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与えられたチャンス

マチルダの嘆き

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「マチルダ、何もそんな言い方しなくても。」

僕は怒り心頭のマチルダに眉を下げた。僕の唯一の女友達のマチルダは真っ直ぐな黒髪と緑色の瞳が可愛らしい、このポートリー辺境伯領の騎士団長の一人娘だ。マチルダのひとつ上の子息シドは僕と同い年になる。

「でもお兄様の見る目がないのには、本当にびっくりしますわ。あの性悪のベッキーに良い様にたぶらかされて!」

僕はベッキーを思い起こした。性悪かどうかは知らないけれど、確か僕と同い年の14歳の金髪の女の子で、男爵の娘だったか。胸が大きくて有名で、僕はシドがその子の前で目が離せないで身動きできなくなる様を思い浮かべた。


「ふふ。シドはおっぱいが大きいのが好きなんだね。マチルダ、自分が小さいからってそんなに噛みつかないで?」

僕がそう言って揶揄うと、マチルダは僕の手の甲をつねった。

「痛っ、ひどいよ、マチルダ。」

マチルダは可愛い顔を膨らませて言った。

「どうせ私は胸が小さいですよ。でもそう言うアンドレアだって、大きくはないでしょ?私とそう変わらないんだから。」


僕はニヤリと笑って言った。

「ああ、幸運な事にね?もし僕がベッキーの様に豊満だったら、計画が台無しになるところだったよ。神様に感謝しないとね。」

するとマチルダは少し悲し気な顔をして言った。

「…アンドレアは本気なのね?でも、誰に扮して令息として紛れ込むつもりなの?それにアンドレアとしては学院へ行けないでしょう?」

僕はマチルダがいつも僕の心配ばかりしていることに感謝して、そっと抱きしめて言った。


「そんなに心配しないで、マチルダ。僕は大丈夫。父様が先日教えてくれたよ。ポートリー辺境伯の縁戚に隣国の伯爵家に嫁いだ大叔母がいるらしいんだ。その系列の令息がこちらに幼い頃から来ていたらしい。今は隣国に戻った様だが、彼の名前を借りる事が出来たみたいだ。

だから僕は隣国のルチル伯爵家の三男坊のアルベルトって事。たまたまアルだったなんて、運命だよね?もちろんアンドレアは体調不良か怪我で養生中だよ。だから新学期前に馬車から転げ落ちる事になるかもね?それか落馬か。」


マチルダが本気で落ちないでとまた怒ったけれど、僕は学院入学が楽しみ過ぎて笑いが止まらなかった。準備は万端だ。するとマチルダが言った。

「私はまだ13歳で、アンドレアと一緒に学院へは行けないけれど、お兄様がアンドレアの助けになると思うわ。だからアンドレアもお兄様の事、悪い女に引っかからない様に見張って頂戴ね。」

僕はどれだけ阻止できるかわからなかったけれど、親友で幼馴染みの二人のためなら、頑張ろうと思った。でも本当に頑張らないといけないのは、僕の見張りのシドかもしれないなとは思ったけどね。
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