後天性オメガの僕、セフレアルファから逃げてます

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

文字の大きさ
上 下
49 / 72
バース性の先にあるもの

腕の中の陽太※

しおりを挟む
 結局何が正解だったのかは分からない。ただ、陽太が不本意に番いにさせられるのを阻止出来た事に安堵して、省吾はその後のことを考えていなかった。

 だから安全な場所に置き去りにする事も陽太のためだと辛い気持ちで決心したと言うのに、陽太のあの当て擦りの様な発言を聞いたら無理だった。

 腹立たしい気持ちで部屋の鍵を閉めに玄関まで行った省吾が、子供の様に声をあげて泣き始めた陽太の細い背中を見た時、そこに感じたのは抱きしめて安心させてあげたいそんな感情しか浮かばなかった。


 だから肩に置いた自分の手をぎゅっと掴まれて、仰向けた陽太が真っ直ぐに自分を見上げて己を求めているのを感じた瞬間に、身体の中がうねる様な興奮と感動の様なものが満ちたのも不思議ではなかった。

 もう二度と陽太を自分の側から離すことは無いし許さないけれど、陽太の熱い眼差しはそれを確かに覚悟している様に見えた。

 結局のところ陽太と自分は、お互いを見つめ合いながらぐるぐると歩き回って、近づこうとしては静電気の様な痛みに離れて、それでもいつか触れても大丈夫なタイミングを待っていたのかもしれない。


 ヒートを起こした陽太のオメガフェロモンは嗅いだことのない深いものだった。普段オメガとしてはそこまで印象的ではないフェロモンを纏う陽太だったけれど、ヒートが進むに連れて頭が痺れるような興奮を自分にもたらした。

 最初に唇に感じた陽太の張り詰めた中心は酷く充血しているせいで、指で刺激したら後から痛みを感じるのではと心配になった。

 だから省吾は舌や唇だけで可愛がって、しとどに濡れる陽太の後ろの窄みをすぐに愛撫した。けれどそこは熱くうねっていたので、興奮しすぎて痛みさえ感じる自分自身をそこに突き立てたい気持ちでいっぱいになった。


 陽太の悲鳴の様な要求に我慢も途切れて、省吾は熱いそこへと自分のそれを刻みつける様に埋めた。以前とは明らかに柔らかさが違うそこは、省吾の剛直を逃さないとばかりに吸い付いて、腰を突き出す度に息を呑むような快感を与えた。

 すっかり加減出来る余裕を奪われて、省吾は馬鹿みたいに陽太を追い詰めてお互いを解き放った。

 それは凸と凹がピッタリと合わさった本能のようなもので、自然な形だった。クラクラする様な快感の中で、この世界に自分と陽太しか存在しないとばかりに、省吾は腕の中の陽太を抱きしめてその全てを受け入れた。


 陽太を後ろから攻めなかったのは、事前に飲んだ抑制剤のもたらした僅かに残る理性の賜物だっただろう。そうじゃなければきっとネックガードの上から首筋目掛けて噛もうとしてしまっただろうけれど、今の陽太にそれは恐怖を感じさせかねない。

 けれども陽太は自分にのし掛かって覗き込む様にすると、さっきよりも元気な様子で以前に見せてくれた様な明るい笑みを浮かべていた。

 その表情に思わず溢れ出すままに愛情を示すと、陽太は照れた様子で顔を背けた。


 ああ、何て可愛いのだろう。陽太はいつだってこうして自分の前で笑っていて欲しい。そんな気持ちで省吾は目を合わせると陽太に愛を告白していた。

 そうするのが自然だったし、それは心からの感情だった。陽太は喜びを滲ませて、大きく見開いた目を潤ませた。頬に暖かい雫が落ちてきたのを感じて、省吾は指で陽太の目元を拭って呟いた。


 「陽太も俺が好きか?だったらキスしてくれ。お前の気持ちはいつだって唇から感じていたんだ。だから俺はお前とのキスが好きだった。…はは、本当だ。陽太は感情を隠すのが下手だからな。」

「…意地悪。でも実際僕は先輩とキスする様になって、自分を誤魔化さなくて済んだんだよ。先輩とセフレになるのを選んだのは僕自身だったし、それは良い面も悪い面もあったけど、少なくとも先輩と唇を触れ合わせている時は僕は自分の気持ちに真っ直ぐでいられたから…。」


 陽太のあの頃の葛藤を感じた省吾は酷く反省して、陽太をひっくり返すとベッドにのし掛かって優しい触れるだけのキスを顔中に落とした。混乱に巻き込まれて憔悴した陽太を優しく癒やしてあげたかった。

 けれど陽太は甘い匂いを強くして、今度は省吾の顔を両手で包むと自分から舌を伸ばして省吾を貪り始めた。甘く感じる陽太の舌がくすぐる様に省吾の舌を突いて誘う様に唇の裏側を舐め始めた。


 省吾は笑み浮かべると身体の重みで陽太を逃さない様にして脚を持ち上げて、自分のすっかりの猛り切ったモノをゆっくりと陽太に突き立てた。

「あ…、んっ!…ぅ」

 省吾の容赦の無い舌が陽太の口の中を同時に埋め尽くして、上も下も自分のモノでいっぱいにするとそれは妙な征服感を感じた。身体に伝わってくる陽太の快感に震える身体の振動が、それをいっそう強く感じさせた。


 「もっと…!あっ、ああっン!」

 夢中になった陽太の甘い喘ぎ声に自分自身がますます硬くなるのを自覚しながら、省吾は紅潮した色っぽい陽太の顔を見つめた。腰を陽太の大好きな浅い場所に叩きつける様に繰り返しピストンすると、閉じた瞼が開いてうっとりとした眼差しに快感を滲ませる。

 省吾は陽太のその眼差しが好きだった。そのぼんやりした眼差しがじわじわと快感に攻め立てられて、懇願する様に変わるのも。


 けれどもやはり省吾にも余裕は無くて、切羽詰まった様に脚を高く持ち上げて深く交われば叫ぶ様な甘い嬌声を部屋に響かせて陽太はビクンビクンと逝ってしまった。

 頭の中が熱く煮える様で、省吾は陽太をひっくり返して腰を引き上げると、後ろから叩きつける様に攻め続けた。揺れる陽太の背中から繋がる、短く整えられた首筋の生え際に巻き付くネックガードを剥ぎ取りたい気持ちになるのは、アルファとしては自然な事だった。


 思わず肩に噛み付くと、甘く悲鳴を上げた陽太がすっかり掠れた声で叫ぶ。

「噛んで、先輩噛んで…!」

 ヒート中のオメガは夢中になるとそんな風に言うのはよくある事だった。今まではヒート中のオメガの相手をしていたとしても妙に興醒めてしまう言葉のひとつだった。けれど陽太の口からそう言うのを聞けば、熱い気持ちのままその叶えられない欲求不満に苛立ちが増した。


 ネックガードの側の皮膚に歯を立てて甘噛みすると、陽太の泣きそうな掠れ声が省吾を励ました。

「もっと、もっと噛んでぇ…。」

 省吾はもう限界だとベッドに陽太を磔にしたまま腰だけ両手で引き上げると、皮膚が叩きつける音と陽太の嬌声が部屋に響くのを聞きながら最後の仕上げとばかりに腰を振るい立てた。

 痺れる吐き出しの後、省吾は汗ばんだ自分達の身体がゆっくりと重なるのを自覚しながら軽く意識を放り出した。


 気を飛ばしたのは一瞬だった筈だけれど、気がついた時には省吾の頭は陽太の腕の中で抱きしめられていた。身動きしたせいでそれに気づいた陽太が、やっぱり囁く様な甘い声で省吾に話しかけてきた。

「…先輩、大丈夫?ふふ、オメガの身体って凄いね。してもしてもキリがないみたい。それに、その、先輩のアレが身体の中に入るとヒートが落ち着く感じするんだけど、実際どうなんだろう。」


 「…アレって何だ?俺様のブツの事か?それとも陽太がいつも美味しそうに味わうアレか?」

 伸び上がって陽太の顔を見上げながらそう言って揶揄うと、陽太は恥ずかし気に顔を顰めた。

「もう…。両方?分かんないよ、僕だって…。ふふ、先輩何だか嬉しそう。何で?」

 省吾は何処か浮き立つ気持ちのまま陽太を抱きしめて、その甘い首筋に顔を埋めた。

「浮かれてるんだ。陽太が可愛すぎて。」

「…もう。先輩キスして…。」

 省吾は陽太に見られない様にもう一度ニンマリして、涼しい顔で取り繕うと赤くなって可愛い陽太に顔を寄せた。




 








しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

処理中です...