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新しい生活
力のコントロール
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弓を構えて声にならない祝詞を口の中で呟く。
さっきより早く身体が熱く感じる。
僕はゆったりとしながらも、無駄がないように弓をキリキリと引き絞って矢を放った。
うねる様な勢いで飛び出した矢は空気を切り裂いて的に吸い込まれて行った。
次の瞬間、土煙が高く上がって四方へ土塊が飛び散った。
僕は胸元で小さくガッツポーズを握ると、手繰り寄せた手綱を握りしめ次の的までフーガと駆けた。
僕とフーガは幾つかの的を攻略し終わると兵士長の所までゆっくり戻った。
「フーガ、お疲れ様。今日も良くやったね。ありがとう。」
僕はフーガの首筋をぽんぽんと優しく叩いて、用意してあった水と糖草の混じった干し草の塊をあげた。
フーガは嬉しそうにご褒美を食べると世話係に連れられて行った。
「シン君の考えた糖草のご褒美はホントに便利だよな。アレのおかげで、この砦の馬たちは随分聞き分けが良くなったよ。」
ジャック兵士長がフーガの後ろ姿を眺めながら言った。
「僕達だってご褒美は大好きですからね。フーガたちが喜んで僕たちと一緒にやってくれるんならご褒美は必要でしょ?」
そう言いながら僕は手首につけた水晶を見つめた。
「今、どのくらいになった?」
「えーと、大体半分と言うところですね。昨日より減り方が遅いので、訓練を続ければもっと沢山打てる様になりそうです。」
「相変わらず真面目だな、シン君は。本来はもっとゆっくり訓練したい所だが、状況はあまり良くないからな。今度の戦闘にはシン君も出ると聞いたが。」
「はい。フォーカス様にお願いしました。この力がどれだけ通用するのか知りたいですし、フォーカス様をお守りしたいですからね?」
「…うむ。フォーカス様を守ると言うよりは、フォーカス様が率先して守りそうだがな…。」
兵士長の最後の言葉は小さくて聞こえなかったけれど、僕がやる気いっぱいだったのを見てなぜか頭を撫でられた。
僕立派な大人なんだけど…。
時々感じる僕を見る他の人の生暖かい眼差し。色的には変な感じではなくて、どちらかというと黄色というか、ペットを見る感じ⁉︎
今も兵士長はそのオーラで僕を撫でたよね⁉︎
そりゃこの砦に居る人は基本兵士達なので、屈強な人ばかりだ。
何か筋肉フェチのジムにでも紛れ込んだみたいというか。背も大きいし、何なら顔も厳ついし。
あれ?やっぱり僕ってペット枠かもしんない。はは。はぁ。
「シン、何ため息をついている?疲れたのか?水晶を見せなさい。」
はぁ、ここに一番過保護な人登場だ。
フォーカス様は僕の腕を取ると、水晶をじっくり睨みつけた。そして頷いた後、微笑んで言った。
「昨日より消耗が少ない。着実に身体の負担が減っている様だ。さぁ、昼を食べに行こう。」
僕はフォーカス様の後をついていきながら、何だかフォーカス様の方が僕の従者みたいだなと思った。
さっきより早く身体が熱く感じる。
僕はゆったりとしながらも、無駄がないように弓をキリキリと引き絞って矢を放った。
うねる様な勢いで飛び出した矢は空気を切り裂いて的に吸い込まれて行った。
次の瞬間、土煙が高く上がって四方へ土塊が飛び散った。
僕は胸元で小さくガッツポーズを握ると、手繰り寄せた手綱を握りしめ次の的までフーガと駆けた。
僕とフーガは幾つかの的を攻略し終わると兵士長の所までゆっくり戻った。
「フーガ、お疲れ様。今日も良くやったね。ありがとう。」
僕はフーガの首筋をぽんぽんと優しく叩いて、用意してあった水と糖草の混じった干し草の塊をあげた。
フーガは嬉しそうにご褒美を食べると世話係に連れられて行った。
「シン君の考えた糖草のご褒美はホントに便利だよな。アレのおかげで、この砦の馬たちは随分聞き分けが良くなったよ。」
ジャック兵士長がフーガの後ろ姿を眺めながら言った。
「僕達だってご褒美は大好きですからね。フーガたちが喜んで僕たちと一緒にやってくれるんならご褒美は必要でしょ?」
そう言いながら僕は手首につけた水晶を見つめた。
「今、どのくらいになった?」
「えーと、大体半分と言うところですね。昨日より減り方が遅いので、訓練を続ければもっと沢山打てる様になりそうです。」
「相変わらず真面目だな、シン君は。本来はもっとゆっくり訓練したい所だが、状況はあまり良くないからな。今度の戦闘にはシン君も出ると聞いたが。」
「はい。フォーカス様にお願いしました。この力がどれだけ通用するのか知りたいですし、フォーカス様をお守りしたいですからね?」
「…うむ。フォーカス様を守ると言うよりは、フォーカス様が率先して守りそうだがな…。」
兵士長の最後の言葉は小さくて聞こえなかったけれど、僕がやる気いっぱいだったのを見てなぜか頭を撫でられた。
僕立派な大人なんだけど…。
時々感じる僕を見る他の人の生暖かい眼差し。色的には変な感じではなくて、どちらかというと黄色というか、ペットを見る感じ⁉︎
今も兵士長はそのオーラで僕を撫でたよね⁉︎
そりゃこの砦に居る人は基本兵士達なので、屈強な人ばかりだ。
何か筋肉フェチのジムにでも紛れ込んだみたいというか。背も大きいし、何なら顔も厳ついし。
あれ?やっぱり僕ってペット枠かもしんない。はは。はぁ。
「シン、何ため息をついている?疲れたのか?水晶を見せなさい。」
はぁ、ここに一番過保護な人登場だ。
フォーカス様は僕の腕を取ると、水晶をじっくり睨みつけた。そして頷いた後、微笑んで言った。
「昨日より消耗が少ない。着実に身体の負担が減っている様だ。さぁ、昼を食べに行こう。」
僕はフォーカス様の後をついていきながら、何だかフォーカス様の方が僕の従者みたいだなと思った。
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