獣人てやつは本能に抗えない問題

楽しい郊外演習

落下します

「じゃあ、しっかりそのロープを捕まえていてね、ケルビン！テディ、さっき教えたように操作するんだよ！ミッキーはただ手を離さずに、目を瞑ってれば良いから！みんな、僕を信じて！行くよっ！」

僕たちは一か八かの勢いで崖を蹴り上げて、深い谷底目掛けて飛び降りた。胸を掴むようなゾッとする恐怖と、自然落下のスピードに僕は一瞬気が遠くなりそうだった。


でも、次の瞬間身体を持ち上げる浮遊感が、僕の下に居るケルビンの呻き声と一緒に感じられた。僕はハッと我に返って隣にやっぱり浮き上がった、けれども身動きしないテディに大声で声を掛けた。

「テディ！起きて！ちゃんとこっちを見るんだ！」

僕の声掛けにハッと顔を起こしたテディは、青褪めながらも頷いて見せた。


僕は頷くと、ケルビンの痛えと言う呟きを無視して、薄くて丈夫な革で出来た、谷底からの空気で膨らんだそれに繋がる紐を引っ張った。するとグンッと方向が変わって、僕はテディに叫んだ。

「テディ、右手の紐を引っ張って！」

僕たちはそこそこなスピードで、崖から落下浮遊しながら、右手の丘の手前の林の中へ転げ落ちた。僕たちは地面に叩きつけられるのは免れたけれど、木には引っ掛かってしまった。


丁度その時、さっきまでいた崖の方角から凄まじい咆哮が谷底に響き渡った。僕たちはハッとして一斉にそちらに目を向けたけれど、こずえに隠れて何も見えなかった。

それはまた、向こうからもこちらが見えないと言う事だった。僕たちは顔を見合わせてホッと息を吐いた。けれども、早々安心してばかりは居られなかった。


「ケルビン、この僕に絡まっている紐、腰のサーベルで切ってくれない？」

ケルビンは僕のお尻の下から顔を覗かせると、ニヤリと笑って言った。

「どうしようかな。結構良いポジションだろう？パトリックの可愛い尻が目の前にあるし、ちょっと可愛がってからでも良いかもな？」

すると少し離れた木に引っ掛かっているテディが、ケルビンの顔の側の幹めがけてナイフを投げ刺した。


「ケルビン！僕たちの命の恩人のパトリックに不埒な真似しちゃダメだぞ！さっさと切ってやれよ！」

僕はテディにありがとうと言うと、危ねぇなぁとぶつぶつ言いながらも紐を切ってくれたケルビンにもお礼を言ってから、ケルビンのお尻にカンチョーしてからスルスルと木から降り立った。

「痛えっ！おい、何すんだ、この小悪魔っ！」

僕はお尻を押さえて喚いているケルビンが掴まっている木を見上げて、クスッと笑って言った。

「え？可愛がって欲しかったんじゃないの？」