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社交界の華

ポータント伯爵side手紙の相手の令嬢

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従兄弟のジークに今年の社交界デビューは見ものだからと言われて、珍しく足を運んだのは正解だったようだ。


いつも王弟の立場を面倒がって、付き合いが苦手な私の代わりに夜会へ行っていたのは、若い従兄弟のジュアスだった。そのジュアスが、しょっちゅう用もないのに私の屋敷にやって来ては、名前のない手紙が届いていないかと聞くようになったのは1ヶ月前からだったろうか。

丁度その時、執事に名無しの女性からの手紙が届いていると渡された手紙を、あいつは大事そうに確認して青い薔薇の蝋印を見ると滅多に見ない笑顔で言った。


『この手紙は、私宛なんだ。この蝋印の名無しの手紙は取っておいてくれたまえ。』

そう言うとさっさと屋敷を出ていったっけ。そんな事が三度ほどあったが、二度目の手紙は、なぜか喜びとは遠い表情で受け取った。私が不思議に思って見つめると、ジュアスは手紙は嬉しいが、楽しくないと訳の分からない返事をするものだから私は恋に落ちたのかと思ったのだ。


三度目の手紙の時は、可愛い僕の生徒なんだと、手紙の相手を暴露した。けれど、自分自身の正体を明かしてない事が気になるのか、生徒と何か上手くいってないのか、恋に苦しむ男の顔をして窓から中庭のバラ園を見ていたのだ。私は早速伯母の皇后へご機嫌伺いのついでにこの件について報告をした。勿論報告と称して面白がってるだけだが。

伯母は目をキラリと光らせて、ジークからも多分同じ令嬢の話が入って来ていると悪戯っぽく笑ったのだ。


そんなこんなで、私はジュアスの恋患いの相手が、今夜ハッキリするのではないかと重い足を繰り出してやって来たのだった。


可愛らしいデビュタントたちが次々に礼を取る中、一際注目を浴びる令嬢が現れた。印象的なその青い瞳を見た時に、私はあの青い薔薇の蝋印を思い出して、ジュアスを見ると正にジュアスは彼女に釘付けになっていた。

そしてその令嬢のエスコートとのファーストダンスの次の相手に誰よりも早く手を掲げたのは、王弟のジュアスその人だった。ジュアスがこのような遊びでない相手に、公の場で意思表示するのは初めてで、多くの貴族は騒めいて噂話が飛び交った。


しかしジュアスは気にもせず、楽しげに令嬢と仲良くダンスを踊ると、最後には額にキスすると言う明らかな『手出し無用』の意思表示を周囲に示したのだった。

王弟に挑む若者たちが一体どれほど居るか見ものだったが、次から次へとダンスの誘いに来る独身貴族達を様子をみると、今年の社交シーズンは随分楽しいものになりそうだと、私は思わずニヤニヤしてしまった。

王族のエリアに戻って王や皇后と何やら熱心に話しているジュアスの顔を見つめてエールを送ったのは、これからの彼の奮闘を予感していたのだろうか?
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