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学院生活
シドの奮闘
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「アル、頼むからホイホイ誘われたからって、ついて行かないでくれないか。」
そう、うんざりした様に僕に言うシドの顔を眺めながら、僕は肩をすくめた。
「だってさ、みんな親切に誘ってくれるから嬉しくて。分かってるって。シドの行かないところには行かないから。でも、ジェイクと仲良くするのは良いだろう?彼は初めての友達なんだから。」
僕はそう言って、明るい茶色の瞳の人懐っこい顔を思い浮かべた。シドは渋々頷いて言った。
「まぁ、ジェイクはシモン様に調べてもらったけど、特に悪い噂もないし大丈夫そうだけどな。」
僕はシドの発言にギョッとしてしまった。
「えっ!シモン兄様がそんな事やってるの?知らなかったよ。」
シドは眉を顰めて僕を指差して言った。
「アルがそうしてられるのは、皆が裏からちゃんとフォローしてるお陰だって、ちゃんと自覚しないとダメだぞ?それより気掛かりはリカルド様だよ。辺境伯の屋敷でも話題になっていたけど、彼は公爵家だ。子爵家の俺は勿論だけど、アルだって無碍には出来ないから困るんだよ。」
僕は最近リカルド様が何かというと僕の前に現れて色々教えてくれたり、一緒に食事をしようと誘ってくれる事を思い浮かべて首を傾げた。
「でもさ、特段嫌な事をされる訳じゃないし、どちらかと言うとリカルド様に可愛がられているせいで、他の面倒な奴らからちょかい出されなくて済んでる面もあるからね。有難いだろう?」
そう言う僕にシドは呆れて言った。
「アルはリカルド様に守ってもらわなくてもあの辺境伯兄弟の身内だって知られたら、十分守りになるんだよ。どうしてその事を隠すのかな。」
僕はシドを睨んで口を尖らせた。
「変に辺境伯の噂が出たら、ラファエルが出てきそうで怖いんだよ。彼に見つかったら流石にバレる気がする。」
するとシドはクスクス笑って言った。
「へぇ、アルは許嫁のラファエル様の事、ちゃんと買ってるんだな。自分の事見破るのは当然だなんて。それって、ラファエル様が自分のことよく分かってるって思ってるって事だろう?」
僕はシドにそう言われて何だかそうじゃないともいえなくて、黙ってしまった。
「あの人、僕が怪我してるって思ってるよね。…心配してるのかな。僕流石にこの嘘は必要だとはいえ、気が咎めてるんだ。」
そんな僕をシドが優しい眼差しで見つめているのに気づいて、僕は慌ててシドの部屋の扉を開けると言った。
「ほら、ジェイクが待ってるから食堂行こう。食べ損っちゃうよ。」
そう、うんざりした様に僕に言うシドの顔を眺めながら、僕は肩をすくめた。
「だってさ、みんな親切に誘ってくれるから嬉しくて。分かってるって。シドの行かないところには行かないから。でも、ジェイクと仲良くするのは良いだろう?彼は初めての友達なんだから。」
僕はそう言って、明るい茶色の瞳の人懐っこい顔を思い浮かべた。シドは渋々頷いて言った。
「まぁ、ジェイクはシモン様に調べてもらったけど、特に悪い噂もないし大丈夫そうだけどな。」
僕はシドの発言にギョッとしてしまった。
「えっ!シモン兄様がそんな事やってるの?知らなかったよ。」
シドは眉を顰めて僕を指差して言った。
「アルがそうしてられるのは、皆が裏からちゃんとフォローしてるお陰だって、ちゃんと自覚しないとダメだぞ?それより気掛かりはリカルド様だよ。辺境伯の屋敷でも話題になっていたけど、彼は公爵家だ。子爵家の俺は勿論だけど、アルだって無碍には出来ないから困るんだよ。」
僕は最近リカルド様が何かというと僕の前に現れて色々教えてくれたり、一緒に食事をしようと誘ってくれる事を思い浮かべて首を傾げた。
「でもさ、特段嫌な事をされる訳じゃないし、どちらかと言うとリカルド様に可愛がられているせいで、他の面倒な奴らからちょかい出されなくて済んでる面もあるからね。有難いだろう?」
そう言う僕にシドは呆れて言った。
「アルはリカルド様に守ってもらわなくてもあの辺境伯兄弟の身内だって知られたら、十分守りになるんだよ。どうしてその事を隠すのかな。」
僕はシドを睨んで口を尖らせた。
「変に辺境伯の噂が出たら、ラファエルが出てきそうで怖いんだよ。彼に見つかったら流石にバレる気がする。」
するとシドはクスクス笑って言った。
「へぇ、アルは許嫁のラファエル様の事、ちゃんと買ってるんだな。自分の事見破るのは当然だなんて。それって、ラファエル様が自分のことよく分かってるって思ってるって事だろう?」
僕はシドにそう言われて何だかそうじゃないともいえなくて、黙ってしまった。
「あの人、僕が怪我してるって思ってるよね。…心配してるのかな。僕流石にこの嘘は必要だとはいえ、気が咎めてるんだ。」
そんな僕をシドが優しい眼差しで見つめているのに気づいて、僕は慌ててシドの部屋の扉を開けると言った。
「ほら、ジェイクが待ってるから食堂行こう。食べ損っちゃうよ。」
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