39 / 127
はじめての戦
夜の国ライデン
しおりを挟む
「くそっ!こんな状況に陥るとは聞いてなかったぞ!」
テーブルの上の酒の入ったカップを払い飛ばして激昂するシュレーム公爵統括を眺めながら、ゲオ騎士団長はカップを傾け喉を潤した。
公爵に言われなくても今回の敗戦は様子がおかしかった。
戦略見込みでは五分五分か、むしろ魔の加護の強い夜の国が優勢だったはずだ。
それが蓋を開けてみると、あに図らんや日没を待たずに敗走する羽目になっていた。
ゲオは部屋の端に控えている部下に目をやって尋ねた。
「何か分かったか、ケブラ。」
見るからに切れ者とわかる鋭い青い眼差しのケブラは跪いて言った。
「ははっ、ただいま情報を集めております。が、現時点で判明したことを報告いたします。
今回の敗因の大きな一因になったのは、後方部隊への弓による奇襲の様です。」
ゲオは眉を顰めて呟いた。
「奇襲だと?奇襲というからには部隊の人数も少ないだろう。
そこまで弓隊があの大所帯の後方部隊に影響を与えるとは思えないが。」
「通常の小規模弓部隊でしたらそうでしょう。しかし今回の奇襲部隊は様子が違っていたと報告が上がっております。
その弓矢は味方を射抜くと同時に、周囲の兵士の戦闘力を無くしました。」
「どういう事だ?」
さっきまで黙ってやり取りを聞いていた、騎士団副団長が身を乗り出した。
「はっ、目撃した者曰く、白く光る矢が射抜いた瞬間に周囲の兵士にもその白い光が刺さり深傷を負ったとの事です。」
「何だと⁉︎そんな話は聞いた事がない。何か新しい魔法なのか。そんな強い魔法士の話はここ150年噂にも登っていないはずだ。」
シュレーム公爵統括は目を大きく見開いて、ゲオ騎士団長を見た。
団長は公爵に頷くと言った。
「敵陣に忍び込ませている情報屋からもその様な話は聞いてません。が、最近なぜか情報が途切れている者がおります。
寝返ったか、あるいは…。ケブラ、他に分かった事はあるか。」
ケブラは少し迷った様に口籠ると私を見上げて言った。
「実は真偽の程は定かではないのですが、少年騎士が射った矢が一番威力があったとの目撃情報がありました。」
「…少年騎士だと?戦場に多少は居るだろうが、前線に立たせるとは…相当な遣い手という事か。
相分かった。続けて情報を集めよ。」
シュレーム公爵統括は大きく息を吐き出すと、幕内の要人達を睨め付けながら言った。
「…少年騎士は置いておいても、今回の敗北を聞いたらおいでになるのは間違いない。
とにかく第二王子が砦に帰還なさる前に全ての情報、要因を明らかにせよ。」
テーブルの上の酒の入ったカップを払い飛ばして激昂するシュレーム公爵統括を眺めながら、ゲオ騎士団長はカップを傾け喉を潤した。
公爵に言われなくても今回の敗戦は様子がおかしかった。
戦略見込みでは五分五分か、むしろ魔の加護の強い夜の国が優勢だったはずだ。
それが蓋を開けてみると、あに図らんや日没を待たずに敗走する羽目になっていた。
ゲオは部屋の端に控えている部下に目をやって尋ねた。
「何か分かったか、ケブラ。」
見るからに切れ者とわかる鋭い青い眼差しのケブラは跪いて言った。
「ははっ、ただいま情報を集めております。が、現時点で判明したことを報告いたします。
今回の敗因の大きな一因になったのは、後方部隊への弓による奇襲の様です。」
ゲオは眉を顰めて呟いた。
「奇襲だと?奇襲というからには部隊の人数も少ないだろう。
そこまで弓隊があの大所帯の後方部隊に影響を与えるとは思えないが。」
「通常の小規模弓部隊でしたらそうでしょう。しかし今回の奇襲部隊は様子が違っていたと報告が上がっております。
その弓矢は味方を射抜くと同時に、周囲の兵士の戦闘力を無くしました。」
「どういう事だ?」
さっきまで黙ってやり取りを聞いていた、騎士団副団長が身を乗り出した。
「はっ、目撃した者曰く、白く光る矢が射抜いた瞬間に周囲の兵士にもその白い光が刺さり深傷を負ったとの事です。」
「何だと⁉︎そんな話は聞いた事がない。何か新しい魔法なのか。そんな強い魔法士の話はここ150年噂にも登っていないはずだ。」
シュレーム公爵統括は目を大きく見開いて、ゲオ騎士団長を見た。
団長は公爵に頷くと言った。
「敵陣に忍び込ませている情報屋からもその様な話は聞いてません。が、最近なぜか情報が途切れている者がおります。
寝返ったか、あるいは…。ケブラ、他に分かった事はあるか。」
ケブラは少し迷った様に口籠ると私を見上げて言った。
「実は真偽の程は定かではないのですが、少年騎士が射った矢が一番威力があったとの目撃情報がありました。」
「…少年騎士だと?戦場に多少は居るだろうが、前線に立たせるとは…相当な遣い手という事か。
相分かった。続けて情報を集めよ。」
シュレーム公爵統括は大きく息を吐き出すと、幕内の要人達を睨め付けながら言った。
「…少年騎士は置いておいても、今回の敗北を聞いたらおいでになるのは間違いない。
とにかく第二王子が砦に帰還なさる前に全ての情報、要因を明らかにせよ。」
65
お気に入りに追加
2,696
あなたにおすすめの小説
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたアルフォン伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
アルフォンのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~
楠ノ木雫
BL
俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。
これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。
計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……
※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。
※他のサイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる