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運命

灰色の瞳※

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 僕を見つめるゾクゾクする様なこの灰色の瞳、まるでとぷりと溶け出した金属の様なその果てがない色味は、僕の記憶をザラリとなぞる。ルキアスと知り合ったばかりなのに、こんな事になってしまったのも全然説明出来ない。


 僕をゆっくりと自分のものにする彼の甘い溜息は、我慢できない僕の声でかき消してしまっている。

 ゆるゆるとかき混ぜる様に僕を開かせる彼の動きは、僕の息を止めさせて、目を見開かせる。ああ、なんて彼は逞しいんだろう。はち切れそうなその存在感に、僕はぶるぶると腿を震わせた。

「…リアン、君は狭い…。壊れてしまいそうで大事にしたいのに、私の感情が走り出して暴走してしまいそうだ。」

 掠れた声でそう呟きながらルキアスは動きを止めると、僕の胸の中心に恭しく唇を押し当てた。


 動かないと、かえってルキアスの存在をまざまざと刻み込まれる様な気がしてしまう。僕は思わず無意識に腰を揺らして続きを急かした。一瞬顔を顰めたルキアスは、胸元から僕をじっと見上げると再び動き出した。

 そのゆっくりとした、でも確実に僕の良いところを狙って撫でる動きは、実際僕を馬鹿みたいに喘がせた。ああ、ダメ…!迫り上がってくるその覚えのある快感に僕は切羽詰まった。

 けれども僕の指先がルキアスの腕に食い込んだせいなのか、ルキアスは僕の中からズルリと出て行く。


 どうして?そんな気持ちで目を開けると、僕をぎらついた眼差しが射ぬいた。次の瞬間目を合わせながら一気に奥へと突かれて、僕はチカチカする様な快感に仰け反ってしまった。

 ああ、凄い。抉る様なその抜き差しはごりごりと僕を容赦なく撫で擦って、それから奥へと道を開いていく。

「リアン、さっきより柔らかい…。熱くて溶けそうだ。」

 そう耳元で囁かれて、僕はルキアスの頭に手を伸ばして引き寄せると唇を押し付けた。貪る様な口づけに夢中になっていると、ルキアスの腰の動きが急に速くなった。


 それはさっきまでギリギリに堰き止められていた快感を一気に決壊させて、僕は息も出来ずに身体を大きくしならせた。コントロール出来ない僕の身体が何度もビクビクと震えつつも、ルキアスを搾り取るのを自覚した。

 塗り込めるように僕に腰を押し付けていたルキアスが、動きを止めて僕の隣にどさりと突っ伏すと、僕は汗ばんだ身体をずらして乱れた呼吸を整えた。


 エルフの国の中では僕は幼馴染のヴァルしか経験がない。それはエルフの国の中では非常識と言える振る舞いだっただろう。王族と言えども恋の時間は自由奔放で良いとされていたし、実際姉を含め兄弟はそうだった。

 でも僕にとっては生肌を合わせる事は、簡単には捉えられなかった。取り替えっ子だったせいもあるかもしれない。何処かで僕はエルフでは無いことで自分から距離を取っていたのだ。


 こうして人間であるルキアスと肌を合わせてみれば、エルフと人間の肉体の差など身体面で見ればそう変わりは無いと分かる。個々の違いはあれど、種族の違いは交わると言う意味では違いが分からない。

 一方で僕は明らかにこの交わりに違いを感じてしまった。ヴァルは僕を沢山愛してくれた。彼なりの情熱で。僕もまたヴァルを好きだったから、同じ様に楽しんだし愛情を返していたと思ってたんだ。


 でもルキアスと交わってみれば、僕らの間に弾けたその熱い何かは経験の無いものだった。それは親愛の情とは違う何か別の感情が作用したのか。

 ルキアスから放たれるその圧倒的な熱の様なものは、僕を文字通り焼き切った。今もその熱で僕をじわじわと焼いている気がする。そんな事をぼんやり考えていると、ふいにルキアスに抱き寄せられて、僕は思わず目を閉じた。

 …なんか恥ずかしい。僕自身の全てを曝け出してしまった心許なさをじわじわ実感し始めていた。


 瞼に落ちてくる温かで柔らかな感触に、ルキアスの想いが乗っている気がして、僕は思わず微笑んだ。

「リアン…。君が私の記憶の中の存在かどうかはもう関係ない。私は目の前の君に恋してしまった。君も私を好いてくれているだろう?ああ、違うとは言って欲しくない。」

 僕はルキアスの声が不安でひび割れてきたのを感じて目を開いた。

 目の前には、愛を懇願するただの男がいた。彼は王族のしがらみを全て振り切ったのだろうか?


 「ルキアス…。ルキアスは僕の事何も知らないでしょう?それなのに恋したの?」

 その言葉は、僕自身への問いかけでもあったかもしれない。僕は初めて見る相手の様にじっとルキアスを見つめた。手紙を何度も貰った時は少し鬱陶しいとさえ思っていたのに、部屋で唇を合わせた瞬間から僕はルキアスが欲しくて堪らなくなった。

 僕の中に存在する失った記憶と、人間同士の松明のように燃え上がる情熱がそうさせたのかな。今この瞬間も、僕はルキアスの唇に目が吸い寄せられる。

「…リアン、話がしたいのにそんな顔で私を見ないでくれ。もう一度奪ってしまいそうだ。」


 僕はクスクス笑ってルキアスの唇を人差し指でゆっくり撫でて呟いた。

「話は後でも出来ると思わない?僕はルキアスをもう一度感じたいな。…ダメかな?」

 僕に触れるルキアスの一部が急に存在感を増して、彼がそれを僕に分からせるようにグイと押し付けてきた。

「もちろんダメじゃないさ。私にはリアンが全然足りないから。」

 ルキアスの唇が僕に触れるのを何処か安堵に似た気持ちで受け入れながら、あっという間に身体が熱くなるのを感じていた。満月でも無いのに魔法に掛かったようなこの甘い時間に、僕はすっかり絡め取られていた。









 



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