異世界に飛ばされた僕の従騎士生活

新しい生活

パワーランチ？

「馬のご褒美をご存知でしたか？実は僕の元の世界では訓練の後などに馬にあげる甘いご褒美があったんです。

僕の馬はとても良い馬なので、ご褒美をあげたくなったんです。

砦の使用人に甘みのある植物が無いか尋ねたら、幸運にも馬も食べられる糖草が見つかったんです。
それで、糖草を混ぜた干し草を固めご褒美を軍事訓練が終わった後にあげているんです。」

「なるほど。元の世界での知識を活かしたのか。兵士長がシンの考えたご褒美を取り入れてから、馬が指示をよく聞く様になったと喜んでいたのでな。面白い。」


団長は僕の顔を見ながらニヤリと笑うと言った。

「本人は全くそのつもりはなくても、いつの間にか周囲を攻略していくとは…、当事者でなければ中々の見ものであるな。」

僕は団長が何について言ってるのかは分からなかったけれど、多分褒められてる…よね？
日本人の得意な曖昧な微笑みで乗り切った。


「シン殿は今度の戦闘に参加なさると聞きました。フォーカス様、どちらに配備する予定でしょうか。」

今まで黙って皆の話を聞いていた騎士様が話し出した。

僕は改めてその騎士様を見つめた。こちらの世界の人の年齢は僕には判別が難しい。思ってるよりはきっと若いはず。
多分僕より3-4歳上という感じだろうか。ゴリマッチョな兵士や騎士が多い中ではスラリとした珍しいタイプだ。
顔も厳しいと言うよりは優しげなイケメンだ。


僕があまりにじろじろ見ていたせいか、その騎士様はクスリと笑って僕に話しかけた。

「これは失礼。私はナルシスです。団長の補佐をしています。昨年までは団長の従騎士だったんですよ。」

僕は不躾な視線を送りすぎたかと気不味くなってしまった。

「シン、ナルシスは団長の補佐だが、私と一緒に戦略の一端を担っているんだ。若いが非常に優秀な騎士の一人だ。」

フォーカス様が困っていた僕に教えてくれた。

「ナルシス、先程の話だがシンは私の従騎士ではあるが初戦でもある。あと、シン独自の白魔法の弓の効果も知りたい。

そこで今回は第二部隊の弓隊に配置しようかと思うがどうだ？」


ナルシス様はしばらく僕を見ながら考えていたけれど、頷いて言った。

「それが良いかと存じます。数人シン殿が慣れた者を一緒に配置すれば問題ないでしょう。」

「話もまとまった様だな。さあ、食事をしなければ時間がなくなるぞ。」

そう騎士団長が言うと、待機していたのか下僕たちが食事を次々に運んできた。

「シン、この食事は事前に毒味済みだからいつもの様にする必要はない。ゆっくり食べなさい。」

フォーカス様は僕ににっこり微笑むと食事を始めた。


…何だか団長や、ナルシス様、ルカ様の視線が非常に生暖かいのは色を見なくてもひしひしと感じられるんだけど…。

ああ、居た堪れない！僕はヤケになって何も考えないように食べ始めた。