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竜人の養い子
お泊まり
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顔に触れる温かなモフモフに僕は思わず笑みを浮かべた。目を開けると豹柄の毛皮が飛び込んで来た。無意識に手を伸ばして撫でたけれど、ジェシーはぐっすり眠っていてまだ起きる気配も無い。
結局僕はジェシーの家に泊まった。ジェシー兄弟と一緒に夕食をご馳走になっていると、ジェシーのお母さんが僕に言った。
「さっき知らせが来て、魔物の討伐隊は森の麓で野営をする事になったらしいから、テディはここに泊まって行ってね?隠者様とは今夜会えないけど、大丈夫?待ってられるかしら。」
僕はスラリとした派手顔のジェシーのお母さんを見上げて、大きく頷いた。
「らいじょうぶ。…ひとりれねんね、れきる。」
見かけはともかく、中身は立派な僕はよその家でも一人で眠れる。いつもはパーカスの大きなベッドの隅で眠っているけど、毎朝気づけばパーカスの脇にくっついているけど、多分大丈夫。
この小さな身体のおねしょの要因だけ防げば、よその家でのお泊まりも大丈夫だろう。僕がそう思っていると、ジェシーが言った。
「テディは俺と一緒に寝ようぜ。俺が面倒見てやるって言っただろ?」
ぱっちりした目の可愛いジェシーの口から、俺様言葉が出てくるのには未だに慣れないけど、僕はよその家で色々選べた義理でもないと頷いた。
「うん。よろちくおねがいちまちゅ。」
寝支度を終えた僕は、すっかり機嫌の良くなったジェシーに手を引かれて、ジェシーの部屋に連れて行かれた。僕は物珍しげに周囲を見回した。可愛らしいベッドと机とイス、布が固く丸められた球みたいな玩具が床に転がっている。
「…俺は眠る時はまだ獣化しちゃうけどな。」
そう言うと、ゴロリとベッドに転がった。僕がゴソゴソとベッドに登ると、ジェシーが恥ずかしそうに僕から目を逸らして言った。
「なぁ、アレやってくれないか?俺、テディに撫でられるの大好きなんだ。」
僕はツンデレの様なジェシーが面白くてクスクス笑った。笑っている目の前でジェシーがスルスルと手足の先から獣化していくのを、僕は不思議な気持ちで眺めた。髪から突き出た先端の丸い三角の耳が少し大きくなった気がした時には、もうすっかりジェシーは大きな猫になっていた。
僕は両手をワキワキさせて、ジェシーの耳の裏から身体全体をマッサージする様になぞった。確かペットマッサージとか言うものがある位だ。別に悪いことじゃないだろう。
口の悪い人型のジェシーと違って、大きな猫のジェシーは本当可愛い。なんであんな口調なんだろう。まぁ僕に言わせれば随分背伸びしてる感じがして、それはそれで可愛げがあるのかもしれない。
僕が指の間にジェシーの柔らかな毛皮を挟んでなめらかさを堪能していたら、ジェシーはすっかり寝落ちしてしまった。確かにマッサージで寝落ちは最高だよね。
僕はゴソゴソと毛布の中に潜り込んで、ジェシーのふわふわの首のところにおでこをつけた。時々グルグル聞こえて、それがまるで荒野の雷鳴の様だと思った。まぁ、聞いた事はないけどね。
その音を聞いているうちに僕もすっかり眠ってしまったみたいだ。気がつけば朝になっていて、目が覚めた僕はジェシーのふわふわのお腹に指を突っ込んで遊んでいた。
ふいにおでこをざらついたもので舐められて、僕は思わず逃げた。ジェシーが僕を舐めたみたいだ。
「…じぇちー、いちゃい。」
するとジェシーはむくむくと大きな猫から、男の子になった。すっぽんぽんなのは獣化すると服が脱げちゃうからだ。ジェシーは僕をぎゅっと抱きしめると、おでこにキスして言った。
「…おはよ、テディ。くすぐったくて目が覚めちゃったよ。腹減っただろ?朝ごはん食べに行こうぜ。」
裸ん坊の男の子にそう言われても、なんか賛同できないのはどうしてかな。目の前で着替えるジェシーを見つめながら、僕も着替えようとベッドから降りて服に手を伸ばした。
そこで僕ははたと固まった。僕はいつもパーカスに着替えを手伝ってもらっている。昨日も湯浴みの時、ジェシーのお兄ちゃんに着替えを手伝って貰った。不器用な僕の手が急に上手く動くとは思えなかった。
「じぇちー、こえ。」
丁度着替え終わったジェシーに、僕は自分の服を渡した。そして仁王立ちで両腕を広げた。さぁ、どうとでもして、僕に服を着せてくれ。するとジェシーは妙に嬉しそうにニヤニヤして言った。
「なんだなんだ?テディは着替えも出来ないのか。しょうがないな、俺様が着替えさせてやるぜ。」
そう言って僕に着せてくれようとしたけれど、自分で着るのと他人に着せるのとでは勝手が違うらしい。上手く出来なくてジェシーが癇癪を起こしそうになっていた時、僕らを起こしに来たお兄ちゃんがサッサと着せてくれた。
すっかり不機嫌になって口を尖らせたジェシーの手を繋いで、僕はにっこり微笑んで言った。
「じぇちー、ありがちょ。おなかぺこぺこ、ねー?」
するとジェシーは僕の手をぎゅっと握って言った。
「まったく世話の焼けるやつ。テディは俺がいなくちゃ全然ダメだよな?」
相変わらずのジェシーの俺様ぶりに、僕とお兄ちゃんは顔を見合わせてクスクス笑った。本当ジェシー、顔と態度が合ってないんだよね、可愛いなぁ。
結局僕はジェシーの家に泊まった。ジェシー兄弟と一緒に夕食をご馳走になっていると、ジェシーのお母さんが僕に言った。
「さっき知らせが来て、魔物の討伐隊は森の麓で野営をする事になったらしいから、テディはここに泊まって行ってね?隠者様とは今夜会えないけど、大丈夫?待ってられるかしら。」
僕はスラリとした派手顔のジェシーのお母さんを見上げて、大きく頷いた。
「らいじょうぶ。…ひとりれねんね、れきる。」
見かけはともかく、中身は立派な僕はよその家でも一人で眠れる。いつもはパーカスの大きなベッドの隅で眠っているけど、毎朝気づけばパーカスの脇にくっついているけど、多分大丈夫。
この小さな身体のおねしょの要因だけ防げば、よその家でのお泊まりも大丈夫だろう。僕がそう思っていると、ジェシーが言った。
「テディは俺と一緒に寝ようぜ。俺が面倒見てやるって言っただろ?」
ぱっちりした目の可愛いジェシーの口から、俺様言葉が出てくるのには未だに慣れないけど、僕はよその家で色々選べた義理でもないと頷いた。
「うん。よろちくおねがいちまちゅ。」
寝支度を終えた僕は、すっかり機嫌の良くなったジェシーに手を引かれて、ジェシーの部屋に連れて行かれた。僕は物珍しげに周囲を見回した。可愛らしいベッドと机とイス、布が固く丸められた球みたいな玩具が床に転がっている。
「…俺は眠る時はまだ獣化しちゃうけどな。」
そう言うと、ゴロリとベッドに転がった。僕がゴソゴソとベッドに登ると、ジェシーが恥ずかしそうに僕から目を逸らして言った。
「なぁ、アレやってくれないか?俺、テディに撫でられるの大好きなんだ。」
僕はツンデレの様なジェシーが面白くてクスクス笑った。笑っている目の前でジェシーがスルスルと手足の先から獣化していくのを、僕は不思議な気持ちで眺めた。髪から突き出た先端の丸い三角の耳が少し大きくなった気がした時には、もうすっかりジェシーは大きな猫になっていた。
僕は両手をワキワキさせて、ジェシーの耳の裏から身体全体をマッサージする様になぞった。確かペットマッサージとか言うものがある位だ。別に悪いことじゃないだろう。
口の悪い人型のジェシーと違って、大きな猫のジェシーは本当可愛い。なんであんな口調なんだろう。まぁ僕に言わせれば随分背伸びしてる感じがして、それはそれで可愛げがあるのかもしれない。
僕が指の間にジェシーの柔らかな毛皮を挟んでなめらかさを堪能していたら、ジェシーはすっかり寝落ちしてしまった。確かにマッサージで寝落ちは最高だよね。
僕はゴソゴソと毛布の中に潜り込んで、ジェシーのふわふわの首のところにおでこをつけた。時々グルグル聞こえて、それがまるで荒野の雷鳴の様だと思った。まぁ、聞いた事はないけどね。
その音を聞いているうちに僕もすっかり眠ってしまったみたいだ。気がつけば朝になっていて、目が覚めた僕はジェシーのふわふわのお腹に指を突っ込んで遊んでいた。
ふいにおでこをざらついたもので舐められて、僕は思わず逃げた。ジェシーが僕を舐めたみたいだ。
「…じぇちー、いちゃい。」
するとジェシーはむくむくと大きな猫から、男の子になった。すっぽんぽんなのは獣化すると服が脱げちゃうからだ。ジェシーは僕をぎゅっと抱きしめると、おでこにキスして言った。
「…おはよ、テディ。くすぐったくて目が覚めちゃったよ。腹減っただろ?朝ごはん食べに行こうぜ。」
裸ん坊の男の子にそう言われても、なんか賛同できないのはどうしてかな。目の前で着替えるジェシーを見つめながら、僕も着替えようとベッドから降りて服に手を伸ばした。
そこで僕ははたと固まった。僕はいつもパーカスに着替えを手伝ってもらっている。昨日も湯浴みの時、ジェシーのお兄ちゃんに着替えを手伝って貰った。不器用な僕の手が急に上手く動くとは思えなかった。
「じぇちー、こえ。」
丁度着替え終わったジェシーに、僕は自分の服を渡した。そして仁王立ちで両腕を広げた。さぁ、どうとでもして、僕に服を着せてくれ。するとジェシーは妙に嬉しそうにニヤニヤして言った。
「なんだなんだ?テディは着替えも出来ないのか。しょうがないな、俺様が着替えさせてやるぜ。」
そう言って僕に着せてくれようとしたけれど、自分で着るのと他人に着せるのとでは勝手が違うらしい。上手く出来なくてジェシーが癇癪を起こしそうになっていた時、僕らを起こしに来たお兄ちゃんがサッサと着せてくれた。
すっかり不機嫌になって口を尖らせたジェシーの手を繋いで、僕はにっこり微笑んで言った。
「じぇちー、ありがちょ。おなかぺこぺこ、ねー?」
するとジェシーは僕の手をぎゅっと握って言った。
「まったく世話の焼けるやつ。テディは俺がいなくちゃ全然ダメだよな?」
相変わらずのジェシーの俺様ぶりに、僕とお兄ちゃんは顔を見合わせてクスクス笑った。本当ジェシー、顔と態度が合ってないんだよね、可愛いなぁ。
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