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生活の変化
お父様への長い手紙
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僕は一通の長い手紙を書き終えて、羽ペンを置いた。僕なりに考えた、これからの人生の大博打をお父様に突きつけるつもりだった。
このまま家族が望むような人生を送る事ができる気が全然しなかった。いつか絶対破綻してしまいそうだ。女の子ちっくなアンドレアとして学院へ行き、正体の掴めない許嫁と婚約して、時を経てずして結婚。…結婚!
敷かれたレールの上を、何も考えずに歩き続けることは耐えられそうもなかった。どこかで嫌になって逃げ出してしまいそうだ。それならいっそのこと、自分で納得したい。
僕の力を発揮した上で、その人生を歩むのならまだ納得できそうな気がしたんだ。だから僕はお父様に脅しとも取れる要望書を書き連ねた。
僕はもう一度読み返すと、ニンマリ笑って蝋印で封印すると執事にこれを王都のお父様に届けてくださるように頼んだ。執事は随分厚いお手紙ですねと微笑んだけれど、僕は笑って誤魔化すしかなかった。
それから僕は毎日図書室に篭った。僕は家庭教師についてもらっていたけれど、10歳になってからは僕が知りたい歴史や王政などの科目時間が少なくなってしまったからだ。
その代わりマナーや美術や音楽の科目が増えて、正直ウンザリしていた。音楽などは嫌いじゃないけれど、マナーはマリーのお小言で十分な気がした。
僕がピアノを気晴らしに弾いていると、フレッド兄様が来てドカリとソファに座った。
「アンドレアは器用だな。俺はどうもピアノとは相性が悪くて。…やめないで弾き続けてくれ。」
僕はクスッと笑いながら、ピアノと一緒に歌を歌った。フレッド兄様が好きなこの歌は、この地方の昔から伝わる美しい悲哀もので、人気がある。
「…美しい曲だな。やっぱりそうしていると、アンドレアは俺の妹なんだって改めて思うよ。見かけが変わると、こうも変わるのかな。」
僕はピアノの鍵盤をひとつ弾いて言った。
「僕は僕でしかないよ。いくらドレスに身を包もうが、フレッド兄様が呼んでくれるアルでしかない。勿論アンドレアも僕だ。でもアンドレアの中身の僕を一体どれほどの人が気づいてくれるだろうね。家族の中でも、本当にそれを感じてくれているのは、フレッド兄様だけの様な気がする。」
するとフレッド兄様は薄く笑って言った。
「アル、いやアンドレア。そこまで悲観する必要はないさ。家族は皆お前の葛藤には気づいている。ただ、どうして良いか分からないのは皆も同じだ。もう一人気づいている気がするけど、それはお前が賛同しなさそうだ。」
このまま家族が望むような人生を送る事ができる気が全然しなかった。いつか絶対破綻してしまいそうだ。女の子ちっくなアンドレアとして学院へ行き、正体の掴めない許嫁と婚約して、時を経てずして結婚。…結婚!
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僕の力を発揮した上で、その人生を歩むのならまだ納得できそうな気がしたんだ。だから僕はお父様に脅しとも取れる要望書を書き連ねた。
僕はもう一度読み返すと、ニンマリ笑って蝋印で封印すると執事にこれを王都のお父様に届けてくださるように頼んだ。執事は随分厚いお手紙ですねと微笑んだけれど、僕は笑って誤魔化すしかなかった。
それから僕は毎日図書室に篭った。僕は家庭教師についてもらっていたけれど、10歳になってからは僕が知りたい歴史や王政などの科目時間が少なくなってしまったからだ。
その代わりマナーや美術や音楽の科目が増えて、正直ウンザリしていた。音楽などは嫌いじゃないけれど、マナーはマリーのお小言で十分な気がした。
僕がピアノを気晴らしに弾いていると、フレッド兄様が来てドカリとソファに座った。
「アンドレアは器用だな。俺はどうもピアノとは相性が悪くて。…やめないで弾き続けてくれ。」
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するとフレッド兄様は薄く笑って言った。
「アル、いやアンドレア。そこまで悲観する必要はないさ。家族は皆お前の葛藤には気づいている。ただ、どうして良いか分からないのは皆も同じだ。もう一人気づいている気がするけど、それはお前が賛同しなさそうだ。」
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