男装令嬢は溺愛許嫁から逃げ出したい!だって中の人は僕ですから!

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

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生活の変化

許嫁が怖い

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僕は思わずグイグイ来るラファエルから、距離を取ろうと仰け反った。いつもなら体勢が崩れても、どうにでもなるのに、ドレス姿では脚を踏ん張ることもできずに、座った倒木から落ちそうになった。そんな僕をラファエルがサッと抱き抱えた。

至近距離で顔を合わせたせいで、ラファエルの濃い灰色の瞳の中に、小さな星の様な模様が有るのが見えた。僕は思わずその星に見惚れて、ラファエルに抱き抱えられるままに口を開いた。


「目の中に星が…。」

僕の言葉にラファエルはハッとして、にっこり笑うと、もう一度それを見せつける様に僕をじっと見つめて囁いた。

「私の星はアルのものだよ。その代わり、アルの瞳の中の優しい空も私のものにしても良いかい?」

相変わらず笑いっぱなしのフレッド兄様が、ようやく僕の側に来て、ラファエルを僕から引き剥がしてくれた。

「ラファエル、浮かれているのは分かるが、もう少し節度のある態度で頼むよ。俺もオリバー兄上に叱られたくないからね。」

すると急に、失礼したと僕にそっけない態度で、フレッドと話し始めた。


僕は顔が赤くなっているのを自覚しながら、倒木から飛び降りると、愛馬に跨って言った。

「まったく!距離感がおかしいよ、ラファエルは!僕、先に行くから!」

何かフレッドが言っていた気がするけど、僕はあの意味不明な銀髪の男から逃げ出したかった。僕を女の子扱いするのは、許嫁だからしょうがない、目を瞑ろう。でも、その他のことは?

僕の事を勝手にアルと呼んで、僕の事を自分のものだって言うなんて!僕はうわーと大声で叫びたかった。訳もなく、大きな力に自分が呑み込まれそうな恐怖を感じたんだ。


メリーを駆けさせて、ふと僕は彼の前ですっかり令嬢モードで取り繕うのを忘れてしまったと気づいた。あまつさえ、叫んで逃げ出してしまったんだから。

許嫁にそんな態度を取ったら、流石に僕にもそれが大ごとだって分かる。僕はドキドキしながら、小綺麗な檸檬色のドレスに着替えると、朝食を食べにダイニングへと降りていった。


案の定グローバンス侯爵が大テーブルに着席していた。やっぱり侯爵は城に滞在していたんだ。侯爵と家族に挨拶だけすると、僕はため息をついて末席に着いた。

朝から本当に疲れた。でも僕の災難はまだ始まったばかりだったみたいだ。そこにフレッド兄様とラファエルが姿を現した。ラファエルは脇目も振らずに僕の側に来ると、僕の手を取って指先に口づけるとにっこり微笑んで言った。


「アンドレア、先程は失礼した。私は君の笑顔で胸を焼かれて、どうかしてしまったみたいなんだ。」

ギョッとした様な顔をしたフレッド兄様と、硬直したお父様、頬を赤らめたお母様、目を見開いた侯爵とシモン兄様、眉を顰めたオリバー兄様の顔が僕の目に飛び込んできた。

ああ、もう死にたい。この人怖すぎるんですけど!





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