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番を持ってるΩです
伊集院side灰原氏の番
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まったく驚いた。この事実を誰かに言いたくてたまらない。けれど、灰原氏は私の友人でもあるし、大事な仕事仲間だから迂闊に情報は流せない。
経済界の風雲児仲間の灰原氏は、優しい笑顔で柔らかな雰囲気を持ちながら、その実誰にも深入りさせない男だ。仕事をする様になって直接色々話す様になったけれど、灰原氏は学生の頃から何かと話題になっていた。
私はそんな自分にも似た灰原氏に妙な親近感を勝手に持っていた。けれど仕事で顔を合わせる様になってからは、微笑みや軽口の裏で、完全な線引きをして他人をシャットアウトしているのが感じられた。
それはアルファなら誰でもそういう面はあるものの、灰原氏の場合はそれが巧妙なのだからタチが悪い。灰原氏の前で砕け散っていく多くの人間を見てきて、特にΩに対しての拒絶が強かったので内心灰原氏はΩ嫌いだと勝手に思っていたんだ。
それなのに目の前の何ていうか、オメガらしくないがそうかと言って何のバースかと問われたらオメガと言うしか無い青年と番になったと言われて、どんなに驚いた事だろう。
しかも彼は白路山のトレッキングで捻挫した私を手際良く助けてくれた、印象深い若者だった。大学生かと思っていたが、灰原氏が言うには高校三年生?これは経済界でも、アルファ界でも大きなニュースになる話だ。
Ω特有の愛想や儚げな雰囲気はまるで無いけれど、妙に印象深い灰原氏の番いは、見たことの無い灰原氏のムズムズする様な溺愛をサクッと受け止めて流している。
それでも時々不意に甘い空気を出して灰原氏に蕩ける眼差しを向けるのが、ドキドキするほど魅力的だった。思わず惚けて見とれていると、灰原氏がピリっと空気を震わせて私に威嚇のフェロモンを飛ばしてくるのには参った。
新婚だからしょうがないけれど、それにしても威嚇しすぎじゃないのか?番ったのならもう少しゆったりと構えていてもいいはずだが。
その時俺は、白路山で目の前の青年が残した言葉を思い出していた。彼はあの時、自分には神様が三人居ると言ってなかったか?それってどう言う事なんだろう。もしかして彼は浮気しているのか?番になったΩが他所見をするとか聞いた事がないのだが…。
気になり出すと、どうしてもハッキリさせたくなるのは私の悪い所だ。新婚に言うべき事じゃ無いと思いながら、聞いてみたいと葛藤していると、その答えは本人からもたらされた。
「…今夜は誠と一緒に晩御飯食べてくるって言ってあるから。あいつらは自分達でどうとでもするだろ?」
そう灰原と何気に会話している言葉が、私の耳に飛び込んできた。私は思わず酒にむせて、チラッと灰原氏の方を見た。すると灰原氏は苦笑して私に知りたい情報くれたんだ。
Ωの彼が三人の番いを持っている事。他の二人も高校生なので自分が新居へ通っている事を。私は灰原氏の話を聞きながら、ゴシップの記者の気持ちがわかった気がしたんだ。
理解できない事ってのは、とことん知りたくなるものだって。けれども灰原氏は私に釘を刺すのも忘れなかった。
「伊集院さん、この話はまだオフレコで頼みますね?私も自分の可愛い番の事は公にしたいけれど、まだ高校生の岳を矢面に立たせたく無いんです。噂レベルで止まってくれればそれはそれでありがたいですしね。」
すると、灰原氏の隣で美味しそうに料理をがっついて、ある意味高校生らしい振る舞いをしていた岳君は、私と灰原氏の顔を見て言った。
「全く誠は過保護だね。この街じゃ公然の秘密なのに。でも誠達のおかげで俺も呑気に過ごせているから感謝かな?」
すると灰原氏は蕩ける眼差しで岳君を見つめて言った。
「‥その感謝を示してくれても良いんだよ、岳。」
すると途端に真っ赤になった岳君は私をチラッと盗み見て、人前で何を言い出すのかと灰原氏を問い詰めていたけど、灰原氏のそんなデレた顔は見たくなかった。別人じゃないか。ああ、全世界に叫びたい!灰原氏の番いの話を!
経済界の風雲児仲間の灰原氏は、優しい笑顔で柔らかな雰囲気を持ちながら、その実誰にも深入りさせない男だ。仕事をする様になって直接色々話す様になったけれど、灰原氏は学生の頃から何かと話題になっていた。
私はそんな自分にも似た灰原氏に妙な親近感を勝手に持っていた。けれど仕事で顔を合わせる様になってからは、微笑みや軽口の裏で、完全な線引きをして他人をシャットアウトしているのが感じられた。
それはアルファなら誰でもそういう面はあるものの、灰原氏の場合はそれが巧妙なのだからタチが悪い。灰原氏の前で砕け散っていく多くの人間を見てきて、特にΩに対しての拒絶が強かったので内心灰原氏はΩ嫌いだと勝手に思っていたんだ。
それなのに目の前の何ていうか、オメガらしくないがそうかと言って何のバースかと問われたらオメガと言うしか無い青年と番になったと言われて、どんなに驚いた事だろう。
しかも彼は白路山のトレッキングで捻挫した私を手際良く助けてくれた、印象深い若者だった。大学生かと思っていたが、灰原氏が言うには高校三年生?これは経済界でも、アルファ界でも大きなニュースになる話だ。
Ω特有の愛想や儚げな雰囲気はまるで無いけれど、妙に印象深い灰原氏の番いは、見たことの無い灰原氏のムズムズする様な溺愛をサクッと受け止めて流している。
それでも時々不意に甘い空気を出して灰原氏に蕩ける眼差しを向けるのが、ドキドキするほど魅力的だった。思わず惚けて見とれていると、灰原氏がピリっと空気を震わせて私に威嚇のフェロモンを飛ばしてくるのには参った。
新婚だからしょうがないけれど、それにしても威嚇しすぎじゃないのか?番ったのならもう少しゆったりと構えていてもいいはずだが。
その時俺は、白路山で目の前の青年が残した言葉を思い出していた。彼はあの時、自分には神様が三人居ると言ってなかったか?それってどう言う事なんだろう。もしかして彼は浮気しているのか?番になったΩが他所見をするとか聞いた事がないのだが…。
気になり出すと、どうしてもハッキリさせたくなるのは私の悪い所だ。新婚に言うべき事じゃ無いと思いながら、聞いてみたいと葛藤していると、その答えは本人からもたらされた。
「…今夜は誠と一緒に晩御飯食べてくるって言ってあるから。あいつらは自分達でどうとでもするだろ?」
そう灰原と何気に会話している言葉が、私の耳に飛び込んできた。私は思わず酒にむせて、チラッと灰原氏の方を見た。すると灰原氏は苦笑して私に知りたい情報くれたんだ。
Ωの彼が三人の番いを持っている事。他の二人も高校生なので自分が新居へ通っている事を。私は灰原氏の話を聞きながら、ゴシップの記者の気持ちがわかった気がしたんだ。
理解できない事ってのは、とことん知りたくなるものだって。けれども灰原氏は私に釘を刺すのも忘れなかった。
「伊集院さん、この話はまだオフレコで頼みますね?私も自分の可愛い番の事は公にしたいけれど、まだ高校生の岳を矢面に立たせたく無いんです。噂レベルで止まってくれればそれはそれでありがたいですしね。」
すると、灰原氏の隣で美味しそうに料理をがっついて、ある意味高校生らしい振る舞いをしていた岳君は、私と灰原氏の顔を見て言った。
「全く誠は過保護だね。この街じゃ公然の秘密なのに。でも誠達のおかげで俺も呑気に過ごせているから感謝かな?」
すると灰原氏は蕩ける眼差しで岳君を見つめて言った。
「‥その感謝を示してくれても良いんだよ、岳。」
すると途端に真っ赤になった岳君は私をチラッと盗み見て、人前で何を言い出すのかと灰原氏を問い詰めていたけど、灰原氏のそんなデレた顔は見たくなかった。別人じゃないか。ああ、全世界に叫びたい!灰原氏の番いの話を!
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