ちょっと味見したかっただけですわ〜伯爵令嬢の無謀な婚活〜

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

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変わった令嬢

マリーからの手紙

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目の前の本物のポータント伯爵はニヤニヤしながら、私に一通の手紙を差し出した。

「ジュアスお前、可愛い令嬢とでも文通を始めたのか?何通目だい?差し出し人の名前は書いないけれど、どう見ても令嬢からのものだろう?」

私はニヤリと笑うと、マリーの瞳の色と同じ青い薔薇のモチーフの蝋印の封筒を、指先で挟むとジャケットの内ポケットへ仕舞い込んだ。定期的にアンナマリーからのお試しの報告が届く様になって一ヶ月。これで三度目の手紙だ。


「ジュリアート、詮索は無用だ。これは私の可愛い生徒からの定期報告なんだ。そうだ、君が夜会へ出かける時はどの夜会へ行くかだけ私に教えてくれ。かわいい生徒が君を見てびっくりするといけないからね。」

そう私が言うと、ジュリアートは目をきらめかせて言った。

「お前が私の名前で浮名を流すもんだから、最近モテてしょうがないね。従兄弟だから案外似てるんだろうね、少し話しただけだったら違いは分からないんじゃないか?私の髪と髭が本物で、目の色が少し濃い事ぐらいの違いだろ、ジュアス?」

私はジュリアートの探る様な眼差しから目を逸らすと窓の外を見て言った。


「…きっと彼女は私と君の違いは見ぬくさ。そういう聡い子なんだ、私の可愛い生徒は。」

ジュリアートは私を見つめると、ひとつため息をついて言った。

「お前が自分で気づいているのか、いないのか分からないが、今の自分の顔を鏡で見たほうがいいぞ。ひどい顔だ。お前にそんな顔をさせるなんて、随分出来の良い生徒に違いないさ。」


私はジュリアートの当て擦りに返事をせずに、黙って外の庭園に咲く薔薇を見つめていた。美しい薔薇でさえ、彼女の手紙での報告を受けてからは忌々しさを感じてしまう。

確かに最近の私は酷い有様だ。自分本来の姿で夜会に行けば、どこかに彼女が来ていないか探している。まだデビュー前だから居るはずがないのに探してしまうのは秘密の助言者であるからなのか。


チラホラ聞こえる彼女の噂に、心揺さぶられることもしばしばだ。手紙に書いてある口づけた相手が目の前にいると、ついつい睨みつけてしまうのは保護者気分としてなのか…。私はあれ以来会う機会に恵まれない月夜姫の事を、何度も読み返す手紙を通して見つめている気分で、心の中がもやもやとスッキリしない日々が続いていた。


そして社交界デビューの日をどこかで心待ちにしていたのだ。

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