40 / 49
運命
美しい檻※
しおりを挟む
うーん、これは不味い状況かもしれない。僕は美しい部屋の中から噴水のある中庭を眺めていた。リラックスした様子で皇太子がソファに座ったけれど、ここはどう考えても皇太子の私室という感じだ。
「リアン、そこから噴水が見えるだろう?私はいつもこの中庭が唯一一人になれる場所だったんだ。満月の夜に君に似た相手に出会ったのも、あの噴水の水面下だよ。」
そう思いがけないことを言われて、僕は興味深げに噴水をじっと見つめた。皇太子の話が本当なら、エルフの国とあの噴水は繋がっているってことになる。僕は振り返って皇太子に言った。
「あの、ルキアス。近くで見ても良いかな?」
ルキアスは微笑むと、立ち上がってテラスに続く扉を開けた。美しい石畳が中庭へと続いている。僕はルキアスに手を引かれて興味深げに辺りを見回しながら歩き進んだ。
「…ここは素敵な所だね。でも囲いがあるから、ちょっと窮屈な感じもするけど。」
ルキアスは感情の読めない表情をして呟いた。
「ああ、美しさで隠されているけど、ここは言わば籠の中なんだよ。王族というのは富や権力と引き換えに、重い足枷をつけている様なものだ。背中に大きな翼があっても自由に飛ぶことさえ叶わない。」
人間の世界は想像よりも窮屈だと同情しつつ、エルフの王族はそうでも無いけどと僕は心の中で返事をしながら噴水まで近寄った。遠目より大きな噴水は今は水が止まっていて綺麗な水が溜まっている。
「満月のあの日から、私は満月が近づくと水を止めているんだ。あれから何年も経つというのに、私は未だにこの向こうに顔を覗かせた彼を忘れられない。
この前、リアンが私の心のしこりを解き放つ協力をしてくれただろう?だが、リアンと君はあまりにも似過ぎていて、なんて言うか…。」
そこで皇太子が言葉を止めてしまったので、僕は首を傾げて彼を仰ぎ見た。
ルキアスの星屑の様な灰色の瞳は、僕が視線をそらす事など許さなかった。僕は魔法が掛かったみたいに頭が痺れる気がして、身体の裏側を這い上がる何かにゾクゾクとして息が出来ない。
その経験のない緊張感と欲望が、ルキアスの腕の中に抱きしめられた瞬間解き放たれた気がするのは錯覚だろうか。
唇を覆うルキアスの熱が僕を焼き切ってしまった。僕はルキアスが与えてくれる甘い舌遣いに夢中になって、今度はもっと欲しがった。僕がルキアスの首にしがみつくと、ルキアスは何度も僕の名前を呼びながら抱き上げて口づけを続けた。
だから私室の内扉の向こうの寝室のベッドに下ろされた時には、僕はすっかり待てなくなっていたのだし、ルキアスはギラつく眼差しで僕に覆い被さって掠れた声で言った。
「リアンが欲しい。お願いだ。今君を手放したら、苦しみで血を吐きそうだ。」
すっかり興奮した身体を自覚していた僕は、ルキアスの首を引き寄せて甘く囁いた。
「…難しいことは言わないで。何も考えないで僕を奪ってよ。」
それが僕らの合図だった。僕はルキアスが手早く衣装を脱いでいくのをドキドキしながら眺めた。裸になると想像以上に逞しいルキアスは、臍に向かって立ち上がっている自身も馬鹿みたいに存在感があった。
僕はルキアスのシンボルがビクビクと揺れるのを楽しく眺めながら、ゆっくりとズボンと脱いだ。元々今日は薬草の担当者に会うだけだったので、ズボンとブラウスしか着ていない。
待ちきれなかったのか、ルキアスがベッドに乗り込んで僕にのしかかると、うめく様に呟いた。
「ああ、想像と違ってた。そんな目で見つめられたら爆発してしまう。なんて色っぽいんだ、リアン…。」
僕も馬鹿みたいに興奮していた。やっぱり僕はルキアスに恋をしていたのかな。記憶は無くしても、僕の身体中の血が逆流している様に暴れ回っている。
ルキアスに脱がされたブラウスは肘で丸まって、胸をじっとしてられないくらい口づけるせいで僕は大きく喘いだ。
「リアン、可愛いリアン…!」
僕の身体中に口づけるルキアスのせいで、後ろの疼きは酷くなって、欲しくて欲しくて僕は頭がおかしくなりそうだった。
「ルキアス、挿れて…!お願いっ。」
僕の懇願にルキアスは僕に経験が有ると分かったんだろう。引き出しから香油の様なものを出して手のひらにたっぷり出した。
「リアンは天使だと思っていたけど、堕天使だったのかい?堪らないね…。」
そうギラついた顔で呟くと、香油を僕のひくつく下半身にゆっくりと塗り広げた。指先で優しくマッサージされて、僕は物足りなさに叫び出しそうだった。
だからルキアスの指が僕を犯した時には、僕ははしたなく腰を揺らめかせて強請ってしまった。だからそれを見たルキアスが余裕を無くして指の動きを激しくしたのは、僕の自業自得だ。
「ああっ!ルキアスっ!いいっ、あん、気持ちいいっ。」
僕は決して欲望の強い方ではないと思うのに、慣らされた僕の身体はあっという間にスイッチが入って、貪欲さは果てしなくなった。高められて弾け飛ぶ一歩手前でルキアスはぬとりと僕から指を引き抜いて、ぼんやりと見上げる僕にかがみ込んだ。
それから汗ばんだ身体を寄せて、自分の熱くなった杭を僕のすっかり弛んだ窄みに撫でるように押し当てた。
「くそ、こんなに吸い付いてきたら、一気に挿れてしまいそうだ。リアンは私をどうしたいんだ。」
それは興奮と喜び、そして一抹の恐怖さえ感じるルキアスの口調だった。僕もまるで同じ気持ちだったから何処かしらホッとして、ルキアスの興奮で強張った頬を指先でなぞって甘く囁いた。
「きて…、ルキアス。僕を味わって…!」
「リアン、そこから噴水が見えるだろう?私はいつもこの中庭が唯一一人になれる場所だったんだ。満月の夜に君に似た相手に出会ったのも、あの噴水の水面下だよ。」
そう思いがけないことを言われて、僕は興味深げに噴水をじっと見つめた。皇太子の話が本当なら、エルフの国とあの噴水は繋がっているってことになる。僕は振り返って皇太子に言った。
「あの、ルキアス。近くで見ても良いかな?」
ルキアスは微笑むと、立ち上がってテラスに続く扉を開けた。美しい石畳が中庭へと続いている。僕はルキアスに手を引かれて興味深げに辺りを見回しながら歩き進んだ。
「…ここは素敵な所だね。でも囲いがあるから、ちょっと窮屈な感じもするけど。」
ルキアスは感情の読めない表情をして呟いた。
「ああ、美しさで隠されているけど、ここは言わば籠の中なんだよ。王族というのは富や権力と引き換えに、重い足枷をつけている様なものだ。背中に大きな翼があっても自由に飛ぶことさえ叶わない。」
人間の世界は想像よりも窮屈だと同情しつつ、エルフの王族はそうでも無いけどと僕は心の中で返事をしながら噴水まで近寄った。遠目より大きな噴水は今は水が止まっていて綺麗な水が溜まっている。
「満月のあの日から、私は満月が近づくと水を止めているんだ。あれから何年も経つというのに、私は未だにこの向こうに顔を覗かせた彼を忘れられない。
この前、リアンが私の心のしこりを解き放つ協力をしてくれただろう?だが、リアンと君はあまりにも似過ぎていて、なんて言うか…。」
そこで皇太子が言葉を止めてしまったので、僕は首を傾げて彼を仰ぎ見た。
ルキアスの星屑の様な灰色の瞳は、僕が視線をそらす事など許さなかった。僕は魔法が掛かったみたいに頭が痺れる気がして、身体の裏側を這い上がる何かにゾクゾクとして息が出来ない。
その経験のない緊張感と欲望が、ルキアスの腕の中に抱きしめられた瞬間解き放たれた気がするのは錯覚だろうか。
唇を覆うルキアスの熱が僕を焼き切ってしまった。僕はルキアスが与えてくれる甘い舌遣いに夢中になって、今度はもっと欲しがった。僕がルキアスの首にしがみつくと、ルキアスは何度も僕の名前を呼びながら抱き上げて口づけを続けた。
だから私室の内扉の向こうの寝室のベッドに下ろされた時には、僕はすっかり待てなくなっていたのだし、ルキアスはギラつく眼差しで僕に覆い被さって掠れた声で言った。
「リアンが欲しい。お願いだ。今君を手放したら、苦しみで血を吐きそうだ。」
すっかり興奮した身体を自覚していた僕は、ルキアスの首を引き寄せて甘く囁いた。
「…難しいことは言わないで。何も考えないで僕を奪ってよ。」
それが僕らの合図だった。僕はルキアスが手早く衣装を脱いでいくのをドキドキしながら眺めた。裸になると想像以上に逞しいルキアスは、臍に向かって立ち上がっている自身も馬鹿みたいに存在感があった。
僕はルキアスのシンボルがビクビクと揺れるのを楽しく眺めながら、ゆっくりとズボンと脱いだ。元々今日は薬草の担当者に会うだけだったので、ズボンとブラウスしか着ていない。
待ちきれなかったのか、ルキアスがベッドに乗り込んで僕にのしかかると、うめく様に呟いた。
「ああ、想像と違ってた。そんな目で見つめられたら爆発してしまう。なんて色っぽいんだ、リアン…。」
僕も馬鹿みたいに興奮していた。やっぱり僕はルキアスに恋をしていたのかな。記憶は無くしても、僕の身体中の血が逆流している様に暴れ回っている。
ルキアスに脱がされたブラウスは肘で丸まって、胸をじっとしてられないくらい口づけるせいで僕は大きく喘いだ。
「リアン、可愛いリアン…!」
僕の身体中に口づけるルキアスのせいで、後ろの疼きは酷くなって、欲しくて欲しくて僕は頭がおかしくなりそうだった。
「ルキアス、挿れて…!お願いっ。」
僕の懇願にルキアスは僕に経験が有ると分かったんだろう。引き出しから香油の様なものを出して手のひらにたっぷり出した。
「リアンは天使だと思っていたけど、堕天使だったのかい?堪らないね…。」
そうギラついた顔で呟くと、香油を僕のひくつく下半身にゆっくりと塗り広げた。指先で優しくマッサージされて、僕は物足りなさに叫び出しそうだった。
だからルキアスの指が僕を犯した時には、僕ははしたなく腰を揺らめかせて強請ってしまった。だからそれを見たルキアスが余裕を無くして指の動きを激しくしたのは、僕の自業自得だ。
「ああっ!ルキアスっ!いいっ、あん、気持ちいいっ。」
僕は決して欲望の強い方ではないと思うのに、慣らされた僕の身体はあっという間にスイッチが入って、貪欲さは果てしなくなった。高められて弾け飛ぶ一歩手前でルキアスはぬとりと僕から指を引き抜いて、ぼんやりと見上げる僕にかがみ込んだ。
それから汗ばんだ身体を寄せて、自分の熱くなった杭を僕のすっかり弛んだ窄みに撫でるように押し当てた。
「くそ、こんなに吸い付いてきたら、一気に挿れてしまいそうだ。リアンは私をどうしたいんだ。」
それは興奮と喜び、そして一抹の恐怖さえ感じるルキアスの口調だった。僕もまるで同じ気持ちだったから何処かしらホッとして、ルキアスの興奮で強張った頬を指先でなぞって甘く囁いた。
「きて…、ルキアス。僕を味わって…!」
66
お気に入りに追加
315
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
運命の息吹
梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。
美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。
兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。
ルシアの運命のアルファとは……。
西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。
石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。
雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。
一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる