ちょっと味見したかっただけですわ〜伯爵令嬢の無謀な婚活〜

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

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社交界の華

デビュー後の余韻

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人生最初で最後の社交界デビューを無事に終えたせいか、わたくしはしばらく気が抜けてしまいました。しかもお試しについて相談する相手も見つかりません。

アンソニーお兄様や、マイケルお兄様は、わたくしが話しかけるといつの間にか後ずさって扉から出ていってしまいますし。そうかと思うと、蕩ける口づけとは…とぶつぶつ言いながら何やら悩んでおいでです。

お父様はにこやかに微笑むものの、視線を合わせません。唯一お母様は、わたくしを側にお呼びになって囁きました。


「アンナマリー、お試しのことは殿方に知られてしまったらとても難しくなるのよ?…知られないように上手くやりなさい?…わたくしから助言できる事と言ったら、一度でも口づけられたら、その方とばかり夢に見るほどの威力。それが身も心も虜になるという事じゃないかしら?」

そう悪戯っぽく微笑むと、チラリとお父様の方を見つめました。お母様はお父様の口づけで夢にまで見たのですね?わたくしとお母様がお父様をじっとりと見つめたせいか、お父様は挙動不審になって、お部屋から出て行ってしまわれました。あら?お父様照れてしまわれたのかしら?


私はお母様の助言を元に、更にお試しを増やそうと決意しました。今のところ、夢にまで見る口づけを下さった方はいません。どの方もとてもお上手ではありましたけれど…。

私はお父様が吟味して振り分けて下さった、色々な招待状を一枚づつ眺めてみましたけれども沢山ありすぎて、見ただけでは良くわかりません。わたくしは爵位などには元から興味はありませんでした。さて、どうしたものでしょう。そう思っている矢先にあの方が我が家を訪れたのです。


招待もなく、予約もなく他人の屋敷を訪れるなど、無作法極まりないのですけれど、そこは王弟閣下ですわ。下々の者がとやかく言えることではありませんの。わたくしとお母様はサービスルームで紅茶を嗜んでいる王弟閣下に、淑女の礼でもってご挨拶しました。

「楽にしてください。咎められるべきなのは私の方です。急に屋敷に押しかけるなど、無作法なのは承知しているのです。ただ、そこの青い鳥は私の隙をかい潜って逃げ出してしまいそうだったので、こうして押しかけたという訳です。

ジュリランド伯爵夫人、どうぞ恋に落ちた私を不憫と思ってアンナマリー様と二人でお話しさせて頂くわけにはいきませんか?」

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