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再びの異世界
ジュリアンsideシンの帰還
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それはわたしが登城している時に起きた。王に謁見してシンの消えた状況と、その後の状況、真が再び現れる可能性などを私とルカで報告し終わった、まさにその時。謁見の間に居る私達から少し離れた場所に、その白いモヤが現れた。
私は胸が引き絞られる気がして、思わず胸に手を当てていた。期待と不安に激しく鼓動する胸が痛いほどで、私は息をするのを忘れていたかもしれない。
周囲に居る王を始めとする幹部達も、これがまさに私達の報告していた現象を目の当たりにしてる事に気づいたのか、只々黙りこくって見守っていた。モヤが薄くなるのと共に、何かが形作ってきて、それが人の様な姿に変わり始めるのを見ると、私は思わず立ち上がってふらふらと近づいていった。
そこには懐かしくも愛しく感じる長めの黒髪がサラリと揺れて、最初に会った時と同じうつむいて跪いた人間が姿を現した。白と薄青い色の見たことのない衣装を着たその人は、それでも私には一目でシンだと分かった。
私は手を伸ばしてどこにもいかない様に、決してこの世界から逃さぬ様に腕と腰を掴んだ。まだ覚醒していないのか、少しぼんやりとしていたシンはそれでも私の腕の中で直ぐに身体の力を抜いて委ねてきた。そしてあの甘ささえ感じる切望したシンの声が耳元で聞こえた。
「…ジュリアン?なんで、ここに…?」
ゆっくりとシンを抱き起こすと、まだ信じられない気持ちで腕の中のシンを見下ろした。無意識に出た自分の声が夢うつつに感じられたけれど、手に感じる体温がシンの存在をリアルに感じられた。不意にシンがクスクスと笑って心配かけてごめんと謝ってきた。
その時、後ろの方で咳払いが聞こえて、私はハッとここが何処なのか思い出した。
シンは少しだけ頬を赤らめて躊躇した後、おずおずと私の腕の中から出ると騎士の礼を取って王に挨拶をした。久しぶりに聞くシンのかしこまった凛々しい口上は私の胸に響いた。以前と変わらない日々が約束された気がしたからだ。
ルカがシンの側に寄って抱きしめたのは気に入らなかったが、そんな事までがシンがこの世界に戻ってきた証拠のような気がして私はじわじわと湧き上がる喜びに微笑んでいたらしい。
「…ジュリアンのそんな顔が見られるとは、シンの存在はかけがえのないものなのだな。勿論、私の国にとってもだが。シン、良く無事に戻ってきたな。フハハハ。」
王の言葉でその場がますます悦びに満ちた空間になったのは間違いなかった。
私は胸が引き絞られる気がして、思わず胸に手を当てていた。期待と不安に激しく鼓動する胸が痛いほどで、私は息をするのを忘れていたかもしれない。
周囲に居る王を始めとする幹部達も、これがまさに私達の報告していた現象を目の当たりにしてる事に気づいたのか、只々黙りこくって見守っていた。モヤが薄くなるのと共に、何かが形作ってきて、それが人の様な姿に変わり始めるのを見ると、私は思わず立ち上がってふらふらと近づいていった。
そこには懐かしくも愛しく感じる長めの黒髪がサラリと揺れて、最初に会った時と同じうつむいて跪いた人間が姿を現した。白と薄青い色の見たことのない衣装を着たその人は、それでも私には一目でシンだと分かった。
私は手を伸ばしてどこにもいかない様に、決してこの世界から逃さぬ様に腕と腰を掴んだ。まだ覚醒していないのか、少しぼんやりとしていたシンはそれでも私の腕の中で直ぐに身体の力を抜いて委ねてきた。そしてあの甘ささえ感じる切望したシンの声が耳元で聞こえた。
「…ジュリアン?なんで、ここに…?」
ゆっくりとシンを抱き起こすと、まだ信じられない気持ちで腕の中のシンを見下ろした。無意識に出た自分の声が夢うつつに感じられたけれど、手に感じる体温がシンの存在をリアルに感じられた。不意にシンがクスクスと笑って心配かけてごめんと謝ってきた。
その時、後ろの方で咳払いが聞こえて、私はハッとここが何処なのか思い出した。
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ルカがシンの側に寄って抱きしめたのは気に入らなかったが、そんな事までがシンがこの世界に戻ってきた証拠のような気がして私はじわじわと湧き上がる喜びに微笑んでいたらしい。
「…ジュリアンのそんな顔が見られるとは、シンの存在はかけがえのないものなのだな。勿論、私の国にとってもだが。シン、良く無事に戻ってきたな。フハハハ。」
王の言葉でその場がますます悦びに満ちた空間になったのは間違いなかった。
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