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辺境の地で
乗馬の後は
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「アンドレア様、身支度がお出来になられましたら、旦那様がテラスにてお待ちです。」
セバスチャンにそう言付けられて、僕は渋々侍女と部屋に戻った。乗馬に適した男装を脱ぐと、サッと甘い香りのお湯で身体を拭われて、大きな鏡の前に立った。子供らしい、けれど可愛らしい刺繍の施したカボチャパンツを履くと、キャミソールのリボンを背中で絞ってもらう。
「ね、マリー、このカボチャパンツ何とかならないのかな。もう少しピッタリしたものじゃないと、歩きにくいよ。」
僕がそう言って文句を言うと、諦め顔のマリーが少し口元を緩めて言った。
「明日にはお好みの下着が届きますから。まったくアンドレア様の思いつきと言ったら、小間物屋もびっくりですよ。でもきっと流行るに違いありません。私も少し楽しみですもの。」
僕はそのニュースを聞いて、一気に気分が上がった。これでドレスを着ても動きが良くなるはずだ。よしよし。僕が蜜を舐めた猫の様に笑っていたせいか、マリーは急に目つきをすがめて言った。
「旦那様から明日のお誕生日のことでお話しがあるんじゃありませんか?あまり癇癪を起こしません様に、お気をつけて下さいましね?あまりに酷いと、例によって大叔母様がレディのためにと、やって来ないとも限りませんから。」
僕は2年前のあの地獄の様な日々を思い出して、思わずゾッとしてしまった。僕があまりにも男の子過ぎて、お父様が大叔母様を召喚してしまったんだ。もう、あの人にマナーレッスンを受けるくらいなら、ハイハイ言って大人しくした方がマシだ。
「十分に分かってますわ。これでよろしくて?マリー。」
マリーは目を見開いて、少し諦め顔で言った。
「ずっとその調子でいてくだされば、こんなに早く許嫁の話も出なかったんじゃございませんか?一体どなたがアンドレア様の許嫁に選ばれたんでしょう。アンドレア様はお心辺りはございせんの?」
「ぜーんぜん。大体僕の知り合いは、皆僕を男女としか見てないからね。僕だって自分より弱い奴はごめんだし。…まさかずっと歳上だったりするんだろうか。それも嫌だな。一緒に駆け回れないなんて。」
マリーは呆れた顔で言った。
「そもそも、御令嬢は許嫁と駆け回ったりなんてしません。さぁ出来ましたよ。アンドレア様にピッタリの青と白のストライプのエプロンドレスです。とってもお似合いですよ?」
僕はチラッと鏡の中の僕を見ると、いつもながら絵本の中の女の子みたいだなと思いつつ、さっさと扉へと歩き出した。後ろから付いてくる侍女のマリーの令嬢の歩き方と言う小言に、ため息をついてスイッチを切り替えると、優雅に微笑んで、テラスに向かって廊下を歩き出した。
セバスチャンにそう言付けられて、僕は渋々侍女と部屋に戻った。乗馬に適した男装を脱ぐと、サッと甘い香りのお湯で身体を拭われて、大きな鏡の前に立った。子供らしい、けれど可愛らしい刺繍の施したカボチャパンツを履くと、キャミソールのリボンを背中で絞ってもらう。
「ね、マリー、このカボチャパンツ何とかならないのかな。もう少しピッタリしたものじゃないと、歩きにくいよ。」
僕がそう言って文句を言うと、諦め顔のマリーが少し口元を緩めて言った。
「明日にはお好みの下着が届きますから。まったくアンドレア様の思いつきと言ったら、小間物屋もびっくりですよ。でもきっと流行るに違いありません。私も少し楽しみですもの。」
僕はそのニュースを聞いて、一気に気分が上がった。これでドレスを着ても動きが良くなるはずだ。よしよし。僕が蜜を舐めた猫の様に笑っていたせいか、マリーは急に目つきをすがめて言った。
「旦那様から明日のお誕生日のことでお話しがあるんじゃありませんか?あまり癇癪を起こしません様に、お気をつけて下さいましね?あまりに酷いと、例によって大叔母様がレディのためにと、やって来ないとも限りませんから。」
僕は2年前のあの地獄の様な日々を思い出して、思わずゾッとしてしまった。僕があまりにも男の子過ぎて、お父様が大叔母様を召喚してしまったんだ。もう、あの人にマナーレッスンを受けるくらいなら、ハイハイ言って大人しくした方がマシだ。
「十分に分かってますわ。これでよろしくて?マリー。」
マリーは目を見開いて、少し諦め顔で言った。
「ずっとその調子でいてくだされば、こんなに早く許嫁の話も出なかったんじゃございませんか?一体どなたがアンドレア様の許嫁に選ばれたんでしょう。アンドレア様はお心辺りはございせんの?」
「ぜーんぜん。大体僕の知り合いは、皆僕を男女としか見てないからね。僕だって自分より弱い奴はごめんだし。…まさかずっと歳上だったりするんだろうか。それも嫌だな。一緒に駆け回れないなんて。」
マリーは呆れた顔で言った。
「そもそも、御令嬢は許嫁と駆け回ったりなんてしません。さぁ出来ましたよ。アンドレア様にピッタリの青と白のストライプのエプロンドレスです。とってもお似合いですよ?」
僕はチラッと鏡の中の僕を見ると、いつもながら絵本の中の女の子みたいだなと思いつつ、さっさと扉へと歩き出した。後ろから付いてくる侍女のマリーの令嬢の歩き方と言う小言に、ため息をついてスイッチを切り替えると、優雅に微笑んで、テラスに向かって廊下を歩き出した。
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