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生活の変化

やるからには真剣に

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 審判のオリバー兄様が僕とラファエルの真ん中に立って、僕達は訓練用の模造剣をそれぞれ腕に挟んで握手した。僕を真っ直ぐ見つめるラファエルは大きく息を吸って、言った。

「アルを倒したくはないけれど、だからと言ってワザと加減をするつもりは無いよ。君の剣の腕前は聞いているから、真剣にやるつもりだ。」

僕はニヤリとほくそ笑むと、同意する様に頷いた。すると僕たちを見ていたオリバー兄様が面白そうにとんでもない事を言い始めた。

「許嫁同士の手合わせだ。勝者に何か褒美が必要じゃないかな。では、勝者の願いをひとつ叶えよう。それぞれが私に耳打ちしなさい。」


 ラファエルは迷いなくオリバー兄様の側に行くと、何事かを囁いた。それを聞いたオリバーはクスッと笑うと頷いた。一方の僕は勝ったら何をしてもらおうかと、ラファエルを見つめた。

婚約解消は家の問題だから無理だし、これ以上側に近寄らない様にしてもらうのはどうだろう。ラファエルはいちいちスキンシップが多過ぎて、ちょっと怖いくらいだ。僕はオリバー兄様の耳元に手を当てて囁いた。

『ラファエルが私に触れない様に命じて下さい。』

オリバーお兄様は面白そうに口を歪めて頷いて、皆に聞こえる様に言った。

「両者の願いは、勝者のみ叶えられる。アンドレアのハンデは二本。ラファエルは一本先に取られた方が負けだ。…始め!」


 腕や脚、胴体に簡易な鎧をつけてはいるものの、模造剣は身体に当たるとかなり痛い。ましてラファエルは私よりひと回り大きな身体の男の子だ。ハンデは私が先に彼から一本さえ取れば勝ちになる。

私はラファエルと握手した際に感じた、手の剣ダコを思い出した。あの手はフレッド程ではないけれど、騎士団長の令息であるシドレベルには剣に慣れた手に思えた。侯爵令息の割に、剣をやっていると言えた。


 油断したらあっという間に二本取られてしまいそうだ。僕は、剣を構えながら、ゆっくりとラファエルとの間合いを詰めた。不意に目の前に剣が伸びてきて、僕は身体を捻ってかわした。

思いの外無駄のない動きで、僕は顔を顰めた。これはなかなかきつい試合になりそうだった。それから僕たちは剣を打ち合って、金属音を響かせた。力で押された隙に振り払われて、地面に転がった僕に一本突きつけられた。


 オリバーの一本の声に、僕は唇を噛んだ。思いの外ラファエルは剣に長けていた。それから必死に食らいついたけれど、ギリギリのところでかわされて、もう一本僕がラファエルに取られた。

その時周囲のドッと騒めく声がして、僕は打ち合っている間中集中して、剣の音しか聞こえてなかった事に気づいた。こんな試合は久しぶりで、僕は思わず心地よいため息と一緒に、笑って言った。


 「降参!ラファエルは僕より一枚上手だ。凄い楽しかったよ。」

するとオリバー兄様がラファエルに勝者への褒美をやろうと、僕から剣を取り上げて耳打ちした。

『…ラファエルの願いは簡単だ。アンドレアからの唇への口づけだ。お前も騎士見習いなら、約束を果たせよ。』







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