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王都へ
危機一髪
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僕はフーガの手綱を持ち直した。心臓がドキドキと激しく打ち始めた。
目の前に近づいてくる黒騎士団の騎士と兵士達が濃い紫色に染まっていた。騎士のこちらを見つめる真っ青な瞳は強い眼差しで只者ではない感じがした。
その騎士たちが僕を取り囲んで訓練場の変更を告げると、僕は足で合図してフーガを後退させると、踵を返してがむしゃらに走らせた。
フーガは瞬足で名を馳せていて、僕が軽いこともあり直ぐ後ろを追いかけてくる紫色の集団から少しづつ距離が空いてきた。
その時に青い目の騎士の手からキラリと光る剣の刃が見えて、僕は思わず祝詞を口の中で唱えていた。僕に出来る事は弓以外では白魔法だけだ。
僕の背中でバチバチッと電気の様なものが光った気がした。微かに身体も痺れている。僕はフーガの無事を確認すると時々後ろを見ながら更に走った。
訓練場の門兵たちが見えてくると、全速力で走ってくる僕の姿にギョッとした様子だったが直ぐに門を開けてくれた。
門を通過する際に後ろを振り返って見てみると、紫色の集団は踵を返して全速力で走り去っていた。
僕がフーガにしがみついて馬上でガタガタと震えていると、顔見知りの第二弓隊の副隊長が駆け寄ってきた。
「シン、何があった⁉︎」
僕はよろめきながらフーガから降りると、まだ整わない息を落ち着かせながら答えた。
「…副隊長、今こちらへ来る際に拉致られそうになったので必死に逃げました。途中、短剣も投げられた様です。」
話を聞いた副隊長は側に居た兵士たちに直ぐに命令を出すと、僕を待機室に連れて行く様に兵士に命じた。
「シン、話は後だ。先ずは落ち着きなさい。短剣は探しにいかせた。シンを連れて行け。」
僕は興奮したフーガをなだめて馬丁に頼むと、兵士に支えられる様にして待機室へ入った。
待機室に居た騎士や兵士たちは何事かとざわめいたが、僕は急に身体が震えてきて兵士に入れてもらった冷たい水をごくごくと飲み干した。
茫然自失してしまった僕が我に返ったのは僕の名を呼ぶジュリアンの声だった。
「シン!無事か⁉︎ 」
駆け寄って僕に怪我はないか確かめるジュリアンの顔を見て、僕はやっと覚醒した。
「…フォーカス様、こちらへ向かう途中に訓練場所が変更になったと怪しい集団につげられたんです。
…裏切り者でした。僕は必死でフーガを走らせてこちらに逃げてきたんです。
青い目の男が刃を光らせたので祝詞を唱えたら、バチバチと光って刃物は刺さりませんでしたが…。
一体彼らは何者でしょう。」
僕はまだ微かに震える指先を隠す様に手を握りしめると、ジュリアンは僕の片手をそっと上から握って僕の目を見つめて言った。
「…とにかくシンが無事で良かった。詳しくは私の執務室で聞こう。」
目の前に近づいてくる黒騎士団の騎士と兵士達が濃い紫色に染まっていた。騎士のこちらを見つめる真っ青な瞳は強い眼差しで只者ではない感じがした。
その騎士たちが僕を取り囲んで訓練場の変更を告げると、僕は足で合図してフーガを後退させると、踵を返してがむしゃらに走らせた。
フーガは瞬足で名を馳せていて、僕が軽いこともあり直ぐ後ろを追いかけてくる紫色の集団から少しづつ距離が空いてきた。
その時に青い目の騎士の手からキラリと光る剣の刃が見えて、僕は思わず祝詞を口の中で唱えていた。僕に出来る事は弓以外では白魔法だけだ。
僕の背中でバチバチッと電気の様なものが光った気がした。微かに身体も痺れている。僕はフーガの無事を確認すると時々後ろを見ながら更に走った。
訓練場の門兵たちが見えてくると、全速力で走ってくる僕の姿にギョッとした様子だったが直ぐに門を開けてくれた。
門を通過する際に後ろを振り返って見てみると、紫色の集団は踵を返して全速力で走り去っていた。
僕がフーガにしがみついて馬上でガタガタと震えていると、顔見知りの第二弓隊の副隊長が駆け寄ってきた。
「シン、何があった⁉︎」
僕はよろめきながらフーガから降りると、まだ整わない息を落ち着かせながら答えた。
「…副隊長、今こちらへ来る際に拉致られそうになったので必死に逃げました。途中、短剣も投げられた様です。」
話を聞いた副隊長は側に居た兵士たちに直ぐに命令を出すと、僕を待機室に連れて行く様に兵士に命じた。
「シン、話は後だ。先ずは落ち着きなさい。短剣は探しにいかせた。シンを連れて行け。」
僕は興奮したフーガをなだめて馬丁に頼むと、兵士に支えられる様にして待機室へ入った。
待機室に居た騎士や兵士たちは何事かとざわめいたが、僕は急に身体が震えてきて兵士に入れてもらった冷たい水をごくごくと飲み干した。
茫然自失してしまった僕が我に返ったのは僕の名を呼ぶジュリアンの声だった。
「シン!無事か⁉︎ 」
駆け寄って僕に怪我はないか確かめるジュリアンの顔を見て、僕はやっと覚醒した。
「…フォーカス様、こちらへ向かう途中に訓練場所が変更になったと怪しい集団につげられたんです。
…裏切り者でした。僕は必死でフーガを走らせてこちらに逃げてきたんです。
青い目の男が刃を光らせたので祝詞を唱えたら、バチバチと光って刃物は刺さりませんでしたが…。
一体彼らは何者でしょう。」
僕はまだ微かに震える指先を隠す様に手を握りしめると、ジュリアンは僕の片手をそっと上から握って僕の目を見つめて言った。
「…とにかくシンが無事で良かった。詳しくは私の執務室で聞こう。」
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