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公私混同は禁止

噂の的にされて

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 気が重いながらも会社に行くと、征一は挨拶回りで忙しいのか部署にはほとんど居ない日々が続いた。私に当て擦りを言う女性社員も居たけれど、実際に私たちのやりとりを見ていない社員は私に聞きたそうにしながらも、その話をする人は居なかった。

 下手に藪を突いて蛇を出したくないんだろう。そこは大人だから…。蛇はやっぱり征一だろうか?

 もし、私が征一と何かしら関係があったら、うっかり私の機嫌を損ねて征一にそれが伝わる事を恐れたんだろう。さすが部長代理。伊達に権力持ってない。


 私は、そんな取り留めない事を考えながら、下手な噂にならなかった事にホッとしていた。きっとその油断が良くなかったのかもしれない。私は時間が押した会議の後で、すっかり遅くなった昼食へ行こうとお手洗いに寄った。

 いつもなら気が強くて、人の弱みを握っている情報に強い翼が盾になってくれていたのだけど、今日はそんなこんなでたまたま一人だった。個室で用を足していると、数人の女子社員がガヤガヤと入ってきたのが分かった。


 「ねぇ、あの話って実際どうなんだと思う?」

「あー、お姫様でしょ?大人しそうなフリして橘部長代理に媚びたとか?一般社員には見向きもしない癖にね。嫌な感じ。」

「社食での二人のやり取り、直接見た人の話聞いたの?」

「聞いてない。噂だけよ。でも凄く親密そうだったって話よ?赴任したばかりなのにどーなってるのかしら。私の同僚がお姫様のファンでガックリ落ち込んでて鬱陶しいったら。あーゆうタイプは裏で遊んでるんじゃないの?」

「私もそう思う。絶対お姫様じゃないわよ。ビッチだったら面白いのに。ふふふ。」


 そう言いたい放題言うと、またガヤガヤとかしましく出て行った。私は個室から出るタイミングを失っていて、ため息をつくと鏡の前に立った。

「お姫様って、やっぱり私のことよね…?やっぱり有る事無い事言われるわね。」

 私は橘征一が想像以上に女子社員の中では優良物件なのだと改めて感じた。そのお陰で、私に対する反感がすごい。そりゃあ、私も第三者の立場だったら、来たばかりのハイスペック社員がいきなり特定の女子社員と訳ありぽかったら何事かと思うわね。

 私はこれ以上橘征一と関わると、会社での立場がますます悪くなりそうな気がして鏡の中の自分に顰めっ面を送った。

『気をつけて、お姫様。橘部長代理は田辺美那とは初対面よ。その設定、間違えないで?』
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