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バース性の先にあるもの

溺れるもの※

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 自分でもこれを望んでいたのは確かだった。けれどもタイミングや、そもそも陽太の気持ち次第な事もあって、こんな風に手の中にチャンスが転がり込むとは思いもしていなかった。

 陽太が自分に気を許しているのは分かっていた。教室で具合の悪そうな彼に声を掛けたあの時から積み重ねて来た関係が、それを簡単にしたのは確かだった。

 自分が意図してそうして来たとも言えるし、それは陽太が後天性オメガだからだったのは確かだ。けれども今腕の中で甘い唇を感じて、彼を抱える自分の腕の強さを意識すれば、きっかけは始まりに過ぎなかった気がしてくる。


  
 ホテルの部屋に入るなり浴室に篭って、陽太の服を剥ぎ取った。

 レギンスの中心が明らかに突出して形作っているのを目にすれば、興奮が全身を貫いた。トップスを脱がしてその色白の身体に浮かぶ胸の尖りが小さく硬さを誇示しているのを知れば、唇にそれを当てて感触を味わいたくて思わず顔を寄せた。

 長く突き出した舌でくすぐれば、頭上で陽太の聞いた事のない甘い声が響いた。

「…あっ、あん…!」

 
 汗とオメガフェロモンの匂いが混ざり合って、何ともいやらしい気持ちに掻き立てられる。思わず口の中の小さな粒を甘噛みして吸い付けば、肩に回した陽太の手が食い込んだ。

 余計な言葉で陽太を我に返させる気は無かったので、私は黙って胸を口で愛撫しながら肌に食い込むレギンスをグイッと引っ張り下ろした。途端に襲ってくる興奮したオメガフェロモンに、私は股間が張り詰めて痛いほどだ。

 
 すっかり濡れた感触の陽太の下着を脱がせながら、胸から臍、その先を目指して舌を這わせる。

「ダメ、汚いから…。汗で…。」

 普段なら自分もシャワーを浴びて行儀良く交えるのが常だったが、今日はこの興奮を目の前の身体にぶつけたい気持ちでいっぱいだった。

「汚くない…。色っぽい匂いで堪らないよ。」

 肩をもう一度掴まれて、それが陽太の最後の抵抗だと感じた。


 目の前にふるりと突き出た可愛らしいそれは、陽太らしい綺麗さがあった。それは可愛がられはしろ使っていないせいでそうなのだと理解すると、思わず笑みが浮かんだ。

 これが多分一生、本来の使い方をされずに終わるのかと思えばどこかいじらしくもある。

 ヌルついたそれを指で何度か撫でると、ビクビクと震えて酷く可愛い。チラリと陽太を見上げると、唇を噛み締めてされるがままにそれを見下ろしていた。


 「口に入れて欲しいかい?」

 舌を突き出してそう尋ねると、陽太は赤い唇を少し開けて息を弾ませた。誠はニヤリと笑うとそのまま見せつける様に陽太の可愛いそれを舐った。

 切れ切れの甘い呻き声とため息が洗面所に響いて、開いた浴室にエコーを効かせる。口の中で一気に張り詰める陽太のそれは、あの男と半年もセフレを続けていたとは思えない敏感さだった。


 掴んだ腿に垂れてくる後ろの愛液に気づいて、誠はじわじわと指を持ち上げた。そしてその柔らかな場所に辿り着くとビクリと陽太の身体が跳ねて肩に乗せた指が抵抗して来た。

「ああっ!お願い、シャワーさせて…!」

 予想通り潔癖な陽太の機嫌を損ねる気は無かったので、誠は口の中でほとんど弾けそうな陽太のそれを吐き出すとゆっくりと立ち上がった。


 どこか不満げな陽太の視線に目を合わせると、誠は機嫌良く自分の服を脱ぎ去って、自分を飢えた様子で見つめる陽太の様子を楽しんだ。

「シャワーするんだろう?」

 ハッと我に返った陽太を浴室に連れ込んで、誠は丁寧に手のひらで陽太を洗った。ボディソープを使わなかったのはいやらしい匂いを完全に落としたく無かったせいだ。

 ひとしきり二人の身体を洗い終わると、ふいに陽太が手を伸ばして誠の首を引き寄せた。じっと誠の唇を見つめながら陽太は甘くため息をついた。


 「…僕はやっぱり狡いね。」

 それは陽太の葛藤だと分かっていたし、そこに自分もつけ込んでいるのも事実だった。

「…良いんだ。狡くても。アルファを欲しがるのはオメガの性だ。アルファの私もオメガの陽太を欲しいと思う。そうじゃない振りをしても仕方がないだろう?欲望を堪えても正解には辿り着けない。」

 少し痛い表情を浮かべた陽太はそれから誠の唇に自ら吸い付いた。

 その甘いキスが思いの外技巧的で、誠は自分が本当のところをまだ知らないのだと感じた。



 ベッドに転がった二人は、さっきまでの手探りの触れ合いを放り出していた。陽太が自分は訳がわからなくなると不安げに悩みを打ち明けたその本当の意味を、誠は知る事になった。

 まだ触れると青い気がしたのは最初だけで、陽太の窄みはあっという間に蕩けて吸い付いてくる。それは指を増やしていけば尚のことで、陽太が人並み以上に感じやすい体質なのは確かの様だった。


 「あ、ああっ!きもちいいっ、だめっ、逝っちゃう!」

 増やした指でじっくりと中を弄って、目の前で揺れる可愛いそれを時々舌先で突けば、張り詰めたそれが限界の様に赤らんで硬くなった。頃合いかとズルリと指を引き抜くと、ぐっしょりと濡れるその分泌に期待が高まる。

 誠がバックから取り出しておいたゴムを自分の赤らんだそれに付けるのを、焦点の合わない陽太がぼんやりと見つめていたけれど、興奮した様に精気を目に宿すのを眺めながら、誠は呼吸が荒くなるのを実感していた。


 そんな風に物欲しげに見つめられたら、普段最低限の性欲解消しかしていない誠には毒にさえ感じる。少なくとも陽太はその手の相手とは一線を画している。

「挿れたら直ぐにいっちゃいそうだね。」

 少し意地悪な気持ちでのし掛かりながらそう言うと、陽太は息を荒げて呟いた。

「…挿れて…。もう、待てない。」



 その潤んだ黒い瞳に囚われて、誠は狙いを定めると体重を使ってじわじわと陽太の中を味わった。絡みつき、うねるその中へ容赦なく埋め込んでいけば、陽太は目を大きく開いて小さく叫んだ。

 その嬌声を吸い込む様に唇を合わせれば、自分の身体の中に陽太が入り込む様だった。

 堪える事もできずに、誠は腰を容赦なく動かした。それは焦らされた陽太を一気に上り詰めさせる事になったけれど、お互いの興奮はそう望んで続けさせた。


 腹に暖かな体液を感じた気がしたけれど、自分にもそう余裕があるわけでも無かった。こんな風に自分のペースを保てないのはそれこそ覚えたての頃を思わせて、それがどこか嬉しい気もして誠は甘く喘ぐ陽太の唇を奪った。

 身体をぴたりと合わせてゆっくりと揺さぶれば、紅潮した陽太が色っぽく細めた瞼を震わせて、長い睫毛を揺らす。それを見つめながら誠は集中を高めて自分と一緒に陽太を追い詰めた。


 最初に何度目かの絶頂を迎えたのは陽太だったけれど、その食い込みに誠もまた我慢を解き放って、しびれる様な吐き出しを手に入れた。こんな快感はいつ以来なのか思い出すのは悪手な気がして、誠は無意識に吠える自分の声を他人事の様に聞いた。

 パタリと自分に抱きついていた陽太の手がシーツの上に落ちたのを感じて覗き込むと、ぐったりと目を閉じた陽太は意識を飛ばした様だった。

 幼く感じる素顔を見つめながら、誠はそっとその赤い唇に自分のそれを触れ合わせた。感傷的だが、妙に満足感があった。それからもう一度目を覚ますまで、誠は陽太の甘い惹きつける匂いを堪能した。


 「…誠。ごめん、僕眠っちゃってた?」

 ギシリとベッドを揺らして陽太を覗き込みながら、誠はまた昂って来た自分の股間を陽太に押し付けて囁いた。

「…もう一度しようか。」

 少し恥ずかしげな表情を浮かべつつも、陽太は誠を魅了する笑みを浮かべた。

「ふふ。だから休ませてくれてたの?」






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