男装令嬢は溺愛許嫁から逃げ出したい!だって中の人は僕ですから!

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

文字の大きさ
上 下
32 / 67
学院生活

談話室で問題は起きがち

しおりを挟む
シドたちは妙に心配してるけど、リカルド様は凄く親切にしてくれる良い先輩だと僕は思ってる。今日も談話室で待ち合わせして、リカルド様の持っている貴重な本を見せてもらった。

さすがの公爵家だけあって、希少な本を寮室に持ち込んでいるのは感嘆すべき事だ。その本はこの国で採掘した鉱物の記録で、僕は地図と照らし合わせながら興味深く見ていた。


「アルベルトは隣国の出身だから、この手の事に興味があるのかい?」

そうリカルド様にたずねられて、僕はハッとした。この手の情報は本来国外に出しちゃいけないやつなんじゃないのかな。一応僕は隣国の留学生扱いだから。

「…僕はほとんどこの国で育ってますし、多分向こうの国には戻らないと思います。だから、自分がこの国で役に立てる事がないかって模索中です。お互いの国の助け合いが出来ると良いですよね。まぁ理想論ですけど。」


僕がそう言って微笑むと、リカルド様は僕の手をぎゅっと握って言った。

「私は嫡男ではないけれど、国を預かる公爵家の人間として、アルベルトの気持ちはありがたいと思うよ。」

僕はリカルド様に褒められて嬉しさ半分、手を握られて明らかに男とは違うはずなのでバレてしまうかもしれないと心配半分で、笑いで誤魔化しながら手を引き抜こうとした。

けれどもリカルド様は、僕の顔から自分で握った手に視線を移動した。その表情に僕は慌てて立ち上がると、お礼を言いながら手を振り解く様にして、用を思い出したと談話室を後ろを見ずに出て行った。


今のは不味かっただろうか。流石に手の大きさなどは変える事が出来ない。ああ、いっそ剣だこを見せて男らしさを印象づけるべきだったかもしれない。慌て過ぎて出てきてしまったけれど、かえってまずかったのか?ああ、もう困るな…。僕は足早に歩きながら、そんな事をクヨクヨ考えていた。

リカルド様は親切で、他の学院生にも影響があるから一緒にいる事は僕にはメリットばかりなのに。僕は握られた手を目の前に開いて眺めると呟いた。

「…こんな手の男はいないよ。」


僕は早くも色々と、男として生活する事のちょっとした不都合さを感じ始めていた。でもその時は僕は自分の事に夢中で、リカルド様が僕の手の事を実際どう感じたかなんて事に、思いを馳せる事が出来なかったんだ。

僕は迎えに来てくれたシドにホッとすると、今の事を言うか迷った挙句黙っている事にした。何を言われたわけじゃないし、問題は何も起きてないんだから。それは僕の現実逃避のひとつだったんだろうか。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

オレの愛しい王子様

瑞原唯子
恋愛
ずっと翼のそばにいて、翼を支える——。 幼いころ創真はひとりの少女とそう約束を交わした。 少女はいつしか麗しい男装で王子様と呼ばれるようになるが、 それでも創真の気持ちはあのころのまま変わらない。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】 妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。

【完結】新米メイドは男装令嬢のお気に入り

たおたお
恋愛
見た目はどう見ても美少女のマリオンは、実は男の娘。辺境のランズベリー領から王都にやってきて、皆に少女と勘違いされたまま王宮でメイドとして働き始めます。 一方ミランダは王宮でも有名な男装令嬢でフランツ第二王子の幼馴染。あることがきっかけで美少女?メイドのマリオンと出会い、そして男の娘とは知らずに彼女に惹かれていくのでした。 自身が女性であるにも関わらず、初めて少女に惹かれていることに疑問を持ちつつも、どんどんマリオンが気になっていくミランダ。そんな中、親友でもあるフランツもマリオンのことが気になり出していて、そしてついには……!? 見た目はあべこべな二人の恋の行方は? 「ちょっと」変わったメイドのマリオンを中心に繰り広げられるラブコメディーをお楽しみください。 ※本作は第17回恋愛小説大賞に応募しております。気に入って頂けましたら、是非評価&投票の程、宜しくお願いします!

処理中です...