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波乱の予感
湖のほとりへGO
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ケルビンは僕を振り返り、手を差し出した。
「ほら、引っ張ってやるから。だいぶ遅れをとったからな。ああ、テディに何言われるか…。」
僕はケルビンとあんな事になって今更甘えるのを躊躇するのも馬鹿みたいに思えて、素直に手を繋いで引っ張って歩いてもらう事にした。ケルビンの差し出した手を握ると、ケルビンのふさふさの尻尾がビクンと跳ねた。
僕はジト目でケルビンを見上げて言った。
「ねぇ、そう言う反応されると困るんだけど。…他意は無いからね?」
ケルビンは気まずそうに口を尖らせて、僕の手を引いて歩き出しながら答えた。
「こればっかりはしょうがないだろ?好きな子と手を繋いだら、ちょっとくらい尻尾が跳ねるのは生理現象だぞ。それよりいくらゴブリン避けを塗ったからって、油断するなよ?」
そう言って真面目な顔つきになって、尖った耳をぴくつかせた。
僕も周囲に目を配って足を早めた。しばらく歩いて行くと、例のモクバックが飛び出て来た。モクバックにはこのハーブの匂いは効かないらしい。
成体のモクバックは案外俊敏な二本足で僕たちに襲い掛かって来た。けれどケルビンのギロチン大なたが空を切ると、ザンッと鈍い音と共に真っ二つに斬られてしまった。
僕はなかなかエグい光景に眉を顰めながら呟いた。
「このモクバックの魔石はちょっと色が違うね。」
僕はモクバックの死骸の中から赤く光る魔石を取り出した。洞窟までの道で出会ったモクバックから採った魔石は青かったはずだ。
僕は注意深く死骸になっているモクバックを観察した。よく見るとそのモクバックは成体だけど体毛の色が他と違っていた。
「ほら見て。今までのモクバックはここの毛の色が茶色かったでしょ。…これは黒いよね。」
するとケルビンが隣で喉を鳴らした。僕がハッとしてケルビンを見上げると、ケルビンは緊張を滲ませて大なたを構えると、周囲を伺った。
「それは雌のモクバックだ。そもそも雌の個体数が少ない魔物なんだ。だからモクバックは雌を頂点としたハーレムを作る。これはヤバい事になりそうだ…。」
そうケルビンが言い終わらないうちに、成体のモクバックが少し先から走り出てきた。こころなしか怒りを滲ませている。僕はさっきケルビンが言ったヤバい事の意味を瞬時に把握した。
僕は息を吐き出すと、背中に背負ったボウをつがえて、向かって来るモクバックの顔の中心目掛けて矢を放った。
「ほら、引っ張ってやるから。だいぶ遅れをとったからな。ああ、テディに何言われるか…。」
僕はケルビンとあんな事になって今更甘えるのを躊躇するのも馬鹿みたいに思えて、素直に手を繋いで引っ張って歩いてもらう事にした。ケルビンの差し出した手を握ると、ケルビンのふさふさの尻尾がビクンと跳ねた。
僕はジト目でケルビンを見上げて言った。
「ねぇ、そう言う反応されると困るんだけど。…他意は無いからね?」
ケルビンは気まずそうに口を尖らせて、僕の手を引いて歩き出しながら答えた。
「こればっかりはしょうがないだろ?好きな子と手を繋いだら、ちょっとくらい尻尾が跳ねるのは生理現象だぞ。それよりいくらゴブリン避けを塗ったからって、油断するなよ?」
そう言って真面目な顔つきになって、尖った耳をぴくつかせた。
僕も周囲に目を配って足を早めた。しばらく歩いて行くと、例のモクバックが飛び出て来た。モクバックにはこのハーブの匂いは効かないらしい。
成体のモクバックは案外俊敏な二本足で僕たちに襲い掛かって来た。けれどケルビンのギロチン大なたが空を切ると、ザンッと鈍い音と共に真っ二つに斬られてしまった。
僕はなかなかエグい光景に眉を顰めながら呟いた。
「このモクバックの魔石はちょっと色が違うね。」
僕はモクバックの死骸の中から赤く光る魔石を取り出した。洞窟までの道で出会ったモクバックから採った魔石は青かったはずだ。
僕は注意深く死骸になっているモクバックを観察した。よく見るとそのモクバックは成体だけど体毛の色が他と違っていた。
「ほら見て。今までのモクバックはここの毛の色が茶色かったでしょ。…これは黒いよね。」
するとケルビンが隣で喉を鳴らした。僕がハッとしてケルビンを見上げると、ケルビンは緊張を滲ませて大なたを構えると、周囲を伺った。
「それは雌のモクバックだ。そもそも雌の個体数が少ない魔物なんだ。だからモクバックは雌を頂点としたハーレムを作る。これはヤバい事になりそうだ…。」
そうケルビンが言い終わらないうちに、成体のモクバックが少し先から走り出てきた。こころなしか怒りを滲ませている。僕はさっきケルビンが言ったヤバい事の意味を瞬時に把握した。
僕は息を吐き出すと、背中に背負ったボウをつがえて、向かって来るモクバックの顔の中心目掛けて矢を放った。
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