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灰原さん

勝者など居ない※

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部屋にお互いのフェロモンを充満させて挑発しあっても、結局は苦しくなるのはお互い様だと、俺は直ぐに気づいてしまった。俺の指に絡みつくぬめりは増すばかりで、俺は目の前の灰原さんの猛り切ったそれを恨めしげに見つめる羽目になったのだから。

遂には大きく脚を拡げて、はしたなく見せつけて泣き言を言う羽目になった。

「灰原さん、はやく負けて…。」


すると灰原さんは立ち上がると、殊更ゆっくりと下着を脱いで、完全に育ち切った自身を両手で撫でた。その姿を俺が目を離せない事に笑って、近づいてきて俺の片足を掬って引き倒すと、その足にキスして言った。

「先に動いた私の負けだね?」

本当は泣き言を言った俺の負けの様な気がしたけれど、灰原さんが大人の余裕を見せて負けてくれた事で、この膠着状態から俺たちを救ったのは理解していた。


太腿を押し広げながら俺にのしかかって来た灰原さんは、唇を触れ合わせたと思った次の瞬間には、俺の口の中をまさぐっていた。粘膜の柔らかな場所を舌でなぞられると、震える様な気持ち良さが襲って来た。

俺を包み込む甘いフェロモンが気持ち良くて、俺は灰原さんの首に手を伸ばして、この旨そうなアルファをガッチリと抱え込んだ。そんな俺に灰原さんが笑った気がして、俺は自分だけが熱中してるのかと羞恥心が襲って来た。


でも次の瞬間には胸をギュッと摘まれて、驚くほどの快感が脳天と腹の奥へと走った。身体を硬くして仰反ると、唇から離れた灰原さんの唇が俺の胸を覆って、そこからは終わりのない地獄の様な快感の始まりだった。

いやらしい水音は俺の身体の奥からも響いて、そのはしたなしさに俺は胸が焼け付く様だった。相変わらず現実を受け止められない俺は、さっきまで呆れるほどの卑猥な誘いをしていたのに、不意に我にかえる自分を持て余していた。


「岳くん…。私を見なさい。さぁ…。」

そう灰原さんに促されて、ゆるゆると重い瞼を開けて灰原さんの整った大人っぽい顔を見ると。そこには汗を滲ませた余裕のない表情の灰原さんが俺を見つめていた。

「岳くんが可愛くて、色っぽくて、私もギリギリなんだ。急に恥ずかしがる岳くんを滅茶苦茶にしたくてしょうがないよ。」

そう言って慈しむ様に唇を顔中に触れるけれど、俺の中を犯す指は止まるどころか、どんどん速くなって俺はひりつく快感に喘ぐことしか出来ない。もういっそひと突きに逝かせて欲しいと思ったのが伝わったのか、指が引き抜かれて直ぐに灰原さんの、重みのあるそれがズンッと俺を貫いた。


自分の叫び声がまるで別の場所で響くかの様な感覚のなか、俺は灰原さんのもたらす激しい挿出についていくのがやっとだった。焦らされた快感が膨れ上がって、それは手加減のない灰原さんに攻められあっという間に弾け飛んで、そこからは終わらない苦しさと紙一重の、搾られる様な気持ち良さに振り回されていた。

いつの間にかうつ伏せた俺の後ろからグポグポと打ち立てられて、切羽詰まった様な灰原さんの呻き声が聞こえてきて少し安心したせいで、更に奥まで嵌められていた。その快感にビリビリと背中を震わせた俺は、嬌声を上げ続けていた。

それから長いアルファの吐き出しが俺を支配して、灰原さんの唇が首のネックガードの側を這い回る度にゾクゾクと震えて、ますますアルファを締め付けていた。


ズルリと灰原さんが出て行ったのと共に、温かなものが腿に流れるのを感じて、そう言えば俺たちは生でしてしまったのだと今更ながら思い出す有様だった。

「灰原さん、なまでしたの…?」

そう言う俺に灰原さんが後ろから抱えながらボソリと言った。

「…サンプルは、万全じゃないと…。生でするのも相性ってあるんだよ。」

そう耳元で囁かれた言葉に、本当にそんな事あるんだろうかと思いながらも、信じたふりをした俺も大概だろうか。











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