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こんにちは日常
ジャックside噂話
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「おい、聞いたか?」
古い馴染みの狸が俺にビーアを差し出しながら俺をチラッと見上げた。
「ははあ、その様子じゃよく知ってるな?教えてくれよ。誰なんだ?怪鳥ギャロスの卵の欠片を商業ギルドに持ち込んだのは。」
狸はニヤニヤと胡散臭い顔をして言った。
「この情報はおいそれと拡散出来ないんです、旦那。俺の首が絞まっちまう。」
俺は悪態をつくと、皮袋から銀貨を出してカウンターに置いた。狸はチラッとそれを見ると受け取ろうとしなかった。俺がもう一枚置いてもダメだった。どれだけ高い情報なのかと俺は目を剥き出してため息をつくと、もう一枚重ねた。
狸はニヤリと笑うと、打って変わって調子良い態度で俺に耳打ちした。
「ヨードル領の四男のパトリック マジェスタですよ。訓練生のね。先日行われた郊外演習でマジェスタのチームが採ってきたみたいですぜ。」
俺は驚きで目を見開いた。訓練生?あり得ない。そもそも特殊ギルド員の俺たちでさえ、相当の準備と覚悟を持って採集に行くようなアイテムだ。しかも成功率は10%ほどだ。それを訓練生が演習ついでに?
俺の驚きように、面白そうな顔をして狸が言った。
「まぁそうでしょうね。でもあのマジェスタ家の秘蔵っ子ですからね。あり得ないって事もないかもしません。実際持ち込んだのは本当ですし。しかし、ヨードル領はここんとこ、派手に王都を騒がしてますぜ?
旦那もヨードル印のアイテム使ってますでしょうが。それとこれは繋がってるんじゃないですかね。まぁ、俺にはそれ以上はわかんねぇですが。旦那にはもう一杯ご馳走しますぜ。」
そう言って、狸は俺の前にもう一杯ビーアを滑らせた。俺はまだ信じられない気持ちで今聞いた話を呑み込んだ。狸は偽情報を掴ませるような奴じゃない。銀貨3枚の高い情報に見合う信憑性もあるだろう。
特にまだ訓練生で、あのヨードル領の秘蔵っ子とくれば、狸がおいそれと情報を渡さなかったのにも腑に落ちる。俺は何だか愉快な気分になって、仲間のところへ戻った。
「ジャック、何か分かったか?」
俺は大きな尻尾を振りながら、尖った耳をそば立ててニヤリと笑って頷いた。
「ああ。とっておきの情報がな。丁度俺の親戚が側に居るんだ。今度会って聞いてみる事にするよ。」
俺の返事に、チームの仲間がビーアを打ち鳴らした。俺たちは特殊ギルドAランクのチーム火蜥蜴だ。火蜥蜴を倒した実績からそう呼ばれるようになったので、俺たちもそっちの名前に変えたんだ。
俺は面白い事になったとニヤリと笑った。他のチームに取られる前に、マジェスタ家の秘蔵っ子を俺のチームに引き入れないとな。まずはケルビンに連絡を取ろうと、仲間の陽気な騒ぎを見つめながら思った。
古い馴染みの狸が俺にビーアを差し出しながら俺をチラッと見上げた。
「ははあ、その様子じゃよく知ってるな?教えてくれよ。誰なんだ?怪鳥ギャロスの卵の欠片を商業ギルドに持ち込んだのは。」
狸はニヤニヤと胡散臭い顔をして言った。
「この情報はおいそれと拡散出来ないんです、旦那。俺の首が絞まっちまう。」
俺は悪態をつくと、皮袋から銀貨を出してカウンターに置いた。狸はチラッとそれを見ると受け取ろうとしなかった。俺がもう一枚置いてもダメだった。どれだけ高い情報なのかと俺は目を剥き出してため息をつくと、もう一枚重ねた。
狸はニヤリと笑うと、打って変わって調子良い態度で俺に耳打ちした。
「ヨードル領の四男のパトリック マジェスタですよ。訓練生のね。先日行われた郊外演習でマジェスタのチームが採ってきたみたいですぜ。」
俺は驚きで目を見開いた。訓練生?あり得ない。そもそも特殊ギルド員の俺たちでさえ、相当の準備と覚悟を持って採集に行くようなアイテムだ。しかも成功率は10%ほどだ。それを訓練生が演習ついでに?
俺の驚きように、面白そうな顔をして狸が言った。
「まぁそうでしょうね。でもあのマジェスタ家の秘蔵っ子ですからね。あり得ないって事もないかもしません。実際持ち込んだのは本当ですし。しかし、ヨードル領はここんとこ、派手に王都を騒がしてますぜ?
旦那もヨードル印のアイテム使ってますでしょうが。それとこれは繋がってるんじゃないですかね。まぁ、俺にはそれ以上はわかんねぇですが。旦那にはもう一杯ご馳走しますぜ。」
そう言って、狸は俺の前にもう一杯ビーアを滑らせた。俺はまだ信じられない気持ちで今聞いた話を呑み込んだ。狸は偽情報を掴ませるような奴じゃない。銀貨3枚の高い情報に見合う信憑性もあるだろう。
特にまだ訓練生で、あのヨードル領の秘蔵っ子とくれば、狸がおいそれと情報を渡さなかったのにも腑に落ちる。俺は何だか愉快な気分になって、仲間のところへ戻った。
「ジャック、何か分かったか?」
俺は大きな尻尾を振りながら、尖った耳をそば立ててニヤリと笑って頷いた。
「ああ。とっておきの情報がな。丁度俺の親戚が側に居るんだ。今度会って聞いてみる事にするよ。」
俺の返事に、チームの仲間がビーアを打ち鳴らした。俺たちは特殊ギルドAランクのチーム火蜥蜴だ。火蜥蜴を倒した実績からそう呼ばれるようになったので、俺たちもそっちの名前に変えたんだ。
俺は面白い事になったとニヤリと笑った。他のチームに取られる前に、マジェスタ家の秘蔵っ子を俺のチームに引き入れないとな。まずはケルビンに連絡を取ろうと、仲間の陽気な騒ぎを見つめながら思った。
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