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与えられたチャンス

入寮手続き

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「うぇ…。きぼちわるい…。」

王都へ来たのは初めての僕は、すっかり馬車に酔ってしまった。そんな僕を呆れた様に見つめたシドが言った。

「普段、辺境伯夫人と買い物とか馬車で行かなかったのか?避暑にも行ってただろう?」

僕は馬車から従者が降ろした荷箱に寄り掛かりながら呟いた。

「面倒だから出来るだけ買い物に付き合う暇はない様にしてたし、避暑は馬に乗って行った…。」

呆れ顔のシドはそれでも心配そうに言った。

「水貰ってこようか。」


丁度その時僕たちの所へ学生らしき二人組が近づいて来た。学院寮の前は僕たちの様な新入生の入寮手続きの面々で賑わっていて、在校生が手伝ってくれているみたいだった。

「君達どうした。何か不都合があったかい?」

そう声をかけてきたのは学院の騎士服を綺麗に着こなしている男たちだった。人一倍体格の良いシドとそう変わらないけれど、いかにも先輩然とした彼らを僕はじっと見つめた。


「あ、すみません。友人が馬車に乗り慣れてなくて酔ってしまったんです。」

シドの話を聞いた彼らは僕を見た。声を掛けて来た一人が僕に近づいて言った。

「…確かに顔色が悪いみたいだ。医務室へ行くかい?」

僕は慌てて立ち上がると、手を振って言った。

「いえ、大丈夫です。もうだいぶマシになりましたから。水を一杯貰いたいんですが、どこで…。」


気がつけば僕は目の前の先輩に肩を支えられて連れ出されていた。

「ヘンリー、私はこの子を医務室へ連れて行くから、彼らの手続きを進めてくれたまえ。薬を飲ませたら直ぐに戻るから。」

もう一人の先輩と、慌てた様なシドの顔を横目に気分の悪さに抵抗も出来ずに、僕はすっかり先輩のなすがまま寮室の管理棟の医務室へと連れて行かれてしまった。

医務室には白衣を着た若い男が居て、話しを聞いて頷くと棚から小瓶を取り出して、薬草の様なそれを使ってお茶を淹れてくれた。


「君、これを飲みなさい。スッキリして直ぐに良くなる。リカルド、君も飲むかい?覚醒するのにも良いんだよ。」

僕を連れて来てくれたのはリカルドと言うらしい。肩までのサラリとした銀髪は僕の良く知っている人を思わせた。リカルドは笑ってソファに座ると僕にウインクして言った。

「君のお陰でサボる理由が出来たよ。…ん!これは確かに目が覚める。これなら具合も良くなるだろう。ところで君は誰かな?さっき一緒にいたのはポートレー辺境伯の所の騎士団長令息だったろう?君の事は見たことも無いし…。心辺りがないのだが。」


薬草茶で随分シャッキリした僕は、いよいよ王立学院の関門が開始されたと緊張を高めて、目の前のリカルドを見つめた。少し後ろで興味深そうに僕たちのやりとりを見つめている男もいる。

さぁ、アルベルト、戦闘開始だ。











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