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変異Ω
進路の行方
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「東はさ、地元じゃない所への進学とか考えてんの?」
前の席の、相川のところに来ていたクラスメイトにそう尋ねられて、俺は腕を組んで首を傾げた。
「んー、どうかな。元々地元に進学してのんびりするつもりだったけど、受かる確定も無いしな。一応東京の大学も見学に行こうと思ってる。」
すると相川が真面目な顔で俺に言った。
「東はΩ対応してる大学を選ばないとダメだぞ?」
俺はポカンとして相川の顔を見た。二人は顔を見合わせて、相川が呆れた様に言った。
「どうして当事者の東が、そんな大事な事知らないのかな。Ωの急なヒートに手厚い大学と、そうでもない大学とかあるの知らない?Ωに手厚い大学は結局、大学自体に余裕があるから全方位に人気だけどな。
俺たちはβだから、敢えてそう言う手厚くない、競争力の低い国立系の大学に滑り込む裏技使えるけど、東は無理だからな?地元の国立だってΩの絶対数少ないし、予算も無いから手厚くはないんじゃないの?お前さ、もうちょっと色々自覚持てよ?俺は心配だよ。」
俺は眉を顰めて呟いた。
「…相川に心配されるとか、俺も終わってるかもしれない。」
途端にクラスメイトの笑い声と相川の文句が教室に響いて、俺たちは無駄な注目を浴びてしまった。しかし今の相川たちの話は俺には盲点だった。確かに経営の上手い私立大学の方が、Ω対応が良いのかもしれない。
何てこった。俺の思い描いていた、基本的な進学コースが脆くも崩れ去っていくじゃないか。あいつらは、この事知っていたんだろうか。
俺が眉を顰めて考え込んでいると、担任の池ちゃんが教室に入って来て、5時間目のホームルームが始まった。
「ハイっ!何か皆に会うのも一週間ぶり?の生徒もいるかな?私の授業受けてない文系の皆は久しぶりだね。えー、今日の議題は、進路講演会についてですね。
進学した大学について色々生々しい話をしに、卒業生が我が校に来週来てくれます。三年生は必修ですので、必ず出席して下さい。ちなみに午前中は講堂で、午後は各教室で直接話しを聞けます。こんな機会はあまり無いから積極的に参加する様に。詳しくは手元に配った資料に参加大学について書いてます。
ちなみに人気大学のスタッフも参加するので、設備や経済支援系の話なども詳しく聞けるとのことです。ネットじゃ分からない話が聞けるから、活用してください。じゃあ、以上でホームルームは終わりです。」
俺たちは池ちゃんのやる気の無いホームルームに感謝して、ザワザワと帰り支度を始めた。俺は手元の一覧表を眺めながら、大学スタッフの話を聞きに行くべきなんだろうかと考え込んでいた。
「岳、一緒に帰ろう。」
机の隣に新が立っていて、俺はプリントを学バンにしまうと新と連れ立って歩き出した。一応スマホで叶斗にメッセージを送ると、待っててくれと泣きのスタンプが送られてきた。
「待ってろってさ。」
新は肩をすくめてスマホに何か長い文章を打ち込むと、俺に妙に満面な笑顔を向けて言った。
「やっぱり先に帰って良いって。」
前の席の、相川のところに来ていたクラスメイトにそう尋ねられて、俺は腕を組んで首を傾げた。
「んー、どうかな。元々地元に進学してのんびりするつもりだったけど、受かる確定も無いしな。一応東京の大学も見学に行こうと思ってる。」
すると相川が真面目な顔で俺に言った。
「東はΩ対応してる大学を選ばないとダメだぞ?」
俺はポカンとして相川の顔を見た。二人は顔を見合わせて、相川が呆れた様に言った。
「どうして当事者の東が、そんな大事な事知らないのかな。Ωの急なヒートに手厚い大学と、そうでもない大学とかあるの知らない?Ωに手厚い大学は結局、大学自体に余裕があるから全方位に人気だけどな。
俺たちはβだから、敢えてそう言う手厚くない、競争力の低い国立系の大学に滑り込む裏技使えるけど、東は無理だからな?地元の国立だってΩの絶対数少ないし、予算も無いから手厚くはないんじゃないの?お前さ、もうちょっと色々自覚持てよ?俺は心配だよ。」
俺は眉を顰めて呟いた。
「…相川に心配されるとか、俺も終わってるかもしれない。」
途端にクラスメイトの笑い声と相川の文句が教室に響いて、俺たちは無駄な注目を浴びてしまった。しかし今の相川たちの話は俺には盲点だった。確かに経営の上手い私立大学の方が、Ω対応が良いのかもしれない。
何てこった。俺の思い描いていた、基本的な進学コースが脆くも崩れ去っていくじゃないか。あいつらは、この事知っていたんだろうか。
俺が眉を顰めて考え込んでいると、担任の池ちゃんが教室に入って来て、5時間目のホームルームが始まった。
「ハイっ!何か皆に会うのも一週間ぶり?の生徒もいるかな?私の授業受けてない文系の皆は久しぶりだね。えー、今日の議題は、進路講演会についてですね。
進学した大学について色々生々しい話をしに、卒業生が我が校に来週来てくれます。三年生は必修ですので、必ず出席して下さい。ちなみに午前中は講堂で、午後は各教室で直接話しを聞けます。こんな機会はあまり無いから積極的に参加する様に。詳しくは手元に配った資料に参加大学について書いてます。
ちなみに人気大学のスタッフも参加するので、設備や経済支援系の話なども詳しく聞けるとのことです。ネットじゃ分からない話が聞けるから、活用してください。じゃあ、以上でホームルームは終わりです。」
俺たちは池ちゃんのやる気の無いホームルームに感謝して、ザワザワと帰り支度を始めた。俺は手元の一覧表を眺めながら、大学スタッフの話を聞きに行くべきなんだろうかと考え込んでいた。
「岳、一緒に帰ろう。」
机の隣に新が立っていて、俺はプリントを学バンにしまうと新と連れ立って歩き出した。一応スマホで叶斗にメッセージを送ると、待っててくれと泣きのスタンプが送られてきた。
「待ってろってさ。」
新は肩をすくめてスマホに何か長い文章を打ち込むと、俺に妙に満面な笑顔を向けて言った。
「やっぱり先に帰って良いって。」
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