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精霊の正体
洞窟の突き当たり
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周囲の気温が一気に下がったのが分かった。僕たちは身を縮めて、テディに寄り添って足を進めた。結局、怖いからと言ってひきかえすわけにはいかなかった。
洞窟の奥に置いてあるだろうスタンプを、押して来るのが演習の課題なのだから。僕たちはお互いの体温を励みに、恐る恐る前に進んでいた…んだけれど。
突然足が地面に貼りついたように動かなくなってしまった。強烈な何か強い力が僕たちに作用しているのは間違いなかった。僕はゆっくりと息を細く長く吐き出した。
お祖父様が以前言っていた事を思い出したからだ。
『いいかい、パトリック。強い魔法や力に対抗できるものがあるとすれば、それは自分の冷静さだけだ。慌ててしまうのが一番いけない。しかし危機的な時に落ち着くのは難しい。
私が一番効果がある方法を教えてやろう。息を細く、長くじわじわと吐くんだ。集中して、自分の頭と身体をコントロールする。冴えた頭で危機をコントロールするんだ。パトリックなら出来るぞ。』
僕は緊張が解れた気がした。
「ミッキー、カンテラの炎を強く出来る?ゆっくり高く持ち上げて、突き当たりを出来るだけ照らして欲しいんだ。」
僕が落ち着いた声を出したせいか、ミッキーも真剣な顔で頷いて辺りを照らし出した。暗く澱んでいた、奥まった場所に小さな祭壇のようなものが有るのが見えた。
「ねぇ、パトリック。あれは死霊では無いんじゃないかな。あんなものはダンジョンでも見たことないもの。」
そう囁くテディの声を聞きながら、僕はドキドキと心臓が煩く響くのを感じた。僕はアレを知ってる。パトリックが知ってると言うより、僕の記憶が知っていると煩く伝えてくるんだ。
人為的に掘り出された岩の台の上に、青銅色をした蝋燭立てが、ドロドロになって固まった蝋に覆われて幾つも並んでいた。その壁には何か魔法陣が浮かび上がっていて、その真ん中には白い紙か布らしきものの上に、赤黒い文字で見たことのない文字が書かれていた。
もっともさっきまでの僕なら、読めなかっただろう。けれど、祭壇を見た時に頭の中に浮かび上がった記憶のせいで、何が書かれているかわかったんだ。
そこにはこう書いてあった。
【これが読めるなら僕を起こして、ここから連れ出して】
僕はゴクリと喉を鳴らしてケルビンに尋ねた。
「ねぇ、今朝寝起きの悪い僕を起こす時って、どうやって起こした?」
洞窟の奥に置いてあるだろうスタンプを、押して来るのが演習の課題なのだから。僕たちはお互いの体温を励みに、恐る恐る前に進んでいた…んだけれど。
突然足が地面に貼りついたように動かなくなってしまった。強烈な何か強い力が僕たちに作用しているのは間違いなかった。僕はゆっくりと息を細く長く吐き出した。
お祖父様が以前言っていた事を思い出したからだ。
『いいかい、パトリック。強い魔法や力に対抗できるものがあるとすれば、それは自分の冷静さだけだ。慌ててしまうのが一番いけない。しかし危機的な時に落ち着くのは難しい。
私が一番効果がある方法を教えてやろう。息を細く、長くじわじわと吐くんだ。集中して、自分の頭と身体をコントロールする。冴えた頭で危機をコントロールするんだ。パトリックなら出来るぞ。』
僕は緊張が解れた気がした。
「ミッキー、カンテラの炎を強く出来る?ゆっくり高く持ち上げて、突き当たりを出来るだけ照らして欲しいんだ。」
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「ねぇ、パトリック。あれは死霊では無いんじゃないかな。あんなものはダンジョンでも見たことないもの。」
そう囁くテディの声を聞きながら、僕はドキドキと心臓が煩く響くのを感じた。僕はアレを知ってる。パトリックが知ってると言うより、僕の記憶が知っていると煩く伝えてくるんだ。
人為的に掘り出された岩の台の上に、青銅色をした蝋燭立てが、ドロドロになって固まった蝋に覆われて幾つも並んでいた。その壁には何か魔法陣が浮かび上がっていて、その真ん中には白い紙か布らしきものの上に、赤黒い文字で見たことのない文字が書かれていた。
もっともさっきまでの僕なら、読めなかっただろう。けれど、祭壇を見た時に頭の中に浮かび上がった記憶のせいで、何が書かれているかわかったんだ。
そこにはこう書いてあった。
【これが読めるなら僕を起こして、ここから連れ出して】
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