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二度目の砦生活

第二王子の寝所

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なぜか早る気持ちで部屋に入ると、床に白の従騎士を転がしたまま、ケブラが待機していた。

「殿下、こやつは縛っておけば此処でなくとも宜しいかと。」

私は捕らえられた男の青ざめた横顔を見つめると言った。

「魔神の加護がこやつに効かないのだ。私の力の元でなければ逃げられてしまうやもしれん。大事を取って、ここで良い。ケブラ、お前は持ち場へ戻れ。戦はもう直ぐだ。」

そう言ってケブラを睨め付けると、ケブラは一瞬迷ったように従騎士を一瞥すると礼をとって出て行った。


入れ替わりで従者のハミットが入室して来た。

「ハミット、こやつの服を脱がし、ベッドへ転がせられるように綺麗にせよ。」

ハミットは私と白の従騎士を交互に見やった。そして口籠もりながら言った。

「…恐れながら、殿下の寝所に同衾させるのは危険と存じます。」

私は強張った顔のハミットを嘲笑うと、言った。


「何だ。嫉妬か?こやつは同衾するのでは無い。他の者では制御出来ぬゆえ、私が近くで見張るだけの事。
二度は言わぬ。言われた通りにせよ。…これを着せておけ。」

私は手元にあった、自分のローブをハミットに放った。ハミットはますます顔を顰めて、白の従騎士を抱え上げると浴場へ連れて行った。

私が酒を嗜んでいるうちに、私のローブを着せられた黒髪の男はベッドへ寝かせられた。
ぐずぐずしているハミットを下がらせると、ベッドに近付いてまじまじと男を眺めた。


髪の色も、肌の色も、顔の造作も、華奢な身体つきも全てがこの世界では見られないものだった。

指を伸ばして頬から首筋、胸へと撫で下ろすと、吸い付くような肌は柔らかくも引き締まった身体をみせていた。
艶めかしげな赤い唇はふっくらとしていて、指先を押し込むと柔らかで旨そうな舌を覗かせた。

私はハッとすると男の両手首を魔法で拘束して、湯浴みに行った。

湯船に浸かりながら、指先に触れた先程の赤い舌の柔らかさを何度も考えていた。異界の人間の味はどうであろうか。

あの筆頭参謀が大事に囲っているのだ。さぞかし旨いのだろう。私はほくそ笑むと、プレッシャーばかりの退屈な砦での毎日に、良い暇つぶしが出来たと喜んだ。


だが、今夜では無い。目を開けてなければ楽しめぬ。
私は寝所に戻ると、男の横に滑り込み、仄かに感じる男の甘い匂いを楽しみながら眠りについた。

隣で微かな動きを感じたのは、朝方だった。相変わらず夢見が悪かったが、今夜はまだマシだった。
見ると、白の従騎士はあんなに強い昏倒の魔法だったのにも関わらず、覚醒したようだ。私は男の背中に起きたのかと声を掛けた。


男は緊張した硬い声で言った。

「…貴方は、誰ですか。」


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