3 / 26
お泊まり飲み会
しおりを挟む
ゼミの仲間達と一人暮らしのメンバーの部屋で、時間を気にせず飲み会するのは楽しかった。都会が実家で自宅の友達が多かった僕は、こうやって友達の家で飲むのは実際初めてだった。
「壬生の部屋、広くねぇ?何で実家が東京なのに一人暮らしなんだよ。」
そう言って部屋を見回す清瀬君に、僕はやっぱり広いのかと認識を改めた。壬生君は電子レンジから取り出した出来立てのポップコーンをテーブルに置いて言った。
「あー、親がそう言う教育方針なんだよ。独り立ちの準備的な?でも俺身体がデカいから狭い部屋じゃ落ち着かなくて、親に無理言ったんだ。だからワンルームだけど広めだな。」
「ねー、これだったら恋人とかと余裕で住めそう。壬生、絶対連れ込んでるでしょ。」
そうゼミで一緒の女子が言うと、もう一人の女子もクスクス笑いながら頷いた。僕は部屋を見回してベッドをじっと見て尋ねた。
「でもあのベッドじゃ、壬生君だけでいっぱいになっちゃうんじゃない?」
ドッと皆が笑って、僕の発言が際どいと揶揄われてしまった。そんな意図はなかったけれど、確かに問題発言だったかもしれない。僕は急に恥ずかしくなって、自分でも顔が熱くなるのを感じた。
「全く悠太は可愛いな。こんな事で赤くなってさ。それに俺が思うに、あのベッドはセミダブルだと思うぜ。まぁそれでも壬生がデカいからアレだけど。」
結局僕の際どい発言をキッカケに、皆のお盛んな最近の話を聞く羽目になった。結局清瀬君が1番あちこちに顔を出して飲み会に精を出している事が分かって、そんな清瀬君が僕に言った。
「悠太も今度一緒に行こうぜ。他の学部のヤツと知り合いになるのも面白いからさ。」
顔の広い清瀬君にそう言われて頷くくらいには、僕も酔いが回っていたみたいだ。周囲が賑やかに盛り上がるのを感じながら、僕は強烈な眠気に襲われていた。
ぼんやりと身体を引き起こされる感覚がしたけれど、僕は目が開かなくて誰かに言われるがまま冷たい水を飲んだところで意識はぷつりと途切れてしまった。
喉が渇いた…。でも何だか身体も動かないし、目も開かない。ふいに隣に誰かいる気がした。自分より高い体温が温かくて気持ち良い。無意識に身体を寄せると、抱き寄せられた気がしてその絶対的な包容力に思わず微笑んでいた。
『……。』
誰かが何か喋っているのは分かるけれど、まだぼんやりとした頭では聞き取れなかった。額や瞼に降りてくる優しい何かが思いがけないくらい気持ちが良くて、僕は微笑んでもっと欲しくて顔を上げた。
するとまたさっきの様に触れられて、まるで誰かの宝物の様に大事にされている気分で僕はやっぱり微笑んだ。唇に柔らかな感触がして、僕はこれってまるでキスみたいだとぼんやり考えていた。
キス…。キス?僕は開かない瞼をこじ開ける様に頑張った。ふいに温かな気持ち良さが身体から離れて、僕は酷くガッカリした。もっと包まれていたかったのに…。それから僕は意識がまた、ブクブクと水底に沈む石のように落ちていった。
「…た、…悠太、大丈夫か?」
聞き慣れた声が僕の側で聞こえて、僕は意識を浮上させた。目を開けると、僕を見下ろす壬生君が立っていた。
「ああ、良かった。あんまり眠ってるから大丈夫かなと思って。…大丈夫だよな?」
僕は身体を起こすと、ぼんやりしながら壬生君から渡された水を一気に飲んだ。ああ、染み渡る。そういえば随分喉が渇いていた。そう、喉乾いてたんだ。何か思い出せそうで思い出せない僕は、ぼんやり部屋を見渡した。
テーブルの側にゴミ袋が置いてあって、壬生君がすっかり片付けてしまった様だった。僕以外はもう誰も居なくて、僕はどうも壬生君の家に泊まってしまったみたいだ。
「…ごめん。迷惑掛けたみたいだね。今何時?」
僕がそう言うと、壬生君は僕にバスタオルを渡して言った。
「今11時だ。俺午後からバイト入ってるんだ。まだ大丈夫だけど、シャワー浴びてこいよ。さっぱりするから。歯ブラシも新しいの出しておいたから。…ズボンはキツそうだったから脱がせたけど。」
そう言われて、僕は少しふらつきながら立ち上がるとお礼を言った。下着姿で部屋を横切りながら、何となく恥ずかしい気がしたのは少し兆した朝勃ちのせいだろうか。
トイレを済ませてシャワーを浴びると、なるほど目が冴えた。僕は腰にタオルを巻きながら、はたと何を着るべきかと浴室のドアを開けた。
ベッドルーム兼リビングの様なワンルームは広めと言いつつも空間はひとつだ。少し出っぱった仕切り壁から顔を覗かせると、ベッドを整えている壬生君が僕に気づいて何か抱えて持ってきてくれた。
「俺ので良かったら着るか?流石にズボンはサイズ合わないけど、トレーニング用のぴったりTシャツならいけるだろ。あ、下着はサイズはともかく新品だから。悠太が普段着てる様な洒落たアレじゃないけど。」
僕は有り難く受け取ると、袋からトランクスを出して履いた。確かに少し大きいけど、逆よりは全然いける。もし反対だったら、壬生君はぴちぴちパンツを履く羽目になるだろう。
僕がそんな事を想像して少し笑いながら目の前の壬生君を見上げると、何を考えているのかわからないな眼差しの壬生君がハッとした様に僕を見つめて、柔らかく微笑んだ。
「何?なんか可笑しいことあった?」
僕はさっきの空気は何だったんだろうと思いながら、クスクス笑って言った。
「もし反対に僕の下着を壬生君に貸したら、ぴちぴちになっちゃっただろうなと思ったら可笑しくて。」
すると壬生君はなぜか僕にTシャツを頭から着せ掛けて、着るのを手伝ってくれた。僕はなぜ壬生君が手を貸してくれるのか分からなかったけど、ちょっとしたこの甘やかしは悪くないと思った。
「壬生君て、結構お世話焼き?」
Tシャツの中から顔だけ出して壬生君を見上げると、じっと見下ろされてるこの表現できない空気に少し戸惑ってしまった。
「いや…。悠太は何か放って置けないかな。着替えたら何か食べるか?」
そう言って僕に背を向けた壬生君の大きな背中をじっと見つめて、僕は壬生君の部屋と同じ良い匂いのするTシャツを着た。ベッドの側に畳んであった自分のズボンをふらつきながら履くと、テーブルにリンゴジュースやプロテインが並んだ。
「ありがとう。壬生君、僕あまりお腹空いてないからジュースだけ貰える?」
壬生君はサッとリンゴジュースをグラスに注ぐと、僕に渡しながら言った。
「…慶介でいい。俺のパンツ履いたんだ、もう壬生君じゃなくて良いだろ?」
そう意味深に言うから、僕は思わず飲みかけたジュースでむせてしまった。思わず壬生君を睨むと、楽しげな顔をして自分のプロテインのシェーカーを振っていた。
「もう!変な言い方しないでよ。これ新品だったでしょ。ふふ、買って返すね。色々ありがとう壬生君。あ、…慶介?」
一瞬慶介の手が止まったけれど黙って頷いたので、これが正解だったんだろう。
「壬生の部屋、広くねぇ?何で実家が東京なのに一人暮らしなんだよ。」
そう言って部屋を見回す清瀬君に、僕はやっぱり広いのかと認識を改めた。壬生君は電子レンジから取り出した出来立てのポップコーンをテーブルに置いて言った。
「あー、親がそう言う教育方針なんだよ。独り立ちの準備的な?でも俺身体がデカいから狭い部屋じゃ落ち着かなくて、親に無理言ったんだ。だからワンルームだけど広めだな。」
「ねー、これだったら恋人とかと余裕で住めそう。壬生、絶対連れ込んでるでしょ。」
そうゼミで一緒の女子が言うと、もう一人の女子もクスクス笑いながら頷いた。僕は部屋を見回してベッドをじっと見て尋ねた。
「でもあのベッドじゃ、壬生君だけでいっぱいになっちゃうんじゃない?」
ドッと皆が笑って、僕の発言が際どいと揶揄われてしまった。そんな意図はなかったけれど、確かに問題発言だったかもしれない。僕は急に恥ずかしくなって、自分でも顔が熱くなるのを感じた。
「全く悠太は可愛いな。こんな事で赤くなってさ。それに俺が思うに、あのベッドはセミダブルだと思うぜ。まぁそれでも壬生がデカいからアレだけど。」
結局僕の際どい発言をキッカケに、皆のお盛んな最近の話を聞く羽目になった。結局清瀬君が1番あちこちに顔を出して飲み会に精を出している事が分かって、そんな清瀬君が僕に言った。
「悠太も今度一緒に行こうぜ。他の学部のヤツと知り合いになるのも面白いからさ。」
顔の広い清瀬君にそう言われて頷くくらいには、僕も酔いが回っていたみたいだ。周囲が賑やかに盛り上がるのを感じながら、僕は強烈な眠気に襲われていた。
ぼんやりと身体を引き起こされる感覚がしたけれど、僕は目が開かなくて誰かに言われるがまま冷たい水を飲んだところで意識はぷつりと途切れてしまった。
喉が渇いた…。でも何だか身体も動かないし、目も開かない。ふいに隣に誰かいる気がした。自分より高い体温が温かくて気持ち良い。無意識に身体を寄せると、抱き寄せられた気がしてその絶対的な包容力に思わず微笑んでいた。
『……。』
誰かが何か喋っているのは分かるけれど、まだぼんやりとした頭では聞き取れなかった。額や瞼に降りてくる優しい何かが思いがけないくらい気持ちが良くて、僕は微笑んでもっと欲しくて顔を上げた。
するとまたさっきの様に触れられて、まるで誰かの宝物の様に大事にされている気分で僕はやっぱり微笑んだ。唇に柔らかな感触がして、僕はこれってまるでキスみたいだとぼんやり考えていた。
キス…。キス?僕は開かない瞼をこじ開ける様に頑張った。ふいに温かな気持ち良さが身体から離れて、僕は酷くガッカリした。もっと包まれていたかったのに…。それから僕は意識がまた、ブクブクと水底に沈む石のように落ちていった。
「…た、…悠太、大丈夫か?」
聞き慣れた声が僕の側で聞こえて、僕は意識を浮上させた。目を開けると、僕を見下ろす壬生君が立っていた。
「ああ、良かった。あんまり眠ってるから大丈夫かなと思って。…大丈夫だよな?」
僕は身体を起こすと、ぼんやりしながら壬生君から渡された水を一気に飲んだ。ああ、染み渡る。そういえば随分喉が渇いていた。そう、喉乾いてたんだ。何か思い出せそうで思い出せない僕は、ぼんやり部屋を見渡した。
テーブルの側にゴミ袋が置いてあって、壬生君がすっかり片付けてしまった様だった。僕以外はもう誰も居なくて、僕はどうも壬生君の家に泊まってしまったみたいだ。
「…ごめん。迷惑掛けたみたいだね。今何時?」
僕がそう言うと、壬生君は僕にバスタオルを渡して言った。
「今11時だ。俺午後からバイト入ってるんだ。まだ大丈夫だけど、シャワー浴びてこいよ。さっぱりするから。歯ブラシも新しいの出しておいたから。…ズボンはキツそうだったから脱がせたけど。」
そう言われて、僕は少しふらつきながら立ち上がるとお礼を言った。下着姿で部屋を横切りながら、何となく恥ずかしい気がしたのは少し兆した朝勃ちのせいだろうか。
トイレを済ませてシャワーを浴びると、なるほど目が冴えた。僕は腰にタオルを巻きながら、はたと何を着るべきかと浴室のドアを開けた。
ベッドルーム兼リビングの様なワンルームは広めと言いつつも空間はひとつだ。少し出っぱった仕切り壁から顔を覗かせると、ベッドを整えている壬生君が僕に気づいて何か抱えて持ってきてくれた。
「俺ので良かったら着るか?流石にズボンはサイズ合わないけど、トレーニング用のぴったりTシャツならいけるだろ。あ、下着はサイズはともかく新品だから。悠太が普段着てる様な洒落たアレじゃないけど。」
僕は有り難く受け取ると、袋からトランクスを出して履いた。確かに少し大きいけど、逆よりは全然いける。もし反対だったら、壬生君はぴちぴちパンツを履く羽目になるだろう。
僕がそんな事を想像して少し笑いながら目の前の壬生君を見上げると、何を考えているのかわからないな眼差しの壬生君がハッとした様に僕を見つめて、柔らかく微笑んだ。
「何?なんか可笑しいことあった?」
僕はさっきの空気は何だったんだろうと思いながら、クスクス笑って言った。
「もし反対に僕の下着を壬生君に貸したら、ぴちぴちになっちゃっただろうなと思ったら可笑しくて。」
すると壬生君はなぜか僕にTシャツを頭から着せ掛けて、着るのを手伝ってくれた。僕はなぜ壬生君が手を貸してくれるのか分からなかったけど、ちょっとしたこの甘やかしは悪くないと思った。
「壬生君て、結構お世話焼き?」
Tシャツの中から顔だけ出して壬生君を見上げると、じっと見下ろされてるこの表現できない空気に少し戸惑ってしまった。
「いや…。悠太は何か放って置けないかな。着替えたら何か食べるか?」
そう言って僕に背を向けた壬生君の大きな背中をじっと見つめて、僕は壬生君の部屋と同じ良い匂いのするTシャツを着た。ベッドの側に畳んであった自分のズボンをふらつきながら履くと、テーブルにリンゴジュースやプロテインが並んだ。
「ありがとう。壬生君、僕あまりお腹空いてないからジュースだけ貰える?」
壬生君はサッとリンゴジュースをグラスに注ぐと、僕に渡しながら言った。
「…慶介でいい。俺のパンツ履いたんだ、もう壬生君じゃなくて良いだろ?」
そう意味深に言うから、僕は思わず飲みかけたジュースでむせてしまった。思わず壬生君を睨むと、楽しげな顔をして自分のプロテインのシェーカーを振っていた。
「もう!変な言い方しないでよ。これ新品だったでしょ。ふふ、買って返すね。色々ありがとう壬生君。あ、…慶介?」
一瞬慶介の手が止まったけれど黙って頷いたので、これが正解だったんだろう。
26
お気に入りに追加
303
あなたにおすすめの小説
ひとりぼっちの180日
あこ
BL
付き合いだしたのは高校の時。
何かと不便な場所にあった、全寮制男子高校時代だ。
篠原茜は、その学園の想像を遥かに超えた風習に驚いたものの、順調な滑り出しで学園生活を始めた。
二年目からは学園生活を楽しみ始め、その矢先、田村ツトムから猛アピールを受け始める。
いつの間にか絆されて、二年次夏休みを前に二人は付き合い始めた。
▷ よくある?王道全寮制男子校を卒業したキャラクターばっかり。
▷ 綺麗系な受けは学園時代保健室の天使なんて言われてた。
▷ 攻めはスポーツマン。
▶︎ タグがネタバレ状態かもしれません。
▶︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
平凡腐男子なのに美形幼馴染に告白された
うた
BL
平凡受けが地雷な平凡腐男子が美形幼馴染に告白され、地雷と解釈違いに苦悩する話。
※作中で平凡受けが地雷だと散々書いていますが、作者本人は美形×平凡をこよなく愛しています。ご安心ください。
※pixivにも投稿しています
君が好き過ぎてレイプした
眠りん
BL
ぼくは大柄で力は強いけれど、かなりの小心者です。好きな人に告白なんて絶対出来ません。
放課後の教室で……ぼくの好きな湊也君が一人、席に座って眠っていました。
これはチャンスです。
目隠しをして、体を押え付ければ小柄な湊也君は抵抗出来ません。
どうせ恋人同士になんてなれません。
この先の長い人生、君の隣にいられないのなら、たった一度少しの時間でいい。君とセックスがしたいのです。
それで君への恋心は忘れます。
でも、翌日湊也君がぼくを呼び出しました。犯人がぼくだとバレてしまったのでしょうか?
不安に思いましたが、そんな事はありませんでした。
「犯人が誰か分からないんだ。ねぇ、柚月。しばらく俺と一緒にいて。俺の事守ってよ」
ぼくはガタイが良いだけで弱い人間です。小心者だし、人を守るなんて出来ません。
その時、湊也君が衝撃発言をしました。
「柚月の事……本当はずっと好きだったから」
なんと告白されたのです。
ぼくと湊也君は両思いだったのです。
このままレイプ事件の事はなかった事にしたいと思います。
※誤字脱字があったらすみません
恋愛に超絶向いていない王子がブサイクに恋をした話
雷尾
BL
ふと思いついた話を。お話の内容とタイトル上この表記ですが、自分は受けをブサイクとは思いません。
(BLの世界って平凡顔のレベルがものすごく高いじゃないですか)
あと、受けがメンタルもフィジカルも強いと思います。見方によっては一部ざまぁかも。
攻め:王子仁晴(おうじ きみはる)
受け:山尾美省吾(やまおみ しょうご)
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる