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はじめての戦

夜の国ライデン

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「くそっ!こんな状況に陥るとは聞いてなかったぞ!」

テーブルの上の酒の入ったカップを払い飛ばして激昂するシュレーム公爵統括を眺めながら、ゲオ騎士団長はカップを傾け喉を潤した。

公爵に言われなくても今回の敗戦は様子がおかしかった。
戦略見込みでは五分五分か、むしろ魔の加護の強い夜の国が優勢だったはずだ。

それが蓋を開けてみると、あに図らんや日没を待たずに敗走する羽目になっていた。


ゲオは部屋の端に控えている部下に目をやって尋ねた。

「何か分かったか、ケブラ。」

見るからに切れ者とわかる鋭い青い眼差しのケブラは跪いて言った。

「ははっ、ただいま情報を集めております。が、現時点で判明したことを報告いたします。
今回の敗因の大きな一因になったのは、後方部隊への弓による奇襲の様です。」


ゲオは眉を顰めて呟いた。

「奇襲だと?奇襲というからには部隊の人数も少ないだろう。
そこまで弓隊があの大所帯の後方部隊に影響を与えるとは思えないが。」

「通常の小規模弓部隊でしたらそうでしょう。しかし今回の奇襲部隊は様子が違っていたと報告が上がっております。

その弓矢は味方を射抜くと同時に、周囲の兵士の戦闘力を無くしました。」


「どういう事だ?」

さっきまで黙ってやり取りを聞いていた、騎士団副団長が身を乗り出した。

「はっ、目撃した者曰く、白く光る矢が射抜いた瞬間に周囲の兵士にもその白い光が刺さり深傷を負ったとの事です。」


「何だと⁉︎そんな話は聞いた事がない。何か新しい魔法なのか。そんな強い魔法士の話はここ150年噂にも登っていないはずだ。」
シュレーム公爵統括は目を大きく見開いて、ゲオ騎士団長を見た。

団長は公爵に頷くと言った。

「敵陣に忍び込ませている情報屋からもその様な話は聞いてません。が、最近なぜか情報が途切れている者がおります。

寝返ったか、あるいは…。ケブラ、他に分かった事はあるか。」


ケブラは少し迷った様に口籠ると私を見上げて言った。

「実は真偽の程は定かではないのですが、少年騎士が射った矢が一番威力があったとの目撃情報がありました。」

「…少年騎士だと?戦場に多少は居るだろうが、前線に立たせるとは…相当な遣い手という事か。
相分かった。続けて情報を集めよ。」


シュレーム公爵統括は大きく息を吐き出すと、幕内の要人達を睨め付けながら言った。

「…少年騎士は置いておいても、今回の敗北を聞いたらおいでになるのは間違いない。

とにかく第二王子が砦に帰還なさる前に全ての情報、要因を明らかにせよ。」









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