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辺境の地で

誕生日の取り引き

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お母様の指示の元、朝から僕は、マリーや侍女たちによって美しく着飾られていた。とは言え、所詮10歳の僕だ。着飾るのにも限界があるだろうに。僕がうんざりした顔で欠伸をしていると、お母様の鋭い声がした。

「アンドレア、もっと緊張感を持ちなさい。今日は誕生日というだけではなくて、10歳の貴族界へのお披露目兼、婚約発表も兼ねているのですからね?」


僕は、興奮した様にギラついているお母様を鏡越しに見つめて言った。

「お母様、そんなに興奮したら倒れてしまいますよ?それに、少しリラックスしていた方が、きっと僕も少しは楽しめるでしょうから。」

すると、すぐさまマリーから小言が来た。

「アンドレア様、今日は隙なく御令嬢になるとお約束されたのではありませんでしたか?奥様の仰いますようにもう少し緊張感を持たれませんと、ボロが出ますよ?」


僕は肩をすくめて、これ以上喋るのも皆をイラつかせるだけだと踏んで、黙っている事にした。それにしてもこの下着は良い。ボクサーパンツというわけにはいかなかったけれども、脚のくりがスッキリしているカットは動きやすいなんてもんじゃない。

レースは邪魔くさいけど、贅沢は言えない。侍女たちもこれを見た時は、ワクワクしていたもんね?でもお母様の表情が険しいな。ほら、何か言い出すぞ?

「マリー、これがアンドレアの考えた下着なのかしら。少し大人っぽくはなくて?アンドレアはどうしてこんなものを考えたのかしら。でも今更しょうがないわね。これと引き換えに、ドレスはこちらに任せてくれたのだから。」


僕はお母様のそばに掛かっているお誕生日ドレスを見て、少しげんなりしてしまった。淡いピンクのグラデーションのシフォン生地はふんわりとしていて、真ん中に真っ白な繊細なレースが何本も胸元から足に向かって美しく飾り付けられていた。

極め付けはウエストの、美しい刺繍が施された僕の瞳と同じ色のリボンだ。もうゲロ甘な女の子ちっくなドレスに、僕は文句ひとつ言えない。下着と取り引きした結果だからしょうがないけどね。


そんな甘いドレスを着た僕のミルクティー色の巻き毛には、白と水色の小花の飾りが散りばめられていて、これはちょっとやり過ぎなんじゃないかなって思ったけど、侍女たちのうっとりした顔を見て、何も言うまいと決めた。

もうとりあえず、この最悪な1日が無事に終わる様に僕は祈るだけだよ。お母様の、僕と同じ水色の瞳に光る涙を見て、正直我慢しようってもう一度決心したのは、結果的には大正解だったのだから、ね?

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