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社交界の華

ジュアスの告白

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私はアンナマリーの手が私の手の中で握られている事に、何故か非常に安堵していた。私は恭しくアンナマリーをダンスホールに連れ出した。周囲の貴族達の騒めきが、私達を中心に噂されてることは百も承知だった。

私達は音楽に乗って踊り出した。うむ、アンナマリーは意外にもダンスが上手だ。アンナマリーは私の目を見つめると微笑んで言った。

「秘密の助言者様、貴方の真実の姿は今のお姿なんですね?」


私はニヤリと笑うと、アンナマリーの興奮で紅潮した頬に、悪戯な唇に口づけたいと思いながら、囁いた。

「いかにも。初めましてアンナマリー様。私は王弟のジュアス マイゼルダーム。お見知りおきを。」

アンナマリーは踊りながら、少し考え込んだ様子を見せ、そして言った。

「じゅあジュアス様は、本当は金の髪で、髭も無いのですね?」

私はクスクス笑うと、アンナマリーを回転させて言った。


「本物は、ほら目の前に見えるでしょう。あそこに立っている彼だが、私の従兄弟だ。そして貴方の名付け親であるジークもまた僕の従兄弟の一人で、彼らは僕の企みの協力者なのだ。だが、それも今日まで。これからは王弟ジュアスとして貴方の前に立つつもりだよ。」

アンナマリーは眉を顰めて私に尋ねた。

「それは一体どうゆう意味なんですの?」

私はニヤリ笑うと、アンナマリーを腕の中にグッと引き寄せて、耳元で囁いた。


「あなたのお味見の相手に立候補するつもりですよ、アンナマリー。」

私は赤くなって動揺しているアンナマリーの額にそっと口づけると、音楽の終わりと共にジュリランド伯爵の元にエスコートした。何か聞きたげなジュリランド伯爵に丁寧に礼を返すと、私は報告を待っているだろう王達の元にゆっくりと戻っていった。


「ジュアス、報告を受けてないぞ?」

王である兄上はニヤリと笑って言った。

「わたくしは勿論報告を受けてますよ。ジークからね。ジュアスがお気に入りのデビュタントが居るらしいと。あとは、ポータント伯爵からも、ジュアスが手紙のやり取りをしてる令嬢が居るようだとの報告を受けてます。」

そう言いながら、母上の皇后は扇で口元を隠しながらクスクスと笑っていた。


私は母上の情報網に舌を巻くと、皆の顔を見回して肩をすくめて言った。

「アンナマリーはああ見えて、私を翻弄するほど手強いのですよ。ですが、皆さんの手出しは無用です。私の一生に一度の恋の駆け引きをお見逃しなきように。」
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