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二度目の砦生活
有明の月
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風を引き裂いて飛んでくる聴き慣れた音は僕の直ぐ側を掠めて行った。僕はフーガにしがみつくと、後ろを見た。
少し遅れてジュリアンが僕らを追いかけて来る。馬のたてがみを握りしめて、器用に射掛けられた矢を払いながら僕に叫んでいた。
僕は集中して矢の飛んでくる音に耳を澄ました。手に汗を感じ、フーガのたてがみを握り直して、馬体に足先で合図しながら矢の方向とは逆へ駆けた。敵の砦は抜けても、ここで止まってしまえば、また捕まってしまう。僕は祈るようにフーガを走らせた。戦に長けたジュリアンより、足手まといの僕が止まるわけにいかない。
気づけば夜が明けて周囲が見えてきていた。前方から沢山の蹄音が聞こえてきて、僕たちの後ろへ矢を射かける音が頭上を響かせていた。
馬群の中央をフーガ達と抜けて行くと、兵士長やカークさん、副団長達が敵砦の方向へ攻撃をしかけて居るのが横目に見えた。助けが来たんだ。僕は張り詰めていた気持ちが急に抜けて来た。
「シンっ!陣に入るまで気を抜くな!もう少しだけ頑張るんだ!」
隣に近づいて来ていたジュリアンに鼓舞されて、気持ちを立て直した。
僕はジュリアンに頷くと、唇を噛み締めてフーガと駆けた。
砦に到着すると先に馬から飛び降りたジュリアンに抱き抱えられるようにフーガから降ろされた。僕は汗びっしょりのフーガの首を撫でると囁いた。
「フーガ、ありがとう。僕をここまで連れ帰ってくれて。本当にありがとう…。」
フーガは疲れ切った様子だったが、僕の手に鼻先を擦り寄せると低くいなないた。
兵士がフーガを連れて行くのを見守っていると、ジュリアンが僕を後ろから抱き上げた。
「んっ、…ジュリアン。僕…まだ抜けてなくて。」
僕は夢中で駆けて来た時には感じなかったあの焼けつくような欲望を、じわじわ感じ始めていた。吐き出す息が熱い…。
「ローディには言っておいた。今はシンを回復させるのが先だ。それにそれはルカではなく、私の役目だろう?」
ジュリアンはそう言いながら僕を強い眼差しで見つめるので、僕はお腹の奥がズクズクと震えるような快感を感じてしまった。僕は誰が見ているかも構わずに、思わずジュリアンの首に抱きついた。
「…ジュリアン、僕たち生きて戻って来れたんですね。僕、自分は信じきれなかったけれど、ジュリアンの事は信じてたんです。ジュリアンとなら生きて戻れるって。…助けに来てくれてありがとう。」
少し遅れてジュリアンが僕らを追いかけて来る。馬のたてがみを握りしめて、器用に射掛けられた矢を払いながら僕に叫んでいた。
僕は集中して矢の飛んでくる音に耳を澄ました。手に汗を感じ、フーガのたてがみを握り直して、馬体に足先で合図しながら矢の方向とは逆へ駆けた。敵の砦は抜けても、ここで止まってしまえば、また捕まってしまう。僕は祈るようにフーガを走らせた。戦に長けたジュリアンより、足手まといの僕が止まるわけにいかない。
気づけば夜が明けて周囲が見えてきていた。前方から沢山の蹄音が聞こえてきて、僕たちの後ろへ矢を射かける音が頭上を響かせていた。
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「シンっ!陣に入るまで気を抜くな!もう少しだけ頑張るんだ!」
隣に近づいて来ていたジュリアンに鼓舞されて、気持ちを立て直した。
僕はジュリアンに頷くと、唇を噛み締めてフーガと駆けた。
砦に到着すると先に馬から飛び降りたジュリアンに抱き抱えられるようにフーガから降ろされた。僕は汗びっしょりのフーガの首を撫でると囁いた。
「フーガ、ありがとう。僕をここまで連れ帰ってくれて。本当にありがとう…。」
フーガは疲れ切った様子だったが、僕の手に鼻先を擦り寄せると低くいなないた。
兵士がフーガを連れて行くのを見守っていると、ジュリアンが僕を後ろから抱き上げた。
「んっ、…ジュリアン。僕…まだ抜けてなくて。」
僕は夢中で駆けて来た時には感じなかったあの焼けつくような欲望を、じわじわ感じ始めていた。吐き出す息が熱い…。
「ローディには言っておいた。今はシンを回復させるのが先だ。それにそれはルカではなく、私の役目だろう?」
ジュリアンはそう言いながら僕を強い眼差しで見つめるので、僕はお腹の奥がズクズクと震えるような快感を感じてしまった。僕は誰が見ているかも構わずに、思わずジュリアンの首に抱きついた。
「…ジュリアン、僕たち生きて戻って来れたんですね。僕、自分は信じきれなかったけれど、ジュリアンの事は信じてたんです。ジュリアンとなら生きて戻れるって。…助けに来てくれてありがとう。」
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