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変わった令嬢

ジュアスの企み

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私が笑っていると公爵が理由を聞いてきたので、私はホールを泳ぐ月夜姫を見つめながら言った。

「ククク。あぁ、悪いジーク。今まさに、とんでもなく面白いものを見たんだ。だがまだ誰にも言えない。君にもね。言ったところで、きっと信じてもらえない気がする。実際、目の前の光景を見たら、さっき私が見たのは幻だったのだと思うほどだよ。」

シークは片眉を上げると、ワインを口に運びながら私の目線を追った。

「ふむ。君が関心を寄せるには、あのレディは若すぎないか?とはいえ、彼女は母親譲りの美しさと愛らしさ、父親譲りの頭の良さがある。ここ数年の逸材には違いない。私は名付け親だからな、彼女のことは多少知っているんだ。

先程もワークス侯爵家の子息がベッタリと張り付いてたぞ。彼は女性には冷たいと評判だったが、彼女の前にはひれ伏したらしいな。」


私は心を読まれない様にしながらも、ジークに話に耳を傾けていた。そうか、さっきテラスで口づけていたのはワークス家の子息か。20歳の男なら、歳の頃は丁度良いかもしれないな。

「おい、どうした。そんな怖い顔をして。もしかして妬いているのか?ククク、それは面白い。秘密の夜会を開いた甲斐があるというものだ。叔母上に褒めてもらわねばな。」

ジークは妙に意味深な顔をすると、私に答えさせる間も無く、肩を叩いてから妻の元へ戻っていった。


私はジークの揶揄いに気をそがれながらも、やはり光り輝く存在である月夜姫を見つめ続けた。今夜のうちに、彼女に渡りをつけないと、次にいつ接触できるかわからないがどうしたものか。そう思っている私に、チャンスは案外早く巡ってきた。

目の前に立つのは月夜姫、その人だ。さて、これはどうしたことか。
 
「わたくし、アンナマリー ジュリランドですわ。お初お目にかかります。いきなり不躾だとは思ったんですけれど、ジークおじ様が貴方にご挨拶をしておく様にとの事でしたので、こうして参りましたの。」

月夜姫こと、アンナマリーはそう言うと花が綻ぶ様な微笑みを浮かべた。先程のアンナマリーを見ていた私でさえ、目の前で自分に向けられる真っ青な吸い込まれそうな瞳には言葉が出なかった。私は咳払いをすると自己紹介した。


「それはご丁寧にありがとう。私はジュリアートロス ポータント伯爵。ジークとは昔からの馴染みなんですよ。貴方のことはジークから聞きました。名付け子だとか。

…そういえば、先程私もバルコニーに居たんですよ?…あれは、貴方に相応しい振る舞いとは言えませんね?」



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