつかない。お父様曰くは、領地でずっとアンドレアを引き籠らせておくと、ラファエルがお見舞いと称して会いに行ってしまうだろうと、一定期間の後は王都で静養すると言う話にしておくつもりだったらしい。
「ラファエルから、近々領地へアンドレアに会いに行くと連絡がきてな、流石にそれをされるとアンドレアはもぬけの殻で、こちらのすり替えがバレてしまうだろう?しょうがなしに、王都へもう来ていると話をしてしまったのだ。
そうしたら、直ぐに会いに来るとの事だったので急遽お前に来てもらった。明日はアンドレアに戻ってラファエルに会って許嫁の務めを果たしなさい。
シドには最近のアンドレアの動向について聞きたいことがあったのでな、一緒に呼びつけてしまった。それはシモンと晩餐後に話をしなさい。大丈夫かな?」
シドは一もにもなく頷いていた。そりゃあ学院寮の食事よりうちの晩餐の方が美味しいからね、シドにはメリットしかないだろう。部屋に案内されながら、見るからに機嫌を良くしたシドとは対照的に、僕は顔を顰めて言った。
「何と言う事だろう。予定ではまだずっと先だと思っていたのに。こんなに早くアンドレアに戻らなくちゃならないなんて!」
するとシドが面白そうな顔で僕を見て言った。
「お前もたまにはアンドレアに戻らないと、歩き方のおかしな令嬢になっちゃうから、良かったんじゃないか?」
シドと別れると、僕は王都の屋敷の自分の部屋へと重い足取りで向かった。アンドレアに変身するのはそこまで気が乗らないわけじゃない。僕が気が乗らないのは、ラファエルが会いに来る事だ。彼は…、何て言うか苦手だ。
僕は急にドキドキしてきた胸を叩きながら、何でラファエルがここまで僕を動揺させるのかと眉を顰めた。
僕たちは馬車に乗って王都のポートリー辺境伯の屋敷に向かっていた。週末を待ち切れないのか、金曜日の夕方に馬車を学院寮に寄越された僕たちは、取るものも取り敢えず急ぎ乗り込んだのだった。
シドは肩をすくめて言った。
「いや、全然。でもこの手の事はあまり良い話じゃないんだろうね。アルが何かやらかしたかなぁ。」
そう言って腕を組んで考え込むシドをジト目で見ながら、僕は乗り心地の良い馬車に寄り掛かった。流石に長時間でなければ、馬車に乗るのは嫌いじゃない。僕たちが到着すると、挨拶もそこそこに待ちかねた様に執事が僕らをお父様の執務室へと案内した。
執務室では書類の手を止めたお父様が、顔を上げて僕たちにソファに座るように促した。僕たちは顔を見合わせて言う通りにソファに座ってお父様を待った。
執事が運んできたお茶を飲みながら、お父様が僕に話し出した。
「急に呼び立てして悪かった。予定があったのではないか?実は急な案件があって、アンドレアに戻って欲しいのだ。」
僕はポカンとしてお父様の言葉の続きを待った。
「実は明日の午後、ラファエルがここにお前に会いに来る。」
僕は目を見開いて、お父様を見つめた。急な話で頭の理解が追いつかない。お父様曰くは、領地でずっとアンドレアを引き籠らせておくと、ラファエルがお見舞いと称して会いに行ってしまうだろうと、一定期間の後は王都で静養すると言う話にしておくつもりだったらしい。
「ラファエルから、近々領地へアンドレアに会いに行くと連絡がきてな、流石にそれをされるとアンドレアはもぬけの殻で、こちらのすり替えがバレてしまうだろう?しょうがなしに、王都へもう来ていると話をしてしまったのだ。
そうしたら、直ぐに会いに来るとの事だったので急遽お前に来てもらった。明日はアンドレアに戻ってラファエルに会って許嫁の務めを果たしなさい。
シドには最近のアンドレアの動向について聞きたいことがあったのでな、一緒に呼びつけてしまった。それはシモンと晩餐後に話をしなさい。大丈夫かな?」
シドは一もにもなく頷いていた。そりゃあ学院寮の食事よりうちの晩餐の方が美味しいからね、シドにはメリットしかないだろう。部屋に案内されながら、見るからに機嫌を良くしたシドとは対照的に、僕は顔を顰めて言った。
「何と言う事だろう。予定ではまだずっと先だと思っていたのに。こんなに早くアンドレアに戻らなくちゃならないなんて!」
するとシドが面白そうな顔で僕を見て言った。
「お前もたまにはアンドレアに戻らないと、歩き方のおかしな令嬢になっちゃうから、良かったんじゃないか?」
シドと別れると、僕は王都の屋敷の自分の部屋へと重い足取りで向かった。アンドレアに変身するのはそこまで気が乗らないわけじゃない。僕が気が乗らないのは、ラファエルが会いに来る事だ。彼は…、何て言うか苦手だ。
僕は急にドキドキしてきた胸を叩きながら、何でラファエルがここまで僕を動揺させるのかと眉を顰めた。
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