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楽しい郊外演習

濡らして、固めて、ボコりましょう

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話に聞くのと、実際目の当たりにするのとでは大違いだった。腹に響くようなその重低音は、僕たちの余裕を一瞬で奪った。僕は皆の動揺を感じて、この道に引き込んだ責任をひしひしと感じた。

落ち着かせる様に、わざと低い声で皆に声を掛けた。

「…来たよ。では、練習どおりにやろう。あれは貴婦人が欲しがる高級な美容成分を生み出すレアなアイテムだ。確実に仕留めるよ…。テディ用意は良い?」


「…うん。僕も母様に喜んでもらいたい。頑張るよ。」

僕たちが構えていると、鬼蜂もこちらの気配を察したのだろう。いきなりスピードを上げて姿を現した。思いの外大型の蜂はカチカチと震え上がるような牙を鳴らして、胴体の先の針を僕らに向けて滑降してきた。

テディの手から飛び出す光と飛沫シブキを上げる水がモロに鬼蜂に当たって、羽根の動きが鈍くなった。僕は間髪を入れずに氷漬けにすると、待ち構えていたミッキーが棍棒で鬼蜂をボコった。


針も潰れたか心配してみると、ちゃんと針の部分は温存していたのでホッとした。皆がホッとしているのを眺めていると、ケルビンが声を潜めて言った。

「…来るぞ。今度は1匹じゃ無さそうだ。用心しろ。」

それからの僕たちは、この道を選んだことを後悔しそうになるほどの、怒涛の戦いだった。あの時、魔法のポーションを飲んでいなければ、場合によっては犠牲が出たかもしれなかった。


僕たちは周囲に10匹の鬼蜂の死骸に取り囲まれながら、地面に座り込んで肩で息をしていた。誰も喋る余裕がないほど疲労困憊だったんだ。

僕はマジックバックから、テディのおやつを取り出して皆に手渡しながら言った。

「取り敢えず、テディの甘いもの食べて元気出そう。食べ終わったらケルビンが魔石を回収して、僕とテディで針を回収。ミッキーは処理の終わった死骸を藪の中に放り込んでね。」


テディの持参したおやつは王都でも最近話題のものらしく、僕たちは本当に食べたら凄く元気が出た。真っ白な粉がたっぷりついてたけど、まさかやばいモノなんだろうか。

僕がそっとその粉を舐めると、身体が温かくなるのを感じた。うわ、凄い…。今度僕もバートとその店に仕入れに行こうっと。

僕はテディと、マジックバックから取り出した金属の箱に、針とそれに繋がる毒袋を一緒に切り取ってそっと回収した。うっかり毒袋が破れたらとんでもないことになるからね。


僕たちは、毒蜂の道を攻略した上に、親孝行の元をゲットし、気分爽快で目的地のテント設置場所、野営地へと到着したんだ。まだ誰も生徒がいない野営地に待っていた先生たちが、僕たちを驚きの眼差しで見た時、僕は確信したんだ。

優勝に随分近づいたんだって。僕たちは一番で到着だった!

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