75 / 127
二度目の砦生活
第二王子の寝所
しおりを挟む
なぜか早る気持ちで部屋に入ると、床に白の従騎士を転がしたまま、ケブラが待機していた。
「殿下、こやつは縛っておけば此処でなくとも宜しいかと。」
私は捕らえられた男の青ざめた横顔を見つめると言った。
「魔神の加護がこやつに効かないのだ。私の力の元でなければ逃げられてしまうやもしれん。大事を取って、ここで良い。ケブラ、お前は持ち場へ戻れ。戦はもう直ぐだ。」
そう言ってケブラを睨め付けると、ケブラは一瞬迷ったように従騎士を一瞥すると礼をとって出て行った。
入れ替わりで従者のハミットが入室して来た。
「ハミット、こやつの服を脱がし、ベッドへ転がせられるように綺麗にせよ。」
ハミットは私と白の従騎士を交互に見やった。そして口籠もりながら言った。
「…恐れながら、殿下の寝所に同衾させるのは危険と存じます。」
私は強張った顔のハミットを嘲笑うと、言った。
「何だ。嫉妬か?こやつは同衾するのでは無い。他の者では制御出来ぬゆえ、私が近くで見張るだけの事。
二度は言わぬ。言われた通りにせよ。…これを着せておけ。」
私は手元にあった、自分のローブをハミットに放った。ハミットはますます顔を顰めて、白の従騎士を抱え上げると浴場へ連れて行った。
私が酒を嗜んでいるうちに、私のローブを着せられた黒髪の男はベッドへ寝かせられた。
ぐずぐずしているハミットを下がらせると、ベッドに近付いてまじまじと男を眺めた。
髪の色も、肌の色も、顔の造作も、華奢な身体つきも全てがこの世界では見られないものだった。
指を伸ばして頬から首筋、胸へと撫で下ろすと、吸い付くような肌は柔らかくも引き締まった身体をみせていた。
艶めかしげな赤い唇はふっくらとしていて、指先を押し込むと柔らかで旨そうな舌を覗かせた。
私はハッとすると男の両手首を魔法で拘束して、湯浴みに行った。
湯船に浸かりながら、指先に触れた先程の赤い舌の柔らかさを何度も考えていた。異界の人間の味はどうであろうか。
あの筆頭参謀が大事に囲っているのだ。さぞかし旨いのだろう。私はほくそ笑むと、プレッシャーばかりの退屈な砦での毎日に、良い暇つぶしが出来たと喜んだ。
だが、今夜では無い。目を開けてなければ楽しめぬ。
私は寝所に戻ると、男の横に滑り込み、仄かに感じる男の甘い匂いを楽しみながら眠りについた。
隣で微かな動きを感じたのは、朝方だった。相変わらず夢見が悪かったが、今夜はまだマシだった。
見ると、白の従騎士はあんなに強い昏倒の魔法だったのにも関わらず、覚醒したようだ。私は男の背中に起きたのかと声を掛けた。
男は緊張した硬い声で言った。
「…貴方は、誰ですか。」
「殿下、こやつは縛っておけば此処でなくとも宜しいかと。」
私は捕らえられた男の青ざめた横顔を見つめると言った。
「魔神の加護がこやつに効かないのだ。私の力の元でなければ逃げられてしまうやもしれん。大事を取って、ここで良い。ケブラ、お前は持ち場へ戻れ。戦はもう直ぐだ。」
そう言ってケブラを睨め付けると、ケブラは一瞬迷ったように従騎士を一瞥すると礼をとって出て行った。
入れ替わりで従者のハミットが入室して来た。
「ハミット、こやつの服を脱がし、ベッドへ転がせられるように綺麗にせよ。」
ハミットは私と白の従騎士を交互に見やった。そして口籠もりながら言った。
「…恐れながら、殿下の寝所に同衾させるのは危険と存じます。」
私は強張った顔のハミットを嘲笑うと、言った。
「何だ。嫉妬か?こやつは同衾するのでは無い。他の者では制御出来ぬゆえ、私が近くで見張るだけの事。
二度は言わぬ。言われた通りにせよ。…これを着せておけ。」
私は手元にあった、自分のローブをハミットに放った。ハミットはますます顔を顰めて、白の従騎士を抱え上げると浴場へ連れて行った。
私が酒を嗜んでいるうちに、私のローブを着せられた黒髪の男はベッドへ寝かせられた。
ぐずぐずしているハミットを下がらせると、ベッドに近付いてまじまじと男を眺めた。
髪の色も、肌の色も、顔の造作も、華奢な身体つきも全てがこの世界では見られないものだった。
指を伸ばして頬から首筋、胸へと撫で下ろすと、吸い付くような肌は柔らかくも引き締まった身体をみせていた。
艶めかしげな赤い唇はふっくらとしていて、指先を押し込むと柔らかで旨そうな舌を覗かせた。
私はハッとすると男の両手首を魔法で拘束して、湯浴みに行った。
湯船に浸かりながら、指先に触れた先程の赤い舌の柔らかさを何度も考えていた。異界の人間の味はどうであろうか。
あの筆頭参謀が大事に囲っているのだ。さぞかし旨いのだろう。私はほくそ笑むと、プレッシャーばかりの退屈な砦での毎日に、良い暇つぶしが出来たと喜んだ。
だが、今夜では無い。目を開けてなければ楽しめぬ。
私は寝所に戻ると、男の横に滑り込み、仄かに感じる男の甘い匂いを楽しみながら眠りについた。
隣で微かな動きを感じたのは、朝方だった。相変わらず夢見が悪かったが、今夜はまだマシだった。
見ると、白の従騎士はあんなに強い昏倒の魔法だったのにも関わらず、覚醒したようだ。私は男の背中に起きたのかと声を掛けた。
男は緊張した硬い声で言った。
「…貴方は、誰ですか。」
29
お気に入りに追加
2,696
あなたにおすすめの小説
ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
生き直し?伯爵令息の甘い日常
コプラ
BL
名前はリオン。天使みたいな無自覚伯爵令息が成長と共にパワーアップして、周囲の家族やご学友を無意識に翻弄し続ける小悪魔のほのぼのなとても甘い日常の成長記録 #萌えエロ #近親イチャイチャ #天然最強説 #総愛され #成長と共に固定カップル? #甘い溺愛好きな人に読んでもらいたい笑 # 勢いで書いてます #幸せしかありません ※は背後注意が正解です
読んでもらって嬉しいです♡感想頂けると喜びます♪
2022/1/1に新年のお祝いに1話完結の番外編更新しました♪
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
婚約破棄された俺の農業異世界生活
深山恐竜
BL
「もう一度婚約してくれ」
冤罪で婚約破棄された俺の中身は、異世界転生した農学専攻の大学生!
庶民になって好きなだけ農業に勤しんでいたら、いつの間にか「畑の賢者」と呼ばれていた。
そこに皇子からの迎えが来て復縁を求められる。
皇子の魔の手から逃げ回ってると、幼馴染みの神官が‥。
(ムーンライトノベルズ様、fujossy様にも掲載中)
(第四回fujossy小説大賞エントリー中)
音楽の神と呼ばれた俺。なんか殺されて気づいたら転生してたんだけど⁉(完)
柿の妖精
BL
俺、牧原甲はもうすぐ二年生になる予定の大学一年生。牧原家は代々超音楽家系で、小さいころからずっと音楽をさせられ、今まで音楽の道を進んできた。そのおかげで楽器でも歌でも音楽に関することは何でもできるようになり、まわりからは、音楽の神と呼ばれていた。そんなある日、大学の友達からバンドのスケットを頼まれてライブハウスへとつながる階段を下りていたら後ろから背中を思いっきり押されて死んでしまった。そして気づいたら代々超芸術家系のメローディア公爵家のリトモに転生していた!?まぁ音楽が出来るなら別にいっか!
そんな音楽の神リトモと呪いにかけられた第二王子クオレの恋のお話。
完全処女作です。温かく見守っていただけると嬉しいです。<(_ _)>
異世界に転移したら運命の人の膝の上でした!
鳴海
BL
ある日、異世界に転移した天音(あまね)は、そこでハインツという名のカイネルシア帝国の皇帝に出会った。
この世界では異世界転移者は”界渡り人”と呼ばれる神からの預かり子で、界渡り人の幸せがこの国の繁栄に大きく関与すると言われている。
界渡り人に幸せになってもらいたいハインツのおかげで離宮に住むことになった天音は、日本にいた頃の何倍も贅沢な暮らしをさせてもらえることになった。
そんな天音がやっと異世界での生活に慣れた頃、なぜか危険な目に遭い始めて……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる