21 / 59
親密さとは
翼sideやらかしてるの?
しおりを挟む
私は美那の話を聞きながら、内心仰天していた。だってあんな扇情的なコスプレした姿で、うっかりドア開けて対応するのも無防備が過ぎるけど、弟の仕打ちへの復讐めいたキスを初対面でぶちかますとか、どんな男なの?
あの食事会の店で、美那を射抜くように見つめていた、スペックの良さげなあの男を思い浮かべて私はため息をついた。確かにあの男と張り合うには、野村さんじゃちょっと役不足かもしれないわね。
あの眼差しだって、きっと美那が他の人と楽しそうにしてたから怒ってたのかもしれないし。まさかDV男⁉︎ああ、でもその後酔っ払い美那を家までちゃんと送ってったんだっけ?
よく送り狼にならなかったわね。そこは身元がしっかりしてるから、ちゃんとしてるってことかしら?それか…。そう頭の中で目まぐるしく考えていると、美那は視線を泳がせて言いにくそうにしている。私はピンときて言った。
「なぁに?まだやらかしてるの?まさか…。」
私の剣幕に慌てた美那が両手を振って言った。
「違う、違うってば!その、水族館デートの後で野村さんに送ってもらってホール前で見送ってたら、橘兄が来たのよ!それで…。」
私は片眉を上げて美那を見つめた。この子は一見小慣れてるように見えるけれど、本当のところを知ってしまったら随分隙だらけに見えるに違いない。私はそれが目に見えるようだと思いながら話の続きを促した。
「…それで?」
美那は目を逸らして話し出した。
「…それが私、また出た!って思っちゃって、思わずストーカーだって揶揄っちゃったの。ストーカー呼ばわりされて狼狽える橘さんも面白かったし。でもそしたら何故か引き寄せられて、私たちは親密な知り合いだって言って…、キスしてきて。」
私はきっとそうなんだろうと、予想通りの展開にため息をついて美那に尋ねた。
「それで、そのキスが嫌じゃなかったんでしょ?」
美那がハッとしたように私を見つめるので私はニンマリして言った。
「だって、美那の顔、そのキスを思い出してうっとりしてるんだもん。よっぽど素敵なキスだったんでしょう?」
真っ赤になった美那を眺めながら、ああ、これは無自覚の何とかだわと一人心の中で頷いた。本人は気づいてないみたいだけど。いや、気がついてるのかな?私に相談する位だから、なんとなく自分の中でもあれっと思っているに違いない。
私には美那が明らかに橘兄に惹かれているのが分かったけれど、今の時点でアドバイスするのはやめた。もっと美那とあの男が、この後どういう展開をしていくのか知りたかったし。もちろん美那は、遊んだり、簡単に落としていい女じゃない。私は美那に釘を刺すつもりで注意した。
「まぁあのハイスペな雰囲気からして、キスはうまいでしょうね。経験豊富そうだもの。美那はうぶなんだから、あんまり振り回されないように、相手をよく見てじっくり考えなさいよ?私があれこれ言うのは簡単だけど、付き合うとか決めるのは美那なんだし。」
私がそう言うと、美那は慌てて答えた。
「別に付き合ってくれって言われたわけじゃないわ!大体、野村さんともデートしてるのに、違う男の人に簡単にキスされる私ってちょっと軽いのかな…?」
私はケラケラと笑って言った。
「キスぐらいどうってことないわよ。それより、キスしたらわかる事って沢山あるのよ?どうせなら日曜日のデートで、野村さんともキスしてらっしゃいな。そうしたらハッキリすることもあるんじゃない?」
そう美那に言いながらも、まぁちょっと野村さんを利用する感じになっちゃうから、気が咎めるかもしれないと思ったのは内緒だ。でも野村さんだってキスされたら嬉しいだろうから大丈夫でしょ。私は困った顔でグラスの氷を突っついてる美那に言った。
「まぁ、あんまりくよくよしないで日曜日の野村さんとのドライブデート楽しんできて?勿論、報告はちゃんとしてね?そう言えば、あともうちょっとしたらお騒がせ従姉妹が帰ってくるわよね。どこまでこの騒動を話すか考えないといけないわ。
あとちょっと気になってるんだけど、橘弟もあなたに気があるんじゃないのかしら。だって、美那が従姉妹じゃないって気がついていたのに、美那のことを彼女扱いして振る舞っていたわけでしょう?確信犯じゃない。もし橘兄弟2人からモーションかけられたらどうするの?
…まぁ、お兄さんからも既にモーションかかってるか。…とにかく困ったことになったら、また相談して?私も奥手の美那がこんな恋愛のゴタゴタになるなんてちょっと嬉しい感じなんだけど。ふふふ。
でも大事な親友の美那が傷つくのは嫌だわ。それだけは心配かな?まぁとにかく美那の春が来たことを祝って乾杯っ!」
そう言って、困った顔の美那の手の中のグラスにカチンとグラスをぶつけた。
あの食事会の店で、美那を射抜くように見つめていた、スペックの良さげなあの男を思い浮かべて私はため息をついた。確かにあの男と張り合うには、野村さんじゃちょっと役不足かもしれないわね。
あの眼差しだって、きっと美那が他の人と楽しそうにしてたから怒ってたのかもしれないし。まさかDV男⁉︎ああ、でもその後酔っ払い美那を家までちゃんと送ってったんだっけ?
よく送り狼にならなかったわね。そこは身元がしっかりしてるから、ちゃんとしてるってことかしら?それか…。そう頭の中で目まぐるしく考えていると、美那は視線を泳がせて言いにくそうにしている。私はピンときて言った。
「なぁに?まだやらかしてるの?まさか…。」
私の剣幕に慌てた美那が両手を振って言った。
「違う、違うってば!その、水族館デートの後で野村さんに送ってもらってホール前で見送ってたら、橘兄が来たのよ!それで…。」
私は片眉を上げて美那を見つめた。この子は一見小慣れてるように見えるけれど、本当のところを知ってしまったら随分隙だらけに見えるに違いない。私はそれが目に見えるようだと思いながら話の続きを促した。
「…それで?」
美那は目を逸らして話し出した。
「…それが私、また出た!って思っちゃって、思わずストーカーだって揶揄っちゃったの。ストーカー呼ばわりされて狼狽える橘さんも面白かったし。でもそしたら何故か引き寄せられて、私たちは親密な知り合いだって言って…、キスしてきて。」
私はきっとそうなんだろうと、予想通りの展開にため息をついて美那に尋ねた。
「それで、そのキスが嫌じゃなかったんでしょ?」
美那がハッとしたように私を見つめるので私はニンマリして言った。
「だって、美那の顔、そのキスを思い出してうっとりしてるんだもん。よっぽど素敵なキスだったんでしょう?」
真っ赤になった美那を眺めながら、ああ、これは無自覚の何とかだわと一人心の中で頷いた。本人は気づいてないみたいだけど。いや、気がついてるのかな?私に相談する位だから、なんとなく自分の中でもあれっと思っているに違いない。
私には美那が明らかに橘兄に惹かれているのが分かったけれど、今の時点でアドバイスするのはやめた。もっと美那とあの男が、この後どういう展開をしていくのか知りたかったし。もちろん美那は、遊んだり、簡単に落としていい女じゃない。私は美那に釘を刺すつもりで注意した。
「まぁあのハイスペな雰囲気からして、キスはうまいでしょうね。経験豊富そうだもの。美那はうぶなんだから、あんまり振り回されないように、相手をよく見てじっくり考えなさいよ?私があれこれ言うのは簡単だけど、付き合うとか決めるのは美那なんだし。」
私がそう言うと、美那は慌てて答えた。
「別に付き合ってくれって言われたわけじゃないわ!大体、野村さんともデートしてるのに、違う男の人に簡単にキスされる私ってちょっと軽いのかな…?」
私はケラケラと笑って言った。
「キスぐらいどうってことないわよ。それより、キスしたらわかる事って沢山あるのよ?どうせなら日曜日のデートで、野村さんともキスしてらっしゃいな。そうしたらハッキリすることもあるんじゃない?」
そう美那に言いながらも、まぁちょっと野村さんを利用する感じになっちゃうから、気が咎めるかもしれないと思ったのは内緒だ。でも野村さんだってキスされたら嬉しいだろうから大丈夫でしょ。私は困った顔でグラスの氷を突っついてる美那に言った。
「まぁ、あんまりくよくよしないで日曜日の野村さんとのドライブデート楽しんできて?勿論、報告はちゃんとしてね?そう言えば、あともうちょっとしたらお騒がせ従姉妹が帰ってくるわよね。どこまでこの騒動を話すか考えないといけないわ。
あとちょっと気になってるんだけど、橘弟もあなたに気があるんじゃないのかしら。だって、美那が従姉妹じゃないって気がついていたのに、美那のことを彼女扱いして振る舞っていたわけでしょう?確信犯じゃない。もし橘兄弟2人からモーションかけられたらどうするの?
…まぁ、お兄さんからも既にモーションかかってるか。…とにかく困ったことになったら、また相談して?私も奥手の美那がこんな恋愛のゴタゴタになるなんてちょっと嬉しい感じなんだけど。ふふふ。
でも大事な親友の美那が傷つくのは嫌だわ。それだけは心配かな?まぁとにかく美那の春が来たことを祝って乾杯っ!」
そう言って、困った顔の美那の手の中のグラスにカチンとグラスをぶつけた。
1
お気に入りに追加
158
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話
水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。
相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。
義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。
陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。
しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。
お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。
渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!?
合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡――
だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。
「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき……
【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
10 sweet wedding
国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる