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生活の変化

戻ってきた日常

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嵐の様な誕生日が過ぎて、どう扱って良いのか分からない許嫁もようやく帰ってくれて、僕はいつもの日常を取り戻した。いや実際にはいつも通りではなかった。

今までの自由さを失って、僕は身体を締め付けるドレスに行動を阻害されながらの、囚人の様な生活が始まったんだ。マリーは僕にドレスを着せつけながら眉を顰めて言った。


「アンドレア様は成長期ですから、これでもまだゆったりとしている方なんですよ?これで文句を言ってたら、立派なレディにはなれません。」

僕はキャミソールを締め上げるリボンを両手に持ったマリーが、まるで監獄の看守の様に見えているなんて口が裂けても言えないけれど、気分はまさにそれだった。


「大体女ばかりがこんな締め付けられるとか、おかしいでしょ?ね、マリー、締め上げるのは成長が終わってからでいいんじゃない?今は伸び伸びとさせてよ。ね?」

するとマリーは僕のお腹を撫でて言った。

「まぁ、アンドレア様は剣の稽古で美しい身体ですけどね、本来は筋肉じゃなくて、柔らかさが女の子の可愛らしさなんですよ?分かりました。では食事の量を減らしましょう。そうすればそんなに締め付けなくても美しい身体のラインを保てますからね?」


僕は鏡の中のマリーを睨んで言った。

「卑怯者!僕から大好きな食事を人質に取るなんて!」

マリーはほくそ笑んで、僕に宥める様に言った。

「アンドレア様、ではどうか諦めて貴族のレディらしく、最低限の身だしなみと言葉使いをお願いしますね?元々、アンドレア様は賢い方ですから出来ないことを頼んでいるのではございませんから。」


僕はため息をついて姿勢を正すと、鏡の中の可愛らしい貴族令嬢然とした僕に言い聞かせる様に呟いた。

「分かったわ。私は今後のことを真剣に考える必要があるって事が。」

それから僕は図書室で調べ物をしたり、家庭教師とお勉強をしたり、お母様やシモン兄様や、フレッド兄様とお茶を楽しんだりと、大人しく日々を過ごしていた。

オリバー兄様はお父様と王都へと行ってしまったので、ある意味本当にのんびりと過ごしていた。僕がドレスを着る事にも、走り回れなくなった事にも癇癪を起こさなくなったので、家族は顔を見合わせて時々目配せしているのに気づいていた。


「アンドレアがこうも大人しいと、何だかザワザワするよ。何処かに落とし穴でも仕掛けられているんじゃ無いかってね。」

シモン兄様がそう言って笑うと、お母様が嬉しげに言った。

「まぁ。アンドレアがようやくレディとしての自覚を持ったという事なのではないかしら。10歳になればそろそろ色々と自覚が出てくる年頃ですもの。やっぱりラファエルと許嫁になったのが大きかったかしら。」

僕は思わず埴輪目になりながら、お母様に言った。

「ぼ、私はあの人、ちょっと怖いです。何考えてるのか分からないし。」

すると三人が顔を見合わせて、クスクスと笑った。え、今何か笑う様な所だった?どっちかと言うと怖い話だったんですけど。






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