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変わった令嬢
髭の怪しい男との遭遇
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わたくしはジークおじ様の頼みで快諾した手前、不承不承、その怪しさ満載の人物の目の前に立ちました。その方は遠目で見るよりも肌に艶と張りがあり、30歳前ぐらいに思われました。この世界のアンナマリーだけでしたら判断できないでしょうけれど、奔放な記憶の中の知識がわたくしにそれを教えてくれますわ。
わたくしは義理をさっさと果たそうと、得意の邪気のない微笑みをまとって自己紹介しましたわ。髭の男を真っ直ぐ見つめた時に、この男が暗めながらきらめく銀色の髪と、金属の様なグレーと緑色の混ざったような不思議な色の瞳であることに気づきました。
私はなぜか男の瞳から目を逸らすことが出来なくて、お互いに見つめあっていた様な気がします。それは一瞬だった様な、長かった様な気もしますわ。あまりにもこの髭の男の目が不思議な色だったせいかしら?
ジュリアートロス ポータント伯爵と名乗った男は、挨拶の最後にわたくしバルコニーでの行動を見ていたと言い出しましたわ。わたくしは最悪、誰に見られても構いませんでしたが、今後の味見に影響が出るのは困りものだと思いましたわ。
そこでわたくしは目の前の男をじっくり見つめて、ふとした思いつきを提案してみようと思いましたの。それはわたくしにとってはメリットがあるけれど、この男にとってはどうかはわたくしには判断ができませんでした。けれども、わたくしはなぜかこの男が食いついてくる気がしたんですわ。
わたくしはポータント様をひと気のない場所へ連れ出すと、深呼吸して打ち明けました。
「ポータント様、正直に打ち明けますと、わたくしは何も快楽のために口づけしていたのでも、かと言ってロビン様をお慕いして口づけたわけでもございません。わたくしは自分にぴったりの相手を見つけるためにいわばお試しをしているに過ぎませんわ。
淑女、特にデビュタントあるまじき行為であることは重々承知しておりますけれど、ある一定のラインまでならば、淑女であっても可能ではありませんか? 実際、殿方はお試しをするのが当たり前ですわね?でしたらわたしくもまた、同じ事をしても秘密が守られるならば許されると思いますの。」
ポータント伯爵はしばらく呆然としていましたが、難しい顔で腕を組むと何やらぶつぶつと考え込んでおりました。そしてわたくしの顔を真っ直ぐ見つめると、思いがけないことを言ったんですの。
わたくしは義理をさっさと果たそうと、得意の邪気のない微笑みをまとって自己紹介しましたわ。髭の男を真っ直ぐ見つめた時に、この男が暗めながらきらめく銀色の髪と、金属の様なグレーと緑色の混ざったような不思議な色の瞳であることに気づきました。
私はなぜか男の瞳から目を逸らすことが出来なくて、お互いに見つめあっていた様な気がします。それは一瞬だった様な、長かった様な気もしますわ。あまりにもこの髭の男の目が不思議な色だったせいかしら?
ジュリアートロス ポータント伯爵と名乗った男は、挨拶の最後にわたくしバルコニーでの行動を見ていたと言い出しましたわ。わたくしは最悪、誰に見られても構いませんでしたが、今後の味見に影響が出るのは困りものだと思いましたわ。
そこでわたくしは目の前の男をじっくり見つめて、ふとした思いつきを提案してみようと思いましたの。それはわたくしにとってはメリットがあるけれど、この男にとってはどうかはわたくしには判断ができませんでした。けれども、わたくしはなぜかこの男が食いついてくる気がしたんですわ。
わたくしはポータント様をひと気のない場所へ連れ出すと、深呼吸して打ち明けました。
「ポータント様、正直に打ち明けますと、わたくしは何も快楽のために口づけしていたのでも、かと言ってロビン様をお慕いして口づけたわけでもございません。わたくしは自分にぴったりの相手を見つけるためにいわばお試しをしているに過ぎませんわ。
淑女、特にデビュタントあるまじき行為であることは重々承知しておりますけれど、ある一定のラインまでならば、淑女であっても可能ではありませんか? 実際、殿方はお試しをするのが当たり前ですわね?でしたらわたしくもまた、同じ事をしても秘密が守られるならば許されると思いますの。」
ポータント伯爵はしばらく呆然としていましたが、難しい顔で腕を組むと何やらぶつぶつと考え込んでおりました。そしてわたくしの顔を真っ直ぐ見つめると、思いがけないことを言ったんですの。
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