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二度目の砦生活

再びの開戦準備

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僕が砦に戻ってから事は、本当に目まぐるしいとしか言いようのない1ヶ月だった。戦況が一気に逼迫したというか、僕がそれを引き起こしたのではないかと大きな罪悪感で顔が引き攣るようだった。

そんな僕の胸中を汲み取ったのか、団長は僕を見つめて言った。

「敵国はここにきて、随分追い詰められていたようだ。国内事情が変わったのかもしれない。シンの事はきっかけに過ぎない。いずれ近いうちにこうなっていただけの事。来るべき戦に備えは充分。シンも身体を万全に戦に備えよ。」

僕は見れば見るほど赤龍の化身のように感じる団長の緑色の瞳を見つめた。僕は跪いて礼を取ると言った。


「命に代えて、万全を期します。」

「ハハハ。命に代えなくても良いぞ。シンは白魔法で我が軍の良き戦力になっておるからな。それだけでも充分だが、今回は更に前線へ出たいとのこと。…筆頭参謀が承認すれば、前線での活躍も出来るであろう。
期待してるぞ、シン。」

僕は団長のリーダーたる者のオーラをビリビリと感じると、畏敬の念を感じて仰ぎ見た。

「…ひとつお聞きしても宜しいですか?」

「シンから問われるのは珍しい。何だ。遠慮なく尋ねよ。」

僕は少々緊張して、顔を強張らせながら思い切って尋ねた。


「私が夜の国の第二王子に囚われた際、チャンスはあったものの命を奪いませんでした。その判断は間違いだったと思われますか。」

団長は、難しい顔をして腕を組むと目を閉じてしばらく考え込んでいた。僕はドキドキしながら団長の言葉を待った。

「…私もその場にいたら、どう行動しただろうと何度となく考えたのだ。状況が状況なだけにな。確かに戦場では確実に命のやり取りは発生する。それは戦場だからだ。しかし暗殺となると話は別だ。

もし第二王子を暗殺した場合、我が国に大掛かりな戦を仕掛ける大義名分が発生しただろうな。総力戦となって、勝っても負けても国が疲弊したのは間違いない。

戦は避けられぬとはいえ、お互いに国境を守りたいだけだ。特に今の我が王はそう考えておられる。
だからシンとジュリアンの判断は間違ってなかったと思う。」


僕は団長の言葉に、ずっと喉の奥に引っ掛かっていた骨が取れた様な心持ちがした。

「はっ。お言葉、心に響きました。ありがとうございます。」

そう言って団長に安堵の笑みを投げかけると、団長は少し眉を上げて言った。

「さぁ、話は終わりだ。…全くシンは目に毒だな。しかも後ろにいる奴が睨むので落ち着かぬ。ハハハ。」


僕がハッとして振り返ると、ジュリアンが心配そうに僕を見つめていた。もう、ジュリアンてば過保護が過ぎるよ!






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